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第10話 『勧誘と由来』

「ロット殿も裏切られたのか……」


 ギルドでギルドカードを受け取り、宿屋に向かう最中にアオイはポツリと呟く。


「ん?なんか言ったか?」

「いや、なんでもない」

「そういえば、地図は買わなくても良かったのか?」

「あっ、う、うむ!明日また行くのでその時に買うとしよう」

「そうか。にしてもキアナさんの話だとこの辺に宿屋があるんはずなんだけどな」


 ギルドから少し歩いたところにあると言われていたが探しても見つからない。夕方で薄暗いのも相まって余計に見つからない。


「アオイも探してくれよ」

「む!アレではないか?宿屋『ラブ・ホリデイ』と書いてある」


 アオイが路地裏にある大きくハートの書かれた看板を指差す。


「……あの宿屋は未成年は泊まれないんだよ」

「そうなのか……あっ!奥にもあるぞ!宿屋『愛の宿屋』と書いてある」


 奥を見ると、女性のキスマークが大きく書かれた看板があった。


「アオイ。そっちには絶対にないから、もっと明るい場所から探してくれ」

「そうなのか?あっ!アレではではないか?宿屋『止まり木』」


 アオイの指差す方向を見ると少し遠いところに鳥が休んでいる看板が付いた店があった。


「そうそう!俺たちが探してたのはこういう宿屋なんだよ」

「……?」


 宿屋は三階建てで一回が食堂、二階からは宿屋になっている。部屋を2つ取りアオイと別れて部屋に入る。


「ふぅ……」


 アオイに一緒にダンジョンを攻略する仲間になってほしくて誘おうとしたが、邪魔が入ったことを思い出し溜息が出る。

 ロットはアオイの強さに惹かれていた。もしもダンジョンを探索する仲間になってもらえるなら。


「よし」


 ロットは部屋を出て鍵をしっかりと締め、アオイの部屋の扉をノックする。


「アオイ、話したいことがあるんだが良いか?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「どうしたんだ?」

「な、なんでもない!入って良いぞ」


 部屋に入るとアオイの顔が少し赤かった。それに少し着物が乱れている。


「ど、どうかしたのか?ロット殿」

「実はアオイに頼みたいことがあってさ」

「頼み?」


 乱れた着物を整えながらアオイは聞き返す。


「俺と一緒にダンジョンを攻略してほしいんだ!アオイの体の怪我を治す宝具もきっと見つけて見せるからさ!」

「そうか……実は拙者も同じ事を頼もうと思っていた」

「そうだったのか!」

「ずっとギルドや宿屋に付いて来ていたのは、一緒に着いって行って良いかと頼のもうか迷っていたのだ」


 頭を掻きながら照れ臭そうにアオイは話す。


「そうだったのか!なんだよ言ってくれよ!」

「う、うむ……」

「よろしくな!アオイ!」

「こちらこそだ!ロット殿!」


アオイが手を差し出してくる。その時、袖から白い布が飛び出ていたのをロットは不思議に思い引っ張る。


「ん?アオイ、なんか出てるぞ」

「あっ!」


 ロットが布を引っ張るとスルスルと袖から少し幅の細く白い布が出てくる。


「これは?あっ……すまん」

「うむ」


 アオイが巻いていたサラシだと気付きロットは手に持っていた端の部分を返す。


「ちょうど体を拭こうとしたらロット殿が訪ねて来たので……しっかりと巻いていなかった拙者も悪い」


 恥ずかしそうにしながらゴニョゴニョとアオイは説明する。


「それは……ごめん。部屋に居るから終わったら来てくれ。一階の食堂でご飯でも食べに行こう」

「うむ、終わったら部屋に向かおう」


 ロットは部屋を出て自室に戻りベットで横になる。久しぶりの柔らかいベット。ダンジョンにいた頃は地面の上にクレインたちの服を敷いて寝ていた。


「ロット殿!来たぞ!」

「わっ!」


 当然の声に驚く。どうやら寝かけていたようだ。


「ああ、行くよ」


 扉を開けるとアオイが立っていた。


「それじゃあ行くか」

「うむ」


 食堂に着いてお品書きを見て注文を済ませる。

 しばらくしてロットの前には大きなハンバーグ、アオイの前にはカレーが置かれる。


「……なあ、聞いて良いのか分からないだけどさ、ミカヅキ流って技の名前がどうして料理名なんだ?」

ほれふぁ(それは)だな」

「ごめん、話しかけたタイミングが悪かったな。飲み込んでからで良いぞ」


 アオイはゴクンとカレーを飲み込む。


「それはだな。ミカヅキ流の創始者が技名を考えている際に、外の世界から流れてきた書物を参考にしたそうだ」

「なるほど……料理本か何かだったのか?」

「いや、料理名しか書いていない紙だったそうです」

「料理名しか書いてない紙……」


 ロットはチラリとテーブルの上に置いてある手書きのお品書きを見る。


「創始者は語呂の良さなどを気に入って、自分が作った技に次々と料理名を付けていったそうだ」

「料理名って気付かなかったのか?」

ひまでふぁひのふにで(今では日の国)

「ごめん、話しかけたタイミングが悪かったな。でも二回目なのに飲み込んでから答えないアオイも悪いからな」


 アオイは口いっぱいに頬張ったカレーをゴクリと飲み込む。


「今では日の国でもカレーなどは作られているが、創始者の方が生きていた時代はカレーやオムレツは知られていなっかたのだ」

「それなら仕方ないか」

ひょういうふぉふぉで(そういうことで)

「この場合は完全にアオイが悪いな。今回は俺は話しかけてないからな」


 こうしてアオイとご飯を食べながら話してロットの長い一日が終わった。

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