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春の嵐と春雨と

「怒ってるのはカラーボードが壊れちゃったからだよね」

「そうだよ。せっかく持ってきたのに」

「ほとんど壊れたから、ショックだよね」

 西和議は大きく頷きながら、言葉を選んで返す。

「いろいろ作りたかったのに」

 川と橋の写真を撮った子たちが首を縦に振る。

「西和議さんはそっちの肩を持つの?」

 桜並木の写真を撮った子たちが反発してきた。

「そっちの話も聞いてるよ」

 西和議は桜並木の写真を撮った子たちを向いて話す。

「すごいにおいだったもんね」

「だよね。だから窓を開けたかったんだ」

「うんうん。換気は大事だよね」

 先ほどと同じく、西和議は大きく頷きながら、言葉を返す。

 西和議の共感してくれた姿を見て桜並木の写真を撮った子たちの怒りが収まる。

「どっちが正しいと思うの、西和議ちゃん」

 東沼が聞いてくる。


「どっちも正しいと思うよ」

 西和議はきっぱりと伝える。

「それで良いの?西和議ちゃん」

「うん。どっちの気持ちもわかるもん」

 東沼の言葉に西和議は率直な言葉で返す。

「みんないろいろ考えててすごいなってのが私の感想」

 西和議は自分の気持ちを伝えてから、目線を少し下におろす。

「私ができるのは、お話聞くことぐらいだもん」

 しょんぼりとした様子で西和議は話す。

「みんなの話に共感して頷くことだけだよ、私ができることって」

 西和議は大きく息を吐く。

「こんな私でも役立つにはどうしたら良いかな」


「作業再開しようか」

 桜並木の写真を撮った子たちが言う。

「だな。カラーボード以外ってなんかあったっけ」

 川と橋の写真を撮った子たちも賛成する。


「絵具と画用紙とはさみかな」

 東沼が答える。

「画用紙あったの?」

「何かに使うかなって、持ってきちゃった」

 東沼はそう言って画材入れのカバンから画用紙を出す。

「それなら町の絵を描こうよ」

「紙芝居みたいにする?」

「ハサミで切り取って立体的にするのはどうかな」

 建設的な意見が次々に出てくる。

「えーと、みんな、私の悩みは?」

 みんなが意見を交わす中、西和議は問いかける。

「なら分担する?」

「分担?」

 東沼が応え、その言葉をおうむ返しに西和議は問い返す。

「うん。パソコンで今あるところ編集しようよ」

「こっちはこっちでやっておくよ」

 やることが決まっていく中、天候も春の嵐から春雨に変わろうとしていた。


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