従兄妹がクラスに転校して来て、家に居着いて妹にまでなるラブコメ
今俺の目の前でとんでもない事が起きている。
「今日から転校してきた前川ひまわりです。よろしくお願いします」
そう、転校生が来たのだ。それもただの転校生ではない。ここ数年間顔は見ていない。だが絶対に言い切れる。
あれは俺の従妹で間違いないと。
高校二年生になり、桜が散り他の花が顔を見せ始めた頃の出来事だ。
時期に合わない転校生は華奢で栗毛、まるまるっとした可愛い目をしていて美少女。既にクラスの男どもは性格すら知らないのにも関わらず虜になっている。
だが、そんな中でも俺だけはその転校生に違う感情を抱かされていた。
「そういえば前川ってクラスにもう一人居たよな」
そんなことを誰かが言った。その一言でクラスの視線が転校生の前川ではない人物に集まった。
その言葉を言った人に特に他意は無かっただろう。だがとんでもない名探偵でもある。
それは誰か? 何を隠そう、俺である。
何としてもこの転校生が従妹という事実は隠し通したい。理解は単純、クラスの野郎どもが転校生に惹かれているからだ。それがバレればあれやこれやと話をせがまれる、それが面倒なのだ。
幸いなことに従妹は栗毛。俺は黒髪、それに顔も似ていない。下手な事をしなければ従妹だとクラスにバレることはない。人知れず計画を立てる。
が、そんな思惑は一瞬で崩壊する。
クラス中の視線が集まったということは、転校生もまた俺に視線を向けていたということだ。
「あ、諒にぃじゃん」
結果的にこの一言で俺の平穏な高校生活は終わりを告げた。
◇◆◇◆◇◆
「そんな人は知らないが?」
転校生、前川ひまわりによる衝撃の一言にクラスが沈黙した。そんな中で俺が必死に捻り出した一言だ。
ついでに俺がアイコンタクトで「面倒なことになるから従兄弟なのは黙ってろ」と送る。
「いやいや、私が諒にぃのこと間違える訳ないですし」
転校生のとんでもない『にぃ』発言でクラスがざわつく。
「だからそんな人知らないが?」
それをまた俺が知らないフリをして隠す。
「だーかーらー、私が諒にぃのこと間違える訳ないですし」
それに追い打ちをかける転校生の従兄弟。
「前からその恥ずかしい呼び方はやめろって言ってるだろ!!!」
とんでもない失言。もう隠すこともできない事態になってしまった。
それを見たひまわりはいつも通りの大爆笑。クラスはこの事態を飲み込めずざわつく。もはや俺が対処できない所まで来てしまった。
そんな事態を先生が対処する。
「はい、という訳で転校生の前川ひまわりさんは前川諒くんの従兄弟です」
そしてひまわり改めて自己紹介するように促す。
「改めて自己紹介します。前川ひまわりです。そこの諒にぃとは同い年だけど従兄妹です。よろしくお願いします」
クラスの女子の反応は『え、すごーい』だとか言っているが、男子は俺に紹介してくれという目で俺を見てくる。
「じゃあ、前川ひまわりさんはちょうど空いている前川諒くんの隣の席に座ってください。あと何か分からないことがあれば彼に聞いてくださいね」
「はい」と返事して最後列の俺の隣の席まで歩いてくる。その一歩一歩が俺の平穏な学生生活の終わりを告げている。
「やったっ! 諒にぃとは隣の席ですね!」
と誰よりも嬉しそうな転校生。
「あぁ……」とうなだれながら返事をしたところでショートホームルームが始まった。
◇◆◇◆◇◆
ショートホームルームが終わるなり、クラスの注目は再び転校生、そして俺に向いた。
「え、本当に従兄妹なの?」や「おいおい聞いてないぞ」という言葉に溢れた。
そんな事態に嫌気が差し始める。転校してきたひまわりもクラスの女子から群がられて聞かれて対処に困っていそうだった。
「あ、おいドコに行くんだよ」
「トイレ」
俺の方は従妹のひまわり目当ての男どもの対処に面倒になり逃げることにした。尿意などないが都合の良い逃げ口上として使わせてもらおう。
「じゃあ、私もトイレ」
「は?」思わず声が出た。
「私もトイレ!」
群がる人を掻き分けてひまわりが言う。それも女子群にではなく俺に向かって。
「俺に案内しろと?」
「そう! 諒にぃ早く〜〜」
と俺の背中を押し出して教室から脱出に成功する。
後ろを振り返って他のクラスの奴がいないこと確認する。どうやら誰も付いてきていないらしい。
安心して人気の無い二人で会話を始める。
