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『光』の消えて、水がどぼどぼと上から落ちている時に、また『さかな』が出かけて行き、美味そうな匂いをさせて帰ったが、ひどく悲しい悲しいという匂いも撒き散らしており、何やらちぐはぐであった。
『さかな』は私を見ると、目からぼたぼたと水を垂らしながら、前足を差し出してぎゅうぎゅうと私を締め付けた。最初はよほど吠えて暴れてやろうかと思ったが、これは『あしなが』が悲しくて悲しくてどうしようもない時にやるのだと知っていたから、しばらくはそのままにさせてやった。
私を締め付ける『さかな』の毛皮は、いつもと違って魚臭くなくて、ほんのりとあの『主』の匂いがした。すんすんとそれを嗅ぎながら、いったいいつになれば主は戻るのだろうと、気の遠くなる思いがした。