暗闇に包まれた世界で
二話目の投稿となります。
1話目見てくださった方々ありがとうございます!
前書きって何書いたら良いかわかんないですよね
とりあえず最近の事など一言書いていこうかなとか思ってます。
セブンの温州みかんのかき氷超うまい
この世界には冒険者という職がある。
そんな冒険者たちを統括する組織がギルドと呼ばれる。
もちろん冒険者も人族であり、他種族もギルドに参加している。
そのため冒険者の数だけの食事、武具、アイテムが必要になる。それをどうにかするために提携店舗があるのだ。
回復ポーションや薬草を卸す商人、武具を造り売る武具店。酒や食事を作る飯屋など、多くの店舗とギルドは提携している。それはどの街も同じような網目になっている。
さて、冒険者をするにも必要になってくる『星』。
この世界の人々は星力と呼んでいるものが全ての人に能力として備わっている。
例えば「火星」はその名を冠するように「火」についてとても詳しく使えるようになる。しかし惑星レベルの星を頂くことは珍しく、ほとんど頂く人は居ない。
いたとしても使えるのは一部であり、全ての力を引き出すのは無理と言われている。
星によってできること、できないことがはっきりと決まってしまうのだ。それまでしてきたことが全て無駄になるという人も少なくはない。
「あまり良い依頼はねえな・・・どうするかなぁ」
依頼表を見て溜息をつくのはフード姿で顔を隠し、尚且つマスクをしたアルケルである。
冒険者に登録すると貰える冒険者カードは偽名登録ができる。その機能を使い、名前を変えていたので怪しまれず何とか依頼をこなしているのである。
「武器も刃こぼれしてきたし鍛冶屋行くか・・・」
現在、アルケルが拠点にしている街は「シエル」から1、2日歩くと見えてくる街である。
冒険者の街、「ローンファ」と呼ばれる街である。
全体を見ると四角く区切られており、街の外側を防壁で堅めた城塞都市のようなものだ。
多くの冒険者はここを拠点に動く。
勿論、星が落ちたという情報は出回っておりざわめきの中で多くの噂がたっている。
それを気にせず、アルケルは鍛冶屋へ出向く。
先ずは情報だ。
星の戻し方、何故星が落ちたのか。
それを知らなければ何も始まらない。
だから冒険者という集団の中に入ったのだ。
情報を求め、そして良い隠れ蓑であるからこそ。
アルケルが向かった鍛冶屋は馴染みの店。
実家である刀鍛冶の中でも信用出来る店主だ。
何故なら、店主の星に根拠がある。
店主の星は「金星」
そう。星を頂くにあたってとてもメジャーな星を手に入れた数少ない人の一人であるからである。
「久しぶり。カサス。」
「あぁ?誰だ・・・おま・・・え?おぉ?」
こちらを見るなり店主のカサスは目を見開く。
そして懐かしい顔を見たような目をしたあとすぐ鬼気とした目に変わる。
「久しぶりだな。ゆっくりしていけよ・・・って言いたいところだが奥へとりあえず来い。話はそっからだ」
「どうした?なにかあったのか?」
カサスに言われるがままに奥。つまり鍛冶場の方へ入っていく。それも少し早足で、人の目を気にするように。
「お前ぇ・・・噂は本当かい?」
「噂?なんの話だ?星が消えたってぇ噂か?」
それを聞くなり頭を抱え溜息を着くカサス。
そして重い口をゆっくりと開く。
「なんにも知らねぇ様だな。なら教えてやるよ。ココ最近の噂、そしてその民衆の反応をよ。」
かけているエプロンから葉巻。いわゆる煙草を取り出し火をつける。ゆっくりと吸い、煙を吐く。そして口を開く。
「ここ2、3日の話だ。急にシエルから人が逃げてきた。
それも10や20じゃなく100や200の単位でだ。おかしいと思うだろう。そして斥候として冒険者たちが雇われシエルへ送り込まれた。その間に逃げてきた奴らに話を聞いたらしい。そうするとどうだ。あの綺麗な星空が真っ黒に染まって星が落ちたってぇ言うじゃねえか。」
アルケルは予想していた通りという目だった。
それはそうだろう。いつも通り、ずっとあると思っていたものがいきなり消え、いつ戻るかも分からない。もう戻らないかもしれない。それは逃げたくもなる。
