討伐、そして謎と軽い命
こんばんは!おはようございます!更新だよ!
めっちゃ悩んだけど!とりあえず終わったぜ!?
最近はマスターになったりトレーナーになったり英雄になったりしてる
「『森で暴れるジハイド・ウルフの討伐』ねえ・・・」
その森はあまり有名では無い。
しかしその森はすぐ近くで生活する人間達にとっては恵の森なのである。
広葉樹林の中で動物達が自由に駆け回る美しき森。
そんな森の入口へアルケルはやってきていた。
「気にするなって言われても気にするよなぁ・・・」
思い出していたのは数日前。
深夜に巨人から手に入れた暫定『星』を何者かに奪われてしまった可能性が高いのだ。
くまなく家を探した。
しかしどこにも星らしき石は見当たらず、冒険者カードに星が刻まれているだけだった。
問題なく能力は使えるため特に損害が出た訳では無いが、問題は進まずじまいだった。
兄、カサスからは「気にするな。気にするだけ無駄」と言われてしまったのでどうしようもない。
とりあえず生活にも金は欲しい。
しかし報酬が美味しかったとはいえめんどくさそうだ。
「多分・・・アレだろうなぁ・・・」
この森に住んでいるウルフ達とは変わった傷だらけの姿。
群で行動し、群れが命のウルフ達とは違い一人で動いている。あまり楽な依頼では無さそうだ。
「お前が最近この辺りで暴れているジハイド・ウルフだな?何が目的だ?星空が消えた事と関係あるのか?」
泉の近くで休んでいたそれにアルケルは声をかける。
声をかけた瞬間、バッと飛び退く化け物を見た。
身体は傷だらけ、腕は骨折しているのか紅く腫れ上がっている。顔は新しいのか血が出たままの傷の周りを水が濡らしていた。
蒼いたてがみの化け物はこちらを品定めするように見ると口を開いた。
「星空・・・と言ったか?何故そう思う。ニンゲンは皆、俺を見ると武器を手に魔法を手に襲いかかってくるというのに。何故話そうと思う。」
至極当然だろう。
ウルフ達や動物、植物も話せる個体は少ないだろう。
しかし、何故か。話せると思ってしまったのだ。
「さぁ?何故だろう。俺にも分からない。でも一つだけわかるのはお前が異端だと思ったからだ」
「そうだな。そうだよな。そう思うよな」
それだけ言い切ると上半身を倒れるように倒す。
大きく強くしなやかな腕が筋肉の膨張により悲鳴をあげる。いや、それは悲鳴ではなく産声なのかもしれないが。
鋭く光る爪と剛腕、紅く光る牙と強靭な足。
人間では太刀打ちできないであろう姿。
しかし、人間は自分達が弱いことを知っている。
人間達はだから外付けの武器を手に入れた。
石を砕く石器を。山を破壊するための火薬を。
強靭な相手と戦うための武術を。
鋭く迫る爪をかろうじてアルケルが刀で防ぐ。
高く耳障りなキィンという音が辺りに響き渡る。
ギリギリと力で押され始めるアルケルは咄嗟に後ろへ下がる。
今まで自分が立っていた所を蒼い炎が駆け抜けて行く。
それは目の前の化け物を狙ったものだろうが明らかに自分諸共倒そうとした悪意のあるものである。
傷だらけの化け物は咄嗟の反応が遅れたのかまともに炎に飲み込まれてしまっていた。
炎が消え、そこには身体数箇所を燃やしながら倒れる化け物の姿があった。
「あっはははははぁははは!弱いねぇ!こんなもんか!」
高くされど低い。
あまり聞きたくない声が笑う。
ハッとアルケルが声のする方へ視界を向ける。
そこには光に照らされ輝く金の髪。
魔導書を左手に、右手にロングソードを持った男が居た。
「おい。コイツは俺の獲物だ。手を出すな魔道士」
アルケルが少し声を荒らげる。
しかし、顔を顰めて魔道士は言う。
「ハァ?なんでテメェみてえなゴミの言うことを聞かなきゃならねぇンだ?あと、俺の名はハントだ。特別に教えてやろう。貴様のような下民にな。」
「なんだ?とことん鼻につくやろうだなテメェ」
アルケルも見ず知らずの男に下に見られたら喧嘩腰にもなってしまう。それよりも自分の後ろで倒れている化け物をどうにかしなければならない。
