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また『光』が戻ると、空気はからりと冷たくなり、私は嬉しくなって『さかな』のナワバリを駆け回った。悲しい悲しいと顔まで正直に告げていた『さかな』も、気が紛れたように笑っていた。
ふと、主の匂いが風にのって漂って来た。ようやく迎えに来たかと、期待をこめて腰を上げる。しかし、遠い。
ナワバリの外に駆け出して、風の匂いを嗅ぐ。沢山の『あしなが』のナワバリが続くこの場所から、少し離れたところで熱く喉を刺す黒い煙が上がっているのが見えた。あれは『あしなが』が冷たくなった後に、火をつけられる場所だと知っていた。
まさか。まさか。
勝手に身体が動き出していた。まだ水の残るドロドロとした土に足をとられながら、必死にその煙を目指した。それでも、もう気付いてしまっていた。あの煙から、主の匂いがしているのは、確かだった。
煙の立つ場所に辿り着くと、主に火をつけていた『あしなが』達がキャンキャンと例の訳の分からない音を立てて私を追い払おうとしたが、今はただただ煩わしかった。