繋げ、世界の為に
やべぇ全然更新してねえや()
ブルアカ始めてみました
オワリノイキモノ
「おかしい。絶対間違ってる。お父様もお爺様も」
冷たい岩肌に背中を預け、縮こまる男。
薄汚いが、所々には豪勢な装飾。
足は裸足で所々切ったのか血が滲んでいる。
頭を抱え上がる息を整える。
彼は叢雲 剣城。
この龍の国で指名手配の男。
ジャラリと手首に嵌められた枷が擦れる。
それを冷たい目で見つめるとゆっくりと立ち上がる。
「行かねば。まずは安全な場所へ・・・!」
洞窟の入口にそっと近付き、周りに人が居ない事を確認する。
潮風が鼻をくすぐり、波の音が聞こえる。
バッと飛び出し、できるだけ人目につかない岩肌ギリギリを走る。
走れ。走るんだ。
この事を誰かに伝えなければ世界が・・・!
世界が滅んでしまう!!!!
ジャラジャラと擦れ音を立てる枷を卑しく思う。
それでもアイツの元へ走る。
この龍の国でアイツが・・・いや、アイツの店だけが唯一なんだ!
潮風くすぐる崖ギリギリに建てられた瓦の家。
扉を乱暴に開け、転がり込んだ。
その顔を見た商人は驚きながらも奥に案内する。
そこには、丁度床下の階段から上がってくるアサヒ達の姿があった。
「ツルギ!?」
驚きながらも倒れる彼を抱きかかえて落ち着かせる。
後ろからなんだなんだと地下から上がってくるアルケルとハイドはアサヒの抱える男を見て驚く。
彼はこの国で処刑されると言われていた王族だったから。
剣城が来る数分ほど前。
アルケル達は大陸から龍の国へと繋がるトンネルを通っていた。
「こんな長い洞穴どれだけの時間かけたんだ・・・」
硬い表面に所々付いている何か硬いもので削り取られた跡。
それは数センチ単位で少しづつ、少しづつ削られた跡。
それにそっと触れながら呟く。
「さぁな。元々は王族が何かあった時に逃げ出す用だったと聞く。真実は分からねぇもんさ。」
アサヒが前を見据えながら答える。
「アサヒ・・・は故郷に帰るの初めてなんだろう?親や親戚の奴らとかいるのか?」
人間サイズの洞穴の為少し窮屈そうにしながらハイドが聞く。
少し考える素振りを見せ、口を開く。
「俺は血の繋がった奴らとはもう連絡を取れねえ。祖国ではあるが、親の顔も兄弟の声ももう覚えちゃいねえ。」
「そうか・・・それはすまないことを聞いた。」
申し訳なさそうな声が洞穴に響く。
「あぁ、良いさ。別に何も思わねえ。まぁ弟とは連絡が取れてる。それだけでいいのさ。」
冷たい空気の中、もうどのくらい歩いただろうか。
所々にある休憩所のような空間で休みながら歩き続けた。
幾らかもう覚えていないくらいに足を進めた頃、空気に温かさが加わった。
「お前ら。もうすぐだぞ。気ぃつけろよ。」
漏れ出す光を頼りにゆっくりと洞穴の天井を開ける。
そして先頭に居たアサヒが身体を外に出した時、目の前の扉が開いて剣城が倒れ込んできた。という訳だ。
暫く落ち着かせた剣城に話を聞くことにした。
自己紹介を済ませ、名前を覚えてもらった。
四人で椅子に座り、丸いテーブルを囲むようにして座った後、一時の静寂のあと剣城が口を開いた
今龍の国がどのような状況なのか。
それを剣城から聞いた時、アサヒは絶句していた。
「実は、ある男が王族に使えるようになってからおかしくなっているんだ。そしてそれは誰も気がついてくれない。」
半年ほど前、龍の国の宰相に新しく就任した男がいた。
優秀で腕っ節も良く、豪胆。
しかしその男が来てから自分以外の者達は明らかに変わっていた。
初めに怪しく思ったのは、税収を引き上げ始めた。
財政は苦しくもないのに突然あれこれ訳をつけて二倍近くになった。
すると、次に宗教団体達からも宗教税を取るようになった。しかし、それは民間の宗教のみで国に認可されている宗教は税を払わなくても良いというものであった。
極めつけは、剣城が調べようとした事をひた隠しにした後に、罪を被せ処刑しようとしてしたとの事である。
「おいおい、どうなってんだ?そんなにこの国は落ちぶれたのか?」
アサヒが頭を抱えながらため息と共に吐き捨てる。
剣城はその言葉を肯定するしかない。とも言うように黙って眉間を抑えていた。
「もう、この国にいる奴らはもう信用出来ないものとした方がいい。だからと言って俺一人ではもうどうしようもできない。」
