龍の乱舞「弐」
ゆっくり頑張ります
最近は物価高いね
気軽にお菓子も買えなくなってきたねえ
『開幕速攻の一太刀を躱したのはアルケル選手!』
ワッと盛り上がる観客を尻目に少しだけアルケルは焦る。
10メートルは行かなくてもそんな一瞬で近寄れる程の距離をしていなかったはずだ。
しかし確かに先程、目の前に刃があった。
自分の刀を鞘に収め、居合の形をとる。
「虧月」
自分が持てる最速で。
相手に近づき刀を抜く。
しかし風の音と共にひらりと躱されてしまう。
「速い・・・が、私より遅いな」
好青年の声がする。
鞘にまた刀を収め腰を落とす。
風牙という相手の男。
居合の形しか取らない。
決まって刃を向ける時は抜刀術だ。
「抜刀術だけなら俺より上だ。抜刀術だけなら・・・な」
そう言いながらアルケルは刀を顔の横に構え右足を前に。
身体を低くし刀の先を風牙に向ける。
「烏兎。」
使う場面が無さすぎて使わなかった技。
それはほんの少しだけ自分の速度が早くなる。
刀を振る速度が、足の速さが、脳の回転が。
自分より強き者に抗う為の能力。
もし自分がここで負けようとも。
後続を奮い立たせれる戦いを。
爪痕を残せる戦いを。
月の痕をこの全てに。
「我が意を空へ願う。」
始動。
必ずしもこれが正解とも限らない。
俺の試合が始まってまだ五分も経っているか分からない。
これで負けても勝ってもどちらでもいい。
俺の戦いに長いも短いも無いのだ。
「空よ。夜よ。星よ。全てを示す太古の炎よ。我が意を御覧頂こう。」
『アルケル選手!ここで詠唱です!風牙選手も焦って攻撃を苛烈になってきています!』
神速のような刀を避けて、逃げて、たまに掠り。
それでも俺の紡ぐ言葉は止まらない。
「我が物語をこの一筋に。」
傷を追い続け、肉が裂けるかもしれない。
骨が折れるかもしれない。
血は沢山出るだろうけれど。
俺はこの目の前にいる男を全力で叩き潰す。
たとえそれがどれだけ短い戦いだろうとも。
「夜。火。月。」
さぁ終わりと始まりを御覧頂こう。
「破滅の始まりの世界よ。我が痕を残さん!」
緑の光が刀に集まり続ける。
その刀を振り上げ、狙いを定める。
そして俺は紡ぐのだ。
「月痕!」
振り下ろした刃は緑の光の斬撃を放つ。
それが太く大きく。渦を巻くようにねじれながら相手に向かう。
相手は何かを叫んで技を展開しているようだが遅い。
緑の剣は光となりて相手の手を、脚を砕き切る。
『し、試合終了!!!アルケル選手の勝利!』
なんて、恐ろしいんだろう。
強さとは。
それでいて、大技を振り合える強さの敵がこの世界にどのくらいいるのだろうか。
そんな思いにふけりながら俺は自分の仲間の元へ戻る。
仲間とハイタッチを交わし、次のハイドに激励を送る。
全勝を目指そう。
ご拝読頂きありがとうございました!
サクッと終わる戦いもいいかなと思いまして挑戦してみた次第です。
なんか味気なかったら辞めます()




