表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

06

 どぼどぼと世界にあふれる水の音に、私は母の冷たくなった時のことを思い出していた。同じように、どぼどぼと世界は水であふれ、私たち兄弟は腹をすかせていた。いつも獲物を持ってきてくれる母は冷たくなって動かなくなり、こうなるともう二度と動かないことを、本能で知っていた。



 最初こそ悲しい悲しいと鳴いて、身体を擦り寄せていた兄弟達も、一匹また一匹と姿を消して。私もまた、その一匹となり、この優しくない世界を歩き通した。



 まだ遠吠えも満足に出来ない子犬であった私を、道行く『あしなが』たちはついでのように後ろ足で蹴り飛ばして歩いて行った。そんな中で私を拾い、ただ一匹、優しくしてくれたのが主である。温かい飯。温かい寝床。そして、またあの前足で私の頭をなで回すのである。



 あの器用な前足が好きであった。今どうにも冷たいこの身体を、温めてくれまいかと、そう思いながら、代わりのようにこちらをギュウギュウと締め付ける熱に、くたりと身を委ねる他は、なかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