頭を掻きむしり、絶望に浸る剣城。
それは王族とやらだけでは無く。何か他の事の方が不味いとも言わんばかりのものだった。
「不満を持つ奴らで行動を起こせばいいじゃないか。なぜもうこの国の民は無理と言うのだ?仮にも王の器では無いのか?」
ハイドがそう口を開く。
しかし、それに答えたのは剣城ではなくアサヒであった。
「この国で王族に逆らったものは自分のみならず、同じ村や血縁まで、少しでも関わりがあると全て処刑されてしまう。」
それは自分を含む全てが人質になっているようなもの。
だから自分一人の行動をしたところで周りを巻き込んでしまう。
「そんな・・・では、なんの疑いもできず抗うことさえこの国では認められぬのか!?」
ハイドが驚き声を張る。
「そうさ。この国・・・といっても数百年前の王がそう決めたらしい。だが、その数百年前の王の話はどの文献にも一切出てこない!じゃあ今あるこの制度はなんなんだ!」
ハッと我に返り謝りながら続ける剣城。
「俺はおかしいと思ったよ。だが、その問いを答えてくれるものはいなかったし、きっかけになるような文献も何も無かった。おかしいと思わないか?過去過去と言うのに過去についての書物は一切出てこねぇ。」
龍の国は今現存する国家のどこよりも長く存続する国であり、ほとんどが謎に包まれた国。
なぜなら民は自国を出れるような状況ではなく、王族が民を縛る国であったが故だったのだ。
「だから無理を承知で頼みたい。」
齢20にも到達するだろうか。
若き王の器が頭を下げる。
「アルケル、ハイド。そしてアサヒよ。俺と龍の国を助けてくれ・・・!」
深く深く頭を下げ、床に頭を擦りつけようともこの国を助けようとする王。
慌てて三人が頭を上げさせようとするが構わず剣城は言葉を進める。
「この国を救えるのならばどんな犠牲も払う。民の半分が地獄に落ちようとも。我が両親をこの手にかけようとも、俺はこの国を救わなくてはならない!」
「なぜそこまでする?王族なのだ。税収を払うことも無く、何も考えなければお前は苦労しないだろう?」
ハイドが言う。アルケルは黙って答えを待つ。
「俺はこの国の民が好きだ。高い場所から見る黄金の麦畑が好きだ。笑顔が好きだ。しかし、今のここはどうだ?税により苦しみながら畑に出向き、逃げ出すことも出来ず。そしてここで動かなきゃ俺は胸を張って王にすらなれねぇ!」
「いいじゃん。俺は乗るぜ。賭けは分が悪い方もおもしれえ。」
アサヒがそう答える。
「俺も助けたいと思う。この男には信念がある。この結末を見てみたい。」
ハイドもそういう。
二人がずっと黙っていたアルケルを見る。
難しい表情をしたアルケルがようやく口を開く。
「お前の気持ちはよくわかった。だが一つだけ聞きたい。」
「俺に答えることが出来ることなら全て答えよう。」
覚悟を決めた剣城はアルケルを見据える。
アルケルは静かに語り出す。
「どうにも疑問だった。」
と。
「この国は落ちぶれ、過去の書物すら無い。そして民は税収の為に奴隷のように働き、逃げ出そうにも自分一人の罪にならないので逃げられない。そこまでは分かる。」
ゆっくりと座っていた椅子から立ち上がり、言葉を続ける。
「でも過去を知りたがったからと言って、書物を全て開き探したからと言って次の王をそう簡単に処刑するのか?」
アサヒはまだあまり分かっていなかったようだが、ハイドは目を細めて考えを巡らせていた。
しかし、二人の整理を待たずアルケルは続ける。
「可笑しいよな。ちょっと調べただけで処刑だなんて。
となると。処刑されるような何かがあったんだ。政治的でも、なんでもいい。」
見てはいけないものを、聞いてはいけないことを、しては行けないことを、してしまった。ということ。
「どうなんだ王サマよ。何かあったんだろう?」
難しい顔をしたまま固まっている剣城はゆっくりと諦めたように口を開いた。
「そうさ。表向きは色々こじつけられていたがな。本当は俺は見てしまったのさ。神を。」
続けて剣城が話す。
「あの神をどうにかしなければこの国どころか、世界が滅びかねない。俺はそれを知ってしまった。」
今回も拝読頂きありがとうございました!
龍の国編が遂に本格的に始まります!
亀みたいなスピードですが良かったら見てやってください!




