初めての意義と初めての喧嘩
結局見る人というか、読者がいればいるほど楽しくかける気がするよね。
いればいるほどモチベよな!
というわけで遅くなりました!
更新です!
消えた『カミ』というものについて話していた。
何故か俺はコイツを信用して良いと思っていた。
何故だろうか。俺を庇ってくれたからだろうか。
他のニンゲンとは違う何かを感じたからだろう。
それは確かだ。
それでもこの力を見ればやはりコイツも他のニンゲンのように恐れる顔をするだろう。
やはりこんな力なんて。
「おーい・・・おーい!聞いてるかー?」
ハッとそこで自分が深い自分だけの世界にいた事を知る。
「あぁ・・・すまない。ボーっとしていたようだ。」
「大丈夫か?さっきの戦闘の傷とかのせいか?」
「いや、そうでは無い。大丈夫だ・・・。すまない。ひとつ聞いても構わないだろうか?」
もう仕方ない。希望を見てしまったのだ。
逃してしまえばもう光はないだろう。
俺はまだ縋っていたいと思うのだ。
「あぁいいぞ。別になんでも聞けよ?」
キョトンとした顔をする希望へ黒い質問を吐き出した。
なんて無様で気持ち悪くて、恐ろしいのだろう。
こんなにもたった一言言い出すのが恐ろしいなんて。
「お前・・・いや、あなたは俺が怖くないのか?」
彼は考え込む。この静寂がどれだけ恐ろしいか。
どれだけ長く感じるだろうか。
そして彼はそっと口を開く。
「確かに怖いと言われればそうだ」
あぁやはりか。と落胆する。
やはり自分は気持ち悪く恐ろしいものなのだ。
どんなに良く接しようとコレは変わらないだろう。
「でも━━━━━」
続きがあった。
それは言い出した言葉を撤回するような。否定するような。
しかし暖かいものだった。
「そうか。ありがとう。あなたは星を探していると言っていましたね。俺も同行して構わないだろうか」
するり。と言葉が口から零れていた。
彼と共にありたい。彼の助けになりたい。
そして、まだまだ強くなるであろう彼を見ていたい。
そう思ったのだ。
「あぁ・・・別に構わないが、厳しい道だぞ?」
その返答に笑って返す。
「群れを抜けた時から、ずっと歩いた道は険しいさ」
二人は握手を交わす。
そして笑い会うのだ。
「そういえば名前教えてなかった気がするな。俺はアルケル。セント・アルケル。よろしく」
「アルケルか。よろしく頼む。俺は残念ながら名前を持っていない。種族はジハイド・ウルフ。特異種だがな」
「名前がないと呼びづらいな。どうしようか・・・」
考え込むアルケルに俺は言うのさ。
「アルケルが名前決めてくれないだろうか?」
「俺でいいのか?変な名前でも怒らないでくれよ?」
「もちろんだ。君につけて貰いたい。」
「そうか・・・じゃあお前の名前は種族にちなんで『ハイド』なんてどうだろう」
「いいと思う。俺は今日からハイドと言おう」
それから少々の時間を費やし、多くの事を話した。
ハイドにとってそれは初めての経験。
好物の肉を食べるよりも、元仲間と野を駆け回った時よりも、何よりも幸せで楽しい。
しかし楽しい時間も束の間。
ハイドが何かを聞き取る。
数匹の獣が草木をかき分けて進む音。
着々と包囲網を固めるその狩猟をハイドは知っている。
懐かしく恨めしい。それは元仲間達、ウルフ達の狩猟の仕方だ。
「アル。俺はどうしてもこの種族とケリをつけなければならないらしい。力を・・・貸してくれるか?」
何か強い決意をした新しい仲間の言葉に頷かない選択など、今のアルケルには無かった。
「勿論だ。俺は何をすれば良い?」
「これから三方向からまず攻撃されるだろう。その後下がってしまえば後ろからボスのウルフ達が迂回してくる。だからここは三方向のうちどれかを突破したい。」
「なるほど。なら街から遠く、なおかつ開けた所へ行けるのはどこだ?森の中じゃ流石に刀を振り切れない」
「なら、西だ」
「よし。西から来るウルフ達を突破しよう。容赦はしないぞ?いいな?」
