決戦前夜のまた前夜
ギリギリセーフ!セーフ!
「神だァ〜?」
アルケルとハイドは過去の記憶を掘り出す。
傲慢で、神々しい…?あの男を。
「それはなんか・・・光り輝いたりしてる男か・・・?」
「? いや、俺が見たのは女性の姿だった」
どうやら剣城が見たという神はアルケル達が見た者とは違うものらしい。
「まぁ・・・確認したかったのはそれくらいだし、いいぜ。俺もお前に協力する。」
神・・・とやらはちゃんと確認してみないと分からない。
それまで保留という形で収まった。
「じゃあコレからどうするか考えなきゃな・・・」
「とりあえず基本の情報収集は俺の部下にやらせる」
アサヒの部下は龍の国が出身の男達が多い。
人目につかずやりやすい筈だ。
「でも俺達はどうしたら・・・」
「一発大きく有名になったらどうだ?」
アサヒが指を指すのは店の中に貼られたポスター。
そこには『挑戦者求む!龍の闘舞劇』と書かれたポスターが貼られていた。
「大きく自分達を有名にして、気に入られればいい。強いんだろう・・・?冒険者君達。」
にやりとあくどい顔をするアサヒが目の前で笑っていた。
「上等だ。でもコレ三人で出なきゃいけねぇって書いてあるぞ?」
「いるじゃん。めんの前に、龍の国の天才がよ」
三人がいっせいに見やるのは剣城。
「いや、確かに弱くはないと自負はあるけど俺処刑人・・・」
「いや、アルケル。この大会とやらにはこの国の王も出てくるらしい。ここで証拠を突きつけてやれば言い逃れはできないのではないか?」
ハイドが長い爪でポスターの下部を指しながら問う。
「なるほど・・・?民の前じゃあ嘘は付けないって事か?」
「決まりだな。大会まで情報収集だ。アルケルは最近来た冒険者という事でこの国のギルドに行って来い。そこで大会に出る為の手続きができるはずだ。」
アサヒが部下に指示する為に紙に走り書きをしながら話す。
「わかった。ハイドと剣城は数日大人しくしていてくれ。」
各々のすることが決まった。
アサヒは情報収集へ。
アルケルはギルドへ大会の手続きへ。
ハイドと剣城は留守番という形になった。
次の日、アルケルはその足でギルドへ歩く。
腰に刀をさげているのが幸を制したのか、大して怪しまれることも無く受付まで来ることが出来た。
冒険者カードを提示して、手続きをする。
「一緒に大会に出場される方々のお名前もお願いいたします。」
受付嬢に促され名前を書いていく。
一人目「セント・アルケル」人族
二人目「ハイド」ハイ・ウルフ
三人目「クサナギ」人族
ハイドの種族は希少過ぎるのでハイ・ウルフへ。
剣城は名前が知られすぎているため、偽名という形を取った。
「はい。確認致しました。三名の大会への挑戦を受け付けます。日程は二日後に月夜見城の表門までお越しいただくようよろしくお願いします。」
足早にギルドの奥へ消えていった受付嬢。
そこに留まる訳にもいかず、アサヒ達の元へ戻る。
アサヒの店に戻ると、険しい表情で座るアサヒの姿があった。
「受付は済ませてきた。そして、なんでそんなに険しい顔をしてるんだ?」
「あぁ、アルケルか。ちょっと面倒なことを掴んでしまったのでな。」
天を仰ぎたい。といった表情のアサヒに疑問が尽きないアルケル。アサヒは一呼吸置くと、アルケルに話し始めた。
「獅子ノ原王喰が大会に出るという話が出ているんだ。」
「シシノハラ…?」
アルケルはキョトンとした顔をしてしまう。
それが誰なのか、なんなのかも分からないが。
「あぁ、アルケルは分かんねえよな。獅子ノ原って言うのは龍の国随一と言っても良いくらいの舞踏家だ。冒険者の基準だと・・・難しいな。まぁとりあえずとても強えやつが今回何故か出場する情報が流れている。」
「そんなに珍しい事なのか?」
武闘家が武の大会に出る事がそんなに珍しいことなのだろうか。どちらかと言えば普通なのでは無いだろうか。
「まぁ普通はそう思うだろうよ。獅子ノ原は過去一回もこの大会に出ちゃ居ねえ。定期的に開かれているにも関わらずだ。だが、今回何故か出場をするらしい。」
狙ったのか。それとも偶然なのか。
嫌な考えが頭を行ったり来たり。
「それでも。やるしかない。やらなきゃこの計画は無駄になる。」
「そうだな。やらなきゃ勝てない。」
フッと笑い合う二人。
大会への思うところは多々ある。
しかしそれは今考えても仕方が無い。
大会は必ず時の流れと共に来てしまう。
ならばやらねばならぬ。
それがどの様な結末になったとしても・・・。
書き納めになると思います。
新年度は沢山更新出来たらいいなと思ってます。
来年度もよろしくお願いいたします。
では皆様、良いお年を。




