曇る心と雨模様
「桜並木って大通りでつながってるよね?」
西和議の話を受け、東沼が班のみんなに聞く。
「あそこは人通り激しいから写真撮るの大変だよ」
班の子が問題点をあげる。
「ていうかよく西和議さんと東沼さんは住宅街の写真撮れたね」
「運よく人通りが途切れたから」
「良いなあ。こっちは全然だったよ」
「朝とか夜に写真を撮るのはどう?」
「見栄えよくしようよ。時間合わせたい」
班の子たちが意見を交わしている。
西和議はそれを注意深く聞き、東沼はノートにまとめていく。
話し合っているうちにチャイムが鳴る。
「えー、もう終わり?」
ほかの班からも声が上がった。
どこの班も試行錯誤している様子がうかがえる。
西和議は一安心したように息を大きく吐いた。
西和議と東沼は掃除中も相談しあう。
箒で床の隙間に落ちた消しゴムのかすを書き出しながら、会話をする。
「写真、どうしよっか」
「これから撮ってこようか……って雨だ」
教室の床を箒で履いていると、雨のにおいがした。
「天気予報だと30%だったのに」
ぽつぽつと雨が降り出し、雨の香りが窓から教室に入ってくる。
窓を拭いていたの子が窓を閉めていく。
窓越しに見える雨と雨雲を、西和議はじっと見つめていた。
「写真は青空だったから、明日にしようか」
「そうだね、今日は部活もあるし」
「文化部でよかったよね。私たち」
話が部活の話題に代わり、箒でごみが一か所にまとまる。
西和議が塵取りを構え、東沼が入れていく。
(どうしたもんかなあ……)
西和議はしゃがんだまま後ろに下がり、写真のことを考えていた。
部活が終わり、西和議は家に帰り、夕食を作る兄を手伝う。
『来週までぐずついた空模様が続きますので傘を持っていると安心ですね』
ダイニングのテレビが天気予報を教えてくれる。
西和議はテレビに視線を移すとテレビには雨のマークが写されていた。
「雨かあ……」
「どうしたんだい?」
「授業でパラパラ動画を作るんだけど、雨だと写真が……」
「そっか。それは困ったね」
「お兄ちゃんの時はどうだったの?」
「僕の時はずっと晴れだったから」
「良いなあ。大通りあたりの写真どうしようかな」
「あそこは人通りが激しいからね。別の方法を考えると良いよ」
「別の方法?どんなの?」
「僕からはちょっとね……みんなと相談すると良いよ」
西和議が洗い物を始めると、兄は風呂の準備に取り掛かる。
洗い物を終えると西和議は自室に戻り、窓から外を見つめていた。