「おい! 転校してくるなんて聞いてないぞ!」
「いや〜〜、急に決まりましたし」
テヘヘ、とひまわりが表情を緩ませる。
「いろいろ思うことはあるけど、急に決まったなら大変だったんだろうな。ずっと会ってなかったし」
「うん、まあ急だったからそれなりに。でも私はとても運が良いのです」
「なぜ?」
「それはそれは心強い諒にぃが学校どころか、クラスに居るからです!」
「だぁ〜〜〜ッ」
と喜ぶひまわりと真逆の様子で頭を抱える。普段ならここまで頭を抱えない。なぜならいつも親戚の集まりのときにこのひまわりに振り回されているからだ。
「そんなに喜ばなくても良いです?」
「喜んでない!」
そうこんな調子でだ。
「分かった分かった。お前が転校して来て俺と同じクラスになったのも分かった」
このままでは話が進まないので無理やり自分を納得させた。
「うんうん、さすが諒にぃ物分りが良いです!」
もはやいつもの調子になり呆れる。
が、今はそれよりも解決しないといけない問題がある。
「よし、これからの為にひまわり、一つだけ俺の願いを聞いてくれないか?」
「うん、これからの為ですし。諒にぃの願いなら何でも聞きますよ!」
よし、ひまわりも乗り気で助かった。そう思いながら提案する。
「その『諒にぃ』だけはやめてくれ。周りにクラスの奴も居るんだし」
「えー、でも他になんて呼べば良いです? 今までずっとコレですし」
「そりゃ何でもあるだろ、前川とかいろいろ」
「名字同じですよ?」
「そもそも同い年で兄でもないだろ、俺」
「でも私、早生まれですし昔から諒にぃは諒にぃですよ」
確かに初めて出会ったときはその差で年上と思われたが、実際は同い年。
ここを譲っては学園生活がままならない。
「あーもう、じゃあ諒とか下の名前でも良いだろ」
「うーーん、分かった」
「よろしくね。諒くん?」
呼ばれた瞬間寒気が走った。
「いややっぱりダメかもしれない、何か背筋がむず痒い」
流石な昔からの呼び名をそう簡単には変えるのはこっちも受け入れられないらしい。
「えーじゃあ諒にぃ?」
「それもダメ!」
が、何としても返させないければならない。
話が平行線になりお互いの落とし所を探す。
「じゃあ、二人きりのときは諒にぃね。他のときは違和感あるけど諒くんにします」
「あぁ……頼む」
寒気がするがいつかは慣れる、そういう訳で渋々だが納得とした。
「諒にぃのお願い聞いたから私も何かお願いしても良いよね?」
「くぅ……まあしょうがないか」
しまった。そんな手が、しかし、こっちはお願いを聞いてもらったのだ。従うほかない。
「よし! じゃあ今から何個か聞くことに嘘付かずに教えてね」
「そんな簡単なことで良いのか。任せろ」
安心した。そんな程度だと。数年会ってなかったから、その間の質問だろうと。
「ズバリ、諒にぃ彼女は居ます?」
しかしそれは甘い考えだった。
「んなプライベートな。居ない」
「居たことはあります?」
「…………答えなきゃダメか?」
「あー、みんなの前でも『諒にぃ』って呼ぼうかなー?」
ぐぬぬ。ならば従って答えるしかない。
「くそ…………ない…………」
「何が無いです?」
「……今まで彼女が居たことが無い」
「フムフム、じゃあ次は────」
「まだやるのか……?」
「まあまあ次で最後ですし、止めると『諒にぃ』って呼ぶよ?」
「……しょうがなくだ」
ズルい。いつもこうやって振り回す。
「今までに告白されたことはあります?」
「……無い。……今までに告白されたことも無い」
「分かりました! ありがとうございます!!!」
やっと終わったと安堵する。
「何でそんなに嬉しそうなんだよ。馬鹿にしてるのか?」
「してないです!」
「馬鹿にしてないなら何でそんなに嬉しそうなんだよ」
「それはね、乙女の秘密です!」
「そんなことで俺は今こんな辱めを……」
時間が経つにつれて羞恥心が増す。
「でも諒にぃなら大丈夫です!」
「何で?」
「それもね、秘密です!」
「全部秘密じゃん」
「気にしない気にしない」
「それにね、今まで無かったってことはこれから起きたときにすっごく嬉しいし楽しいと思いますよ?」
「起きたらな、そんな空腹のスパイス的な」
「起きますよ、きっと! 私が保証します!」
「んなデタラメを……信じられない」
「今は信じなくてもいいですよ。いつか分かりますし」
