みんなそれぞれ考える
「あら、どうしたの西和議ちゃん」
カーテンと窓を開けると、ベランダにいた隣のお姉さんと目が合った。
「ちょっと星を見に、お姉ちゃんは」
夜空には雲があるものの、あちこちで星が瞬いている。
「一緒よ。気が合うわね」
隣のお姉さんはにっこりと微笑む。
一方で西和議は苦笑いを浮かべていた。
(お昼に晴れていたらよかったのに)
西和議は夜空を軽く見つめ、心の中でつぶやいた。
「昨日は元気だったのに、何か悩み事でもあるの?」
お姉さんに話すかどうか、西和議はためらうそぶりを見せる。
「悩み事って誰かに言うと、解決することもあるのよ」
西和議は少し悩んだあと、お姉さんの言葉に甘えることにした。
「なるほど学校の授業か」
話し終えた西和議にお姉さんは答える。
「どうしようかなって思っちゃって。もういっそ魔――」
「できることって、それだけかな?」
西和議が魔法で天気を変えようと言いかけたとき、お姉さんが言葉をかぶせた。
「もっとよく考えてみて」
「でも……できることが少なすぎて、どうしたらいいかモヤモヤしちゃう」
「そうね。なら、考え方を変えてみましょうか」
お姉さんはベランダから、西和議に話しかける。
「パラパラ動画を完成させるには、できることが少なすぎるのが問題なのよね?」
「はい。もうどうしたら良いのか、頭の中がこんがらがってきました」
視線を下に落とし始める西和議。
「なら、誰だったらどうするかを考えてみようか」
西和議はうつむきかけた顔を上げ、お姉さんを見つめる。
「例えば、私だったらとかどうする、とかお兄さんならこうする、になるわね」
「それならやっぱり魔――」
「みんなだったらどうするのかな?」
西和議は言葉に詰まり、明日みんなと相談しようと決める。
「いろいろ考えたんだけど、ミニチュア作ってみるのはどうかな?」
翌日、西和議が雨の中登校すると、桜並木の写真を撮った子が提案してきた。
「ミニチュアって模型?」
「そう。町を作って、そこを歩いてるように写真を撮ってつなげちゃおうよ」
桜並木の写真を撮ってきたもう一人の子が身振り手振りを交えて説明する。
「それいいね。自転車とか車とかも作って危険って思ったところも話そう」
橋と川の写真を撮ってきた子たちも首を縦に振って賛成する。
「でも、素材はどうするの?」
東沼が文字を書く手を止め、桜並木を撮った子に質問する。
「親がDIYに凝っててさ、カラーボードの端材が結構あるんだ」
「再利用するの?色合わせとか大丈夫?」
「絵の具で塗っちゃおうよ」
ほかの子からの意見で東沼は納得したのか、またペンを走らせる。
どこをどう作るか、どう再現するかを、話し合って煮詰めていく。
「ホームルーム終わったら、先生に確認とってくるよ」
チャイムが鳴って少しすると、先生に教室に入って来た。