それは最後の確認。
同じ種族でなお今までを過ごした仲間達と戦うのだ。
淀みがあってしまえば剣も鈍る。
「もう俺はアイツらの仲間じゃない。ただ一人のハイドとして生きるんだ。化け物でも構わないさ」
「それが聞ければ上等さ。行くぞ!」
水溜まりを飛び越え、木々を踏みしめ素早く移動する。
そして逆方向から走ってくる四足歩行の獣を一太刀と一振ですれ違い様に倒してすり抜ける。
三匹一チームで動いていたらしい。
倒しきれなかった一匹が大きく遠吠えを上げる。
おそらくは仲間を呼んだのだろう。
しかし振り返らない。
必ずこの後因縁にケリをつけるから。
それから数回襲撃にあったものの、ものともせず少々開けた野原に立つ。
月もない。星もない。太陽もない。
しかし分かる。数十匹のウルフ達の中に一際大きく恐ろしさを感じる化け物が。
薄暗い野原でウルフ達がこちらを威嚇している。
ゆっくりウルフ達は円を描くようにこちらを包囲していく。そしてボスと思わしき化け物がこちらに話しかけてきた。
「まだ生きていたのか。恥さらし」
それは高くもなく低くもない。
ノイズの走るような聞きづらく嫌な声。
何故だろう。
「関係ないだろう。群れは抜けたんだ。」
少しの睨み合いの後、化け物は言う。
「ならば元一族の恥としてここで死ね」
「死ぬのは貴方です。族長」
大きな犬歯が空へと吠える。
それからは一瞬の攻防だった。
振り下ろされた腕を脚で弾く。
遠心力で脚が飛んでくるがそれを十字に固めた腕でいなす。
「アルケル!貴方は周りのウルフをお願いします!」
「わかった。負けるなよ!ハイド!」
腰からスラリと刀を抜く。
腰を落とし刀を背負うようにして構える。
「虧月壱の刀・・・」
踏みしめた地面が数センチ抉れる。
低い殴りつけたような音が地面から放たれた後に声が遅れて聞こえた。
「『居待』」
歩けるの正面にいたウルフの首がゆっくりと落ちる。
刀についた血を振り落としもう一度背負うように構える。
「『居待』」
一匹。また一匹。
神速とも思える太刀がウルフ達を襲う。
ウルフたちは四方八方から襲いかかる。
足元から、正面から、背中側から。
それでも捌く。振り切る。蹴る。
必ずしもウルフ達が弱い訳では無い。
森の中の生態系で見れば最強と言っても過言ではない。
統率された力は強い。しかし圧倒的な力には敵わない。
なぜなら絶対的な強さ、族長と呼ばれるリーダーが居ないから。
直ぐに終わると思っていたのだろう。
ハイドがこれ程までに強いなんて誰も思わないだろう。
強いのは分かっていた。しかし族長には勝てないとウルフ達が信じきっており、舐めて挑んでいたから。
「弱いな・・・変わってないな。」
それは族長から。
強くはなっている。しかし勝てない。
片方しかない紅い眼がゆっくりと見据える。
「お前にはまだ淀みがある。貴様は変わらない」
「何を・・・俺はあなたを倒してアルと共に旅に出るんだ・・・!こんな最初で負けてて何が!旅だ!」
空へ爪を立てる。
爪に薄い黄色の光が纏う。
『玉輪』
「俺は・・・僕は!こんなところで止まる訳には行かない!」
先程より早く、重く、強くしなやかに動く。
振り下ろす爪を何とか弾く族長に容赦なく蹴りを叩き込む。
「まだだ。俺は貴方を倒す」
「そうか。ならばこちらも本気でお相手しよう。」
そういうと族長は空へ吠える。
爪が大きく長くなり、腕が長くなる。
広葉樹と同じくらいの身長と地面に付きそうな腕と爪。
それは化け物という言葉がふさわしく恐ろしい。
「上等です。僕は負けない」
空へ右腕を上げ拳を握る。
必ずしも強くある訳では無い。
能力が劇的に強いわけでもない。
それでも戦う理由がある。
逃げてはいけない理由がある。
だから僕は戦う。死ぬその一瞬まで。
ハイドくん
・爪や牙主体で戦う狼さん。
・一応ナイフも使える
・投げナイフなど投げる方が上手い