「はあ……疲れた」
「そう? 私は全然です!」
本当にこいつのスタミナは無限かよ。
時計を見るともうすぐ授業が始まりそうだった。
「そろそろ教室に戻るか」
「うん……それはそうなんですけど……」
「何でモジモジしてるんだ?」
「それは……あの……諒にぃ……トイレってどこです?」
「ほ、本当にトイレだったのかよ!」
あれは教室から出るための口上では無かったらしい。
「……早く教えて欲しいです」
かなり限界も近そうである。
「そこ曲がって真っ直ぐ行けばあるから」
「ありがとう!」
一安心と思った矢先、ひまわりに袖を掴まれ走らされる。
「って何で俺まで連れてくんだ?」
「諒にぃもトイレって言ってた!」
「あれは言葉のアヤで」
「じゃあ帰りの案内役!」
「なっ」
下手に暴れて漏らされた方が面倒なので従った。
「ふ〜〜お待たせしました」
ここまで振り回したのに事を済ませてスッキリした顔でトイレから出てくるひまわり。
ため息が出る。
「そりゃ良かった、遅刻になる前に急いで戻るぞ」
かなり時間が押している。
「うん! あ、諒にぃ」
「何だ?」
「隣の席ですし、教科書見せて欲しいです」
「なッ!?」
このままでは授業中も振り回されそうだ。
◇◆◇◆◇◆
「やった! お昼です!」
「やっと、お昼か……」
なんとか午前授業は終わったものの、やっぱりというか振り回された。
「ひまわりちゃん一緒にご飯食べない?」
クラスの女子がひまわりを歓迎ムードで誘う。従兄としてはちょっと安心した。
「ごめんなさい、今日は諒に──じゃなくて諒くんと食べますし、また今度でお願いです」
「そんな話、俺は聞いていないが?」
「そりゃそうですよ。今言いましたし」
「んな急な」
「久しぶりに会ったんだしお願いです〜〜」
今にも無理やりでも連れていくという顔をしている。
これはむしろ断った方が面倒そうだ。
「……しょうがない」
「さすが諒にぃ!」
「ただし、人っ気の無いところでだ」
そこなら変な噂も立たないだろう。
「了解」
◇◆◇◆◇◆
「あ、自販機で飲み物買うわ、先にそこのベンチに座っといて」
道すがらにあった自販機で飲み物を買う。
「了解です」
購入中、ひまわりに目を向けるとある違和感に気づいた。
「…………てか、何でひまわりは手ぶらなんだ?」
「いろいろと急でしたし、用意できてないのです」
「もっと早く言ってくれたら学食行けたのに、今じゃかなり混んでるかもな。そもそもご飯が残ってるか……」
「大丈夫です!」
「っても何か食べないと持たないだろ」
「……でも私お金無いですし」
何か奥がありそうなので今は触れないことにする。
「そうか」
「俺の弁当食べるか?」
そんな言葉を聞いたひまわりの顔は子どものような眩しい笑顔になった。
「良いんです?」
「従兄弟を見捨てる訳もいかないだろ」
それにここまで喜ばれると拒否もできない。
「ありがとうです。諒にぃ優しいままですね」
ひまわりがご飯を食べ始めて、お互いに少し落ち着き始めていた。
「諒にぃ、見ないうちに大分背が伸びましたね。顔も大人びてますし」
「そうか? そういうひまわりはあんま変わってないな」
「失礼ですね。私も少しは変わりましたよ」
俺の記憶からすればあまり変わってないと思う。
「例えば?」
「胸が少し大きくなりました」
思わず胸に目を向けてしまう。
「あ、従妹の胸ををガン見してます?」
「見てない! 断じて!」
「いや、諒にぃは今ガッツリ見てましたよ」
「……なぁあんまり変わってないよな」
とんでもないビンタが飛んできた。
「あ、私にもそのコーラ飲ましてください」
ひまわりは少し不機嫌になって聞いてくる。
「でもこれ口付けてるが」
「別に従兄妹ですし」
「そうか、従兄妹だもんな」
まぁ幼いときには何回かしたし機嫌が取れればと思いコーラを渡す。
「ありがとうです」
少し飲んで満足したのかコーラをすぐに返した。俺も蓋が空いてるついでに飲もうと思ったがふと留まった。
「あれ諒にぃは飲まないです?」
「あとで飲むんだよ」
そう言ってなんとか誤魔化し間接キスになるのを後回しにした。
ひまからの会話が終わり沈黙が訪れた。
「なあ、久しぶりだな」
「そうですね。親戚の集まりに数年顔出してないですし」
おじさんが亡くなってからひまわりは親戚の集まりに顔を出さなくなった。
