変われることを希う
パラパラ動画を発表する日が来た。
簡潔にまとめる班もあれば、苦労したところを話す班もある。
雨の中あえて撮影した班は、あえて決行したと話してくれた。
雨天時の撮影がいかに大変か、体験して得たことを熱く語っている。
「次は私たちだね」
「うん。任せたよ西和議ちゃん」
西和議の班の発表になる。
パラパラ動画を再生し終え、西和議は解説を始める。
「私たちのテーマは『道』で、通行者や自転車、車に注意して撮影しました」
続いて苦労したところを話す。
「大通りは人通りも激しく雨天時の撮影も怖かったので、あえて絵にしました」
最後に、気づいたことを述べる。
「特に夕方はうす暗いので車に気づいてもらうようにした方がいいと思います」
西和議は頭を下げる。
いくつか質問が飛び、慌てる西和議。
東沼や班の子が代弁する。
西和議の班が回答を終えると、先生が順番を次の班に回す。
次の班長が席を立って動画を再生する準備を始めた。
(ようやく終わったよ……)
パラパラ動画の発表を終え、机に突っ伏す西和議。
「西和議ちゃん、西和議ちゃん」
隣にいた東沼がペンで西和議をつつく。
ガバっと顔を上げる西和議。
「そうだね。ほかの班の発表もちゃんと見たほうがいいよね」
小声で話す西和議に頷く東沼。
(どんなことを悩んだり苦労したりしたのかな)
西和議は発表内容を注意深く聴いていく。
「まだまだだなあ」
授業を終え、西和議は肩を落としてパソコン室を後にする。
廊下のあちこちで授業の感想が聞こえる。
「みんなも工夫してたね。雨の撮影とかいろいろ」
隣を歩く東沼は、感想を述べて西和議を励ます。
「うん、だからもっと伝えたかったな。苦労したとことかいろいろ」
「終わったことだし、切り替えていこうぜ」
「そうそう。次に生かせばいいのさ」
班の子たちに次々と励まされ、西和議は次第に元気を取り戻す。
(次か……いろいろ練習しよう)
みんなの切り替えの良さも見習おうと西和議は思いを新たにする。
「いろいろやっていこうかな。みんなのよかったとこ真似て変わっていきたい」
「その調子だよ、西和議ちゃん。私も西和議ちゃんの聞き上手なとこ真似たいし」
「私はお父さんとお母さんから言われたことを守ってるだけだよ」
「どんなこと?」
「会話は相手のことを考えてやり取りするものなんだって」
両親から教わったことを西和議は東沼に話す。
(帰ったらいろいろ練習するんだ。発表とかパソコンとか魔法とか)
兄や隣のお姉さんに何を聞こうかどう聞こうかを西和議は考える。
二人が西和議にわかるように教えてくれることを希いながら。