「仕方ない・・・とりあえずコレで動けるようになんだろ化け物がよ!」
腰から下げていた試験管のひとつを化け物へ投げつける。
化け物へ当たり割れた試験管から蒼の液体が化け物へ流れ落ちる。
「これ・・・は・・・回復薬か?何故俺を助ける。何故俺になど構う。貴様には関係無いだろう。」
「は?何言ってんだ。お前があのクソ男に倒されるのが癪なんだよ。それだけだ。嫌な奴には倒されたくねーだろお前も。」
「それは確かに分かりやすく理解出来る理由だ。」
ゆっくり身体を起こした化け物が大きな手をアルケルへ差し出す。それは何かを求めているようだったがアルケルには分からない。
「もう一本回復薬寄越せ。あと腰から下げてるナイフ二本でいい。俺にくれ。」
何を言っているのか分からないが。
先程より話を聞いている今ならばと試験管とナイフを二本化け物へ渡す。
「オィ!俺を無視するな!そこの傷だらけの化け物は俺の獲物だ。それくらいの頭はあるだろう!お前は頭がねぇのか!?」
何をという前に身体が腰のナイフへ手が伸びていた。
そのまま脊髄反射でナイフを投げる。
時間差で二本。鋭く投げられたナイフをロングソードでハントという魔道士が叩き落とした。
「そうか。よくわかったよ。テメェもここで殺してやろう!そこの汚ぇ魔物と共になぁ!感謝しろよ!」
そういうと左の魔導書が激しくめくれる。
紅く光る紙をちぎりこちらへ投擲する。
「波動炎陣!」
紅く光る紙は大きな円を描く。
中央から炎が襲ってくる。
「お前魔法とか使える?俺はちなみに無理」
「魔物にそれを聞くか。無理だろう。出来るやつもいるのかもしれないが。」
アルケルはバッと上へ飛ぶ。
炎が届かない空へ。
しかし化け物は飛ばない。真っ向から受け止め、その爪で炎を切り裂く。
「俺の魔法が!?こんな汚い化け物なんかに切り裂かれただと?そんなことあっていいはずがない!あっていいはずがないんだぁぁぁああああ!!!」
またもや激しく魔導書がめくれ、黒の紙をちぎり投げる。
「黒鎖瘴気!」
魔法陣が黒く染まり、黒い鎖が化け物を絡め取らんと迫る。しかしそれを許さない。
「俺がいることを忘れては困るなぁ?」
丁度地面に降り立つアルケルが鎖を断ち切る。
「あぁ!またか!また!天才に歯向かうゴミムシどもめ!天才へは媚びへつらい、崇めるものだろうが!」
『それは世界への。この世界を創りし神への冒涜か。』
「は?」
「あ?なんだ?何をキョロキョロしてやがる?」
「俺の鼻も何もいないと言っている。」
アルケルも。化け物も。ハントとかいう男が急に辺りを見回し始め急に苦しみ出すのを見ることしか出来ない。
いや、動けないのだ。ただ見つめることしか出来ない。
圧倒的な力を前に動けないように。
何故か動けないのだ。
「やめろ!俺は天才だぞ!天才に何をするんだ!」
紅くなる顔。もがき苦しむ。
だんだん紫や青に近い色となり、もがく力も弱くなる。
抵抗が完全になくなり、ハントという男はその場から動かなくなってしまった。
「なんだ・・・どうなってやがる?」
動けるようになったアルケルがハントへ近寄る。
そこには首をねじ切られ、見るも無惨になった男の姿だった。
「さっぱり俺にもわからん。初めてだ。」
『当たり前だろう。貴様たちが今見たのはカミの力の一片に過ぎぬ。』
重圧が二人を襲う。
首を抗えぬ力で掴まれているような。
蛇に睨まれた蛙のように動けない。
「「カミ・・・?」」
初めて聞く。
カミとはなんだ。それは人の名なのか?
それは何かを超越した存在なのか?
『カミとは。全ての万物を超越した存在。』
それだけを言い残し。圧倒的な力は消えた。
二人に新たな迷いと問いを残して。
補足
「カミ」と「天照」は別物である。
どちらも存在しているものであり、知っているものである。
しかしこの世界の人間はそれを理解しようとしていない。
知ろうとした数少ない人間は淘汰された。
ご拝読頂きありがとうございました!
感想等お待ちしております!
また次回!