「やっぱり気まずいのか?」
「まあお父さん居ないですし……」
「そんなのこっちは気にしてないのにな」
事実、みんな集まればひまわりの話が何度も出る。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
「そういえばおばさんは元気か? あの人未だに印象に残ってるよ」
「あぁ……お母さんは……その最近亡くなりました」
「なッ!?」
あまりの事に言葉を失った。
そしてひまわりが急に転校して来た理由が繋がった気がした。
「ごめん。そういうつもりは無くて」
「分かってますよ。それに言って無かったですし」
「「…………」」
気まずい沈黙が二人を包む。
「……諒にぃは居なくならないでね」
寂しそうな顔をしたひまわりが俺に聞く。こんな顔は初めて見た。
「居なくならねぇよ、だからそこだけは安心しとけ」
自分が今できる一番の励ましの言葉を送る。
「そっか。ありがとう……」
「諒にぃは存在感消すの得意だから心配しちゃった」
「確かに得意だが」
「認めちゃうんだ」
「まぁ湿っぽい話はここまでしますか」
と、ひまわりがいつもの雰囲気に戻って話し始める。
「大丈夫か……」
「はい、明るく生きるのが私のモットーですし!」
いつものひまわりの明るい笑顔が戻っていた。
「それに諒にぃは居なくならないって約束してくれましたし!」
「あぁ、そうだな」
こんな言葉で少しでも寂しい思いをしなくなってくれればいいのだが。
「そういうことです。あ、ごちそうさまです」
ひまわりが手を合わせていた。太もものところには空になった弁当の容器もある。相変わらずキレイにご飯を食べていた。
「ご飯いただいたんですけど、諒にぃは何か食べないんです?」
「コーラあるから良いよ」
「でもまだ飲んでないですし、私との間接キスそこまで嫌です?」
「あ、それとも大事に飲みたいとかです?」
ひまわりの急襲に面を食らう。
「ちげーよ!」
そんなタイミングでチャイムが鳴った。
「あ、予鈴鳴っちゃいましたね」
「そうだな、そろそろ教室戻るか」
「はい、午後も頑張りましょう!」
◇◆◇◆◇◆
「気をつけて帰るように」
先生がショートホームルームを締めて今日の授業が終わった。
「あ、諒にぃ一緒に帰ろう」
また、ひまわりだ。俺をかき乱す。
「はあ? まぁ良いけど……家どっちなんだよ」
そもそも帰る道は一緒なのかと疑う
「それはまだ秘密」
「まあまあ、気にせず帰りましょうよ」
やっぱりはぐらかされた。
仕方ないので二人で下校する。
「そういえば諒にぃとこうやって歩くの初めてぐらいだよね」
「確かに、従兄弟って意外とそんなもんなんだな」
記憶を振り返ってもひまわりと二人っきりで歩いた記憶がほとんど無かった。物心付く前とかならあったのだろうか、考えても分からなかった。
「どんな感じです?」
「変な感じだよ、それ以上はない」
親戚の集まりのときにしか合わない従妹と一緒に下校している。それは変な気分以外にないだろう。
「あっ」
「何見てるんだ?」
ひまわりが足を止めてある一点を見ていた。
「自販機です」
「何か飲みたいのか? それなら奢るが」
「いえいえ、諒にぃはあのコーラを飲んだのかと」
「んな、思い出せないでくれ恥ずかしい」
「別に従兄妹ですし、そんなに気にしなくても」
「まあ従兄妹だしな、気にせず飲んだとだけ言っておく」
「なるほど……飲んだんですね」
ひまわりが神妙な面持ちで咀嚼していたが、気にせず歩き始めた。
しばらく歩くと行きつけのスーパーにまで来た。
「あ、ひまわり。俺、晩飯買うためにスーパー寄るわ」
「了解です」
「てかこのスーパー大分、俺の家に近いけど、ひまわりはどの辺に住んでるんだ?」
「あ、私もこの辺ですよ」
「へー、結構近いんだな」
「そうですね」
「それでは私は先に帰らしていただきます、まだちゃんと家は見れてないですし」
「おう。気をつけて帰れよ」
「はいです」
「うし、俺も買い物済ませて帰るか」
ひまわりと別れたことでやっと自分のペースで行動を取れる事に安堵した。
◇◆◇◆◇◆
「じゃがいもと肉が安かったのはありがたいな。今夜は肉じゃがでもするか」
スーパーでの買い物を終え帰路に立つ。
一人暮らしなので少しでも食費を浮かせれるのはありがたい。それから買った食材でメニューを考えている間に自宅に着いた。
