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1-7 バストとホッチキスとマニュアル






「そろそろ行かないと、二人も苦戦してるみたいだし」


 御母衣さんが窓の外に目を向けた。


「えっ、行くルル!?」

「やる気出た」

「うぉおおルル!」


 彼女の横顔を見ていた僕と目があった。


「見ててよ、宇部三太君。こういう人間がライヴリー・グリーンなんだ」


 うっすらと笑顔が見えた気がしたが、やはり相変わらずの仏頂面だった。


「さあ、そうと決まったらいくルル!」


 ルルゥが声をあげると御母衣さんが緑の光に包まれた。

 まばゆい光に目が眩む。しかし、薄目に飛び込んできたのは衝撃的な光景だった。


 蛍火のような細やかな光が御母衣さんの衣服を溶かしていく。

 御母衣さんの体のラインがはっきりとしてきて、細身な体型とは裏腹に豊満なバストの輪郭が見てとれた。制服の上からだと分からなかったが……。


 これ以上見てはいけない気がして、僕はさっと目をそらした。


 いや、もう一回だけ見てみようと顔を上げたときには彼女はライヴリー・グリーンのコスチュームに身を包んでいた。


 勇気がないと、損をするいい例だと思わずにはいられなかった。


「じゃ、行ってくる」


 そういって地面を一蹴り。ガラス窓、その他諸々の備品を破壊して飛び去って行った。

 遠目でみても常人離れしているとは思っていたが、近くでみると一段と迫力がある。


 にしても、ライヴリー・グリーンの力強さと破天荒ぶりは他の二人とは一線を画しているな。

 戦い終われば修復されるからってここまで躊躇ためらいなく破壊活動を行うとは。


 気がつくとルルゥはいなかった。ライヴリー・グリーンが変身したときからいなかった気がするが、一体化でもしているのだろうか。


「さぁ、今度は三太の出番リリ☆」

「びっくりした!」


 どこからともなく現れたリリィ。


「どこ行ってたのさ」

「リリィがいると三太がハンサム騎士だとバレてしまうリリ☆ だからちょっと隠れるついでに君の友達を遠ざけておいたリリ☆」

「小田原くんを? どうやって?」

「さぁ、そろそろカラプリ達がピンチになるころリリ☆」


 いつも肝心な質問には答えないんだよな。微妙に信頼が置けないやつだ。


 リリィはそんな風に言うが戦況は決して不利ではない。むしろ素人目にはカラプリ達が有利なんじゃないかと思ってしまう。


 というよりライヴリー・グリーンが強すぎる。ワルモノーもいつもより狂暴性があるように思えるが、ほとんど一人でひるませ続けている。


 そんな感じなのでパッション・レッドは歌わないし、ファイン・ブルーは絵を描かない。

 言い訳程度に肉弾戦に参加しているが、ダメージのほとんどはライヴリー・グリーンが与えている。


「正直これ、僕が出てもシラケるだけなんじゃ……」

「まだまだわからないリリ☆ 油断せずマニュアルに目を通しておくリリ☆」

「マニュアル?」

「ああ、まだ渡してなかったリリ☆」


 もうこの界隈のお約束、書類は突如にして現れる。慣れって怖い。

 めくってみること15枚のA4用紙。左上をホッチキスで留めてある。ここも魔法でなんとかならなかったのか、夢がない。

 その肝心の内容は?

 


『STEP1 登場の仕方を覚えよう

 ハンサム騎士にまず大切なのは鮮烈な登場シーンです。例文を覚えて、まずは基本の登場の仕方を──』



 なんだ基本の登場って。

 というか、結構学校の教科書みたいだな。反射的に学習意欲が削がれるなあ。

 パラパラとめくって、最後のページ。ゴールはどんな感じなんだ?



『STEP14 ハンサム教に入信なさい』



 僕はテキストを閉じた。戦いに目を戻す。


 ワルモノーは見るからにスタミナがきれていて、もう敗北間近といったところか。

 それでもライヴリー・グリーンは容赦なく連続攻撃で畳み掛ける。ワルモノーに同情さえしてしまいそうな勢いだ。

 これは出動することはなそうだ。


 リリィを横目で見ると何かを考え込んでいるのか、机の上に座ったままぬいぐるみのように動かない。


 ……えっ、もしかしてこれホンモノのぬいぐるみ? 


「これは本当に出番ないかもしれないリリ☆」


 ああ、リリィか。

 そりゃあ、こんな独特なデザインのぬいぐるみが教育の場にあるわけないよ。



「カラープリンセスゥゥウウ!! 貴様の天下もここまでダァァアア!!!!」


 外で誰かが怒号が上げた。

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