「斥候として出てった冒険者たちがつい今日の朝戻ったそうだ。そうすると確かに星は消え、一人の男が星を落として逃げたって言うらしい。街の奴らはみんなだ。そしてその男の名前が『セント・アルケル』ってぇ名前って言うらしいじゃねえか。お前と全くおんなじ名前だな?心当たりはあるか?なぁ・・・兄弟。」
アルケルは深く溜息をつき、天を仰ぐ。
カサスが敵では無かった。という点では朗報だろうが、それ以上に噂が広がるのが早い。もう名前も顔も犯罪者として張り出されているだろう。これでは星を探そうにもどうしようもない。
「大まかなことは間違ってはいない。でも訂正はある。俺は星を落とした訳では無い。俺にだって分からないんだ。俺は儀式で星を頂く予定だった。だが、貰った星を確認したらなんとびっくり「月」だよ。それを確認したと同時に星は落ち、俺が勝手に悪者扱いさ。どうしようもなく逃げてきたって訳だよ。」
今度はカサスが天を仰ぐ。
そして咥えていた煙草を灰皿へ押し付け火を消す。
「なるほどな。だから俺宛に母さん達からアルケルが来てないかって手紙が届くってぇ訳だ。」
机に置いてある数通の手紙を指差す。
机にある手紙は全て俺が来ていないか、逃げてきていないかというものらしい。
「で、どうするんだ?防警にでも突き出すか?」
「なぁに言ってんだ。今の話を聞いたばかりじゃお前は悪くねぇじゃねえか。何を突き出す意味があるんだ?」
くかかと笑いカサスはこちらを見る。
その目は全てを見透かすような鋭く強い目である。
「この街にいる間ぁ。俺のこの工房を拠点に使いな。
手前どうせ野宿だったりだろう?相棒も出しな。完璧に治して鍛えてやるよ。」
「それは助かるが・・・いいのか?見つかったらカサスも・・・」
「あぁ?何を言ってやがる。俺の星は金星だぞ?」
星力「金星」
それは姿を消したり隠したりする隠蔽能力。
そして熱と光の力。
ほぼ全ての熱と光の力の上位互換であり、隠滅能力に右に出る者はいない。
「だが、わかってるだろうな?俺の星は朝だけは使えない。だから朝は外に出るな。分かったな。」
「わかった。ありがとう。」
ここまで旅をして刃こぼれした愛刀『夜ト守』をカサスに手渡す。
カサスはゆっくりと夜ト神を鞘から抜く。
そして上から下へそしてアルケルを見る。
「随分ぞんざいに扱ってるじゃねえか。これじゃあ武器も助けて来れねぇぜ?」
「仕方ないだろう。ここまで強引に魔物を倒して来たんだ。無茶な使い方もするさ。」
肩を分かりやすく落としやれやれと首を振る。
カサスはそれを見て鼻で笑う。
「それが武器をいいように使う理由にはならねえな。」
「もうそんな風に使う事はしないさ。」
「当たり前だ馬鹿野郎。」
小槌、金槌、ハンマー。言い方はなんでもいい。彼の握る槌と炉に吹く火を見ながらアルケルは思う。
(やっぱり兄貴には敵わないなぁ)
カサスはアルケルの兄であり、家族で唯一の家出者だった。今はアルケルも家出しているようなものなので同じようなものであるが。
実名セント・コーヴァ・カサス。
城塞都市ローンファで最優秀だった鍛冶師に送られる「コーヴァ」という名を頂いた最高峰の鍛冶師である。
しかしカサス本人はあまり賞や名誉には興味が無いらしい。貰っている賞などは飾ってあるようだが火を使う鍛冶場で飾ってある辺り気にしてないようだ。
「打つの?見ててもいい?」
「減りはしねえし別にいいぜ?」
了承を得たので1メートルほど離れ、笑う横顔と赤く猛る炎を見る。その横顔はどんなに走っても足掻いても追いつけなかった憧れである。
ゆっくりと振り上げる腕は熱を帯び汗ばんでいる。
打ち降ろされる刀は衝撃で高い音と共に火花を散らす。
「『炎詩』」
普段は大きく笑い、横柄なカサスはこの時だけは静かに呟く。それは対話のように。ずっと昔から話したいことがあった時の切り出し方のような。
武器との対話。
武器の成りたい姿へ。武器の想う能力へ。カサスは対話をする。ゆっくりと振り上げ打ち降ろす。その動作で武器と会話をするのだ。
それがカサスの『炎詩』である。
「もっとしなやかに?もっと強く?お前は何を望む。」
武打ち。と呼ばれるカサス独自の詩。
武器との会話の中で流れる旋律をカサスは紡いでいるだけらしいが本人以外それをわかる者はいないのだ。
炉に戻され熱を帯びる刀へ一言カサスは呟く。
「そうかい。そりゃいいなぁ」
炉から取り出した刀をまた打ち降ろす。
どのくらいの時間が経っただろうか?