外装は寂れた、古いアパート。有名人が下積み時代〜〜という回想がいかにも似合いそうな物件である。
「ただいま」
昔からの癖で玄関を開けるときに言ってしまう。誰も居ない家、返事が返って来ることなどあるばずがなく────
「あ、おかえりです」
あり得ない状況に靴を脱ごうと下を向いていた顔を上げた。
そこには何故か着替えている最中の従兄妹が居た。
「なっ!? 何でひまわりが俺の家に居るんだ!? それよりも服! 服早く隠して!」
「あ、服? って諒にぃそう言いながらガン見してるじゃん」
「いや、違う。これは間違いで!」
間違い、そうこれは全て間違いなのだ。
「何が間違いです?」
そう全てが。
「待ってくれ! 落ち着いて話を聞いてくれ」
「うん、良いですよ。でも私の下着見すぎですよ?」
痛いところを付いてくる。男が下着姿の女性から目線を切れる訳ないだろ、というツッコミは仕舞っておく。
「待って、分かった、ここは一旦、対等に話を」
ここは何としてでも、ひまわりのペースではなく俺のペースに持ってなくてはならない。
「はい。それで対等ってなんです?」
「こういうこと」
「って諒にぃ服脱いでるじゃないですか!?」
「これで対等、お互い落ち着いて話を────」
「あ、はい。私、着替え終わりましたよ?」
服を脱ぐ俺。着替え終えるひまわり。不思議な間が二人を包む。
「え? あっ、はい」
「話するなら諒にぃも早く脱いだ服着て、部屋で話しましょう」
「……はい」
何が起きているのか分からないまま、ひまわりに言われる通り脱いだ服を着て部屋に行った。
◇◆◇◆◇◆
「……その、何で俺の家に居るんだ?」
元々を辿ればコレに繋がる。そうコレだ。だから着替えを覗いたのは不可抗力ってやつだ。
「それは今日からここに住むからですよ」
「今日!? 俺の家に!? 聞いてないが」
「言ってないですから」
「何で!?」
あまりの事態に脳の処理が追いつかない。
「何でと言われましても、おばさん……諒にぃのお母さんが当日に言って諒にぃを驚かそうって」
「んな、迷惑な……」
確かに思い返すとサプライズ好きの両親である。ため息が出る。
「それに、俺の家六畳一間で他に部屋ないんだぞ!?」
「はい、そうですね」
「いや、そうじゃ無くてだな」
「そうじゃなくて?」
「そもそも何でさっきからそんな平気そうなんだ!? このままだとこの六畳の部屋に二人暮らしだぞ! 寝るときだけは違う部屋に……なんて無理なんだぞ!」
「私は平気ですし」
と全く俺の主張を意に返さないひまわり。
「いやいや、流石に年頃の男女二人だぞ!?」
「あ、諒にぃは従妹の私に興奮するってことです?」
「いや、それは……語弊があるっていうか──」
そう言われるとこっちのバツが悪くなる。
「あ、あと私、諒にぃの妹になりましたよ」
「……はい?」
今日一番脳が思考を停止した。
「ですから、今日から諒にぃの妹になりましたよ」
「それってどういう……?」
「両親が居なくなった私をおじさん……いやお父さんが迎えてくれたんですよ」
「……へ?」
昼に聞いた事を思い出す。なるほど、俺の親が一人になったひまわりを……という所まで理解できた。
「はい、そういう訳でよろしくお願いします。諒にぃ」
「え、あぁ、よろしくお願いします」
「これで諒にぃからの許可も取れましたね」
「あ、うん」
「ならこれで全ての問題が解決しましたね」
いろいろあり過ぎて、そもそもの問題が何か忘れてた。
「問題……ってここに二人で暮らすってことも?」
「はい!」
「いやいや、それは問題が」
「でも私、諒にぃの妹ですよ? 妹に手を出すなんて大問題ですよ?」
確かに言い返せない。
「それは……そうだね……ははは」
苦笑いでしか返せない。
「まぁ、手を出しても従兄妹なので最悪、結婚できますし」
「結婚!?」
「はい、従兄弟から法律的には問題ないです」
「なっ…………」
ひまわりが俺の腕に抱きつく。
「何を……」
「可愛い妹からのスキンシップです」
離そうともがく俺。それでも無理やり抱きつく従兄妹(妹)。
「これからは妹の私もよろしくお願いしますね、諒にぃ!」
こうして従兄妹(妹)との高校生活が始まってしまった。
◇◆◇◆◇◆
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