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第11話『出発』

「ロット、これが言っていた物だ」


 ロットはギルドに着くなり、クォーツから書類を一枚手渡される。


「これは?」

「アイアンハートの元メンバーを捕まえたあとに、衛兵にこの書類を見せれば捕まえた奴を牢獄に入れることが出来るように手配出来る書類だ」

「なるほど、ありがとうございます」

「これからどうするんだ?この街の周りのダンジョンは全て攻略されている」


 ロットは迷ったあと、あることを思い出す。


「ばあちゃんに会いに行こうと思います。ギルドに登録したら報告しに戻る約束をしていたので」

「そうか、シーラさんに。何かあればいつでも言ってくれ」

「はい!ありがとうございます」


 ロットはギルドを出てファリアス商会へと向かう。


「この街とはお別れだからな、キアナに挨拶しとこう」

「うむ」


 軽い気持ちでキアナに教えてもらった場所へと向かうと大きな屋敷が見える。


「もしかしてあのデカイのがそうなのか?大商会とは言っていたが、こんなにデカイとは……」

「うむ……」


 予想の五倍大きな屋敷に萎縮してしまう。それに入って貴族のような敬語やら難しい作法をするのも面倒くさい。


「行くのやめとこうか」

「うむ……ってダメだ!ちゃんと行くと約束したではないか!」

「分かったよ、衛兵が居るから会えるか聞いてくるよ」


 アオイを少し離れた場所に残し、渋々とロットは門の前で警護をしている若い衛兵に声を掛ける。


「キアナ様に用事だと?アポイントメント無しに面会なぞ出来るか!帰れ帰れ!」

「はぁ……なんかすみません。でも一応、キアナさんに一言伝えておいてください。ロットとアオイは旅に出ました。っと」

「あー分かった分かった。さっさと帰れ帰れ!」

「態度悪っ」


 衛兵は手をひらひらとして、あっちへ行けとジェスチャーをする。態度が凄く悪いのには腹が立つが諦めることにした。


「無理だった。アポイントメント無しで会えるか!馬鹿ども!って」

「どもって!なんで拙者にも悪口を言うんだ!拙者は関係ないだろ!」

「街を出るとするか」

「おい!ちゃんと拙者の悪口を言われた時に言い返したんだろうな?!」


 ファリアス商会をあとにしたロットとアオイは、街を出てロットの故郷の村へと向かう。

 ロットの村は徒歩で一日掛かる。今日は暗くなったら野宿をして朝になったら出発する予定だ。


「ロットのおばあさんはどんな人なのだ?」


 野宿の準備をしているとアオイが聞いてくる。昨日の夕食からロット殿からロットに呼び方が変わった。


「俺のおばあさんは見た目がとにかく若いな、宝具のせいで見た目が20代から変わらないんだよ」

「そのような宝具があるのか……」

「美人で優しくて料理が美味い自慢のおばあちゃんだよ」

「良いおばあさんなのだな」


 簡易の机と椅子を並べ、机の上に鍋を置く。


「ロット特製!野菜ゴロゴロ鍋だ!」

「う、うむ、本当に大きく切った野菜が入っているな……火は通っているのか?汁が透明だが味は付いているのか?」

「大丈夫!俺がダンジョンにいた時にほぼ毎日のように食ってた料理だ」


 ロットはアオイの皿に移してやると、アオイはフォークでジャガイモを突き刺して口に運ぶ。


「う……美味い!塩味が効いていて美味いではないか!」

「そうだろ?!二年の間に試行錯誤を繰り返して完璧な野菜の大きさと味付けを完成させたんだ!」

「うむ!本当に美味い!野菜も大きいのにしっかりと火も通っていて完璧だ!」


 美味しそうにアオイは野菜を口に入れる。


「なんだか嬉しいな。ずっと自分のために作っていた料理を人に食べてもらって、こんだけ褒めてもらえると料理人として嬉しいよ」

「ロットは料理人だったのか?」


 ロットはアオイの言葉を無視して、鍋を食べながらしみじみ思った。


「本当に美味しい!拙者の体が治った時もこれを作って祝ってくれ!」

「ああ、任せとけ!もっと美味いのを作ってやるよ!」


 夕食を食べ終え、片付けをして寝る準備をする。


「アオイ、ちゃんと歯は磨いてから寝るんだぞ」

「子どもか!今しがた済ませたから心配するな!」

「アオイ、トイレも行っておくんだぞ」

「それも済ませた!」


 アオイは寝袋に入り目を閉じる。明日はロットの生まれ故郷に行く。

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