どのくらい打ち降ろされ鍛えられただろうか?
いつの間にか炉の火は消え、作業は終わっていた。
「ほら、会心の出来・・・と言いたいところだが俺にもまだまだってぇ言わせるコイツは大物になるかもなぁ」
ひょいと投げられる刀を赤子を抱きしめるように受け止めそっと掲げる。
「白刀『白夜』ってぇとこかねぇ?」
そっと刀を鞘から抜く。
光に照らされ白銀に光る。
炎を我が物とするように波打つ刃は黒く光を消す。
美しく波打つ刃を見つつ、そっと鞘へ仕舞う。
「すげぇ・・・!すげぇ良いよコレ!」
「そうかい。そりゃよかった。」
鍛冶場の更に奥、簡易的に置かれたベットへ飛び乗るカサスは寝転びながら此方に呟く。
「俺は寝る。だがこれだけは伝えておくぞ。」
それはずっと仲の良かったカサスではなく、城塞都市ローンファの最優秀鍛冶師としての言葉だった。
「それはまだまだ強くなる。だがあとはお前本人の力だ。武器だけ強くあってもお前は弱いまま。ただのカスだ。お前が強くならなきゃ武器の力を引き出せず死ぬぞ。」
それだけ言い残し、カサスは眠りについた。
その言葉を胸に留め、己の強さを磨こうと刀を腰に携えたその時だった。
「な・・・なんだありゃあ・・・」
「おわりだぁ・・・おしまいなんだぁ・・・」
外から聞こえるのは恐れと絶望の声。
そして逃げるように走る人の足音と魔物とも、人とも言えない叫び声が遅れて聞こえた。
急いで鍛冶場から外へ飛び出し、民衆が見ている方向へと目線を移す。そこには紫の煙を纏い、巨人のような姿をしたなにかが立っていた。周りには人が血を吹いて倒れており、巨人の手には大太刀握られていた。
それを視認した瞬間、アルケルは刀に手をかけ走り出していた。その巨人は危険だと。自分だけでなく街が危ないと走り出した咄嗟の判断である。
「虧月壱の刀『居待』ッ!」
居合切りであり、持ちうる技の中で最速の技を選択。
取ったと思った首は取れず、大太刀で簡単に止められてしまった。
「あ゛ぁ゛?」
汚れた声。そう形容するしかない声がこちらを向く。
大太刀は紫の瘴気を帯び今にも鼓動しそうである。
「おまえから。ころす」
「上等だよ。ずんぐり野郎がよ」
振り上げられた大太刀はアルケルの脳天を切りさこうとして、空を切る。
白夜は巨人の首をはねようとするが鈍い音を立て大太刀に弾かれる。
どちらも互角に立ち回っていると思えるがアルケルの方が不利である。何故なら巨人は一歩もその場から動いて居らず、全て大太刀でアルケルの攻撃を防いでいるのだ。
「じゃ・・・ばいばいぃぃ」
ドンッと音を立て、地面のレンガが凹む。
巨人が飛んだと認識するまで少々の時間を要する程に素早く、強かった。
空を見上げた時には既にすぐ目の前に大太刀の刃が迫っていた。その刃はアルケルの右肩から左脇にかけて深く切るように振られており防ごうにも間に合わない。
(ちくしょう・・・俺はここまで弱かったのか・・・!)
心の中で自分の弱さを、己の慢心を悔いていた。
そして大太刀の刃は確かに身体を叩き切った。
二話目見て下さりありがとうございました。
巨人って書いてありますが実際は3m無いくらいに設定したですね。グラードンよりちょっと小さいくらいでお願いします。(笑)