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1-6 ルルゥと業火とムアンチャイ






「ギャー、今の話聞いてたルル!?」


 ぬいぐるみが悲鳴を上げた。ウサギのようなモチーフで、頭にある星型のアップリケがチャームポイントなのだろうか。


「ええ、まあ……はい」


 脱兎の如く逃げ出してもよかったが、素直に返事を返してしまっていた。


「これはまずいルル!? 正体かバレたときは……マニュアルマニュアル、ええと」


 電話帳くらいの厚さがある本を召喚し、猛烈なスピードでページをめくっていく。


「次の魔法を唱えて直ちに対象を抹殺ルルね! デスデスキルキル、デスデスキルキル、地獄の業火で……」

「わぁあ!!」


 僕は急いでそのぬいぐるみをマニュアルからひっぺがし、壁に投げつけた。


「へぼわぁ!」


 となにかが萎むような声をだして地面に落ちた。


「あ、危なかった」


 あんなオーバーキル確実な魔法、唱えさせるわけにはいかない。


「君は」


 御母衣みぼろさんがぼんやりとした目でこちらを見つめる。

 なんだか照れ臭くなって、思わず目をそらした。


「葉菜ちゃん、こいつのこと知ってるルル? それはそうと殺さなきゃ!」

「ルルゥ、見るページ間違えてる。正しくは1457ページ」

「え? あっ、本当ルル」

「君、どこかで見たことあるような気がする」


 まじまじと僕のことを観察しながら、周りを二度三度まわる。


「同じクラスの、宇部三太うべさんたです」

「ああ、そうだった。じゃああっちがムアンチャイ・キャットニワットか」


 どんな間違いだよ。ムアンチャイ……なんて?


「宇部君、私がライヴリー・グリーンだって聞いた?」

「うん」

「そっかぁ」


 御母衣さんが鼻で笑ったあと、何か考えるような顔つきになった。

 それがどういった感情によるものなのかはわからないが、彼女が表情を変えたところを初めて見た気がする。


「ねぇ、ルルゥ。私が自身の正体を第三者に明かした場合は、どうなるんだっけ?」


 御母衣さんがルルゥに尋ねた。


「葉菜ちゃんのカラプリに関する記憶を契約時から遡及的に抹消するルル」


 いちいち物騒だな。それに物言いが相変わらず事務的だ。

 てか、説明受けてなかったけど僕もそうなるのか。じゃあ、辞めたくなったらいつでも……。


「ただ魔法は万能でないルルから、二回に一回は消しすぎちゃって知能が四歳児になるルル」


 ウッス。


「でも、今回はルルゥが私の名前を呼んだから、彼にライヴリー・グリーンの正体がバレちゃったわけだよね」

「えっ、そうなのかルル?」


 二人の顔がこちらに向いた。

 ルルゥはうっかり僕を地獄の業火で焼こうとしたやつだ。

 あまり信用できないため、ここは御母衣さんに乗るしかない。

 僕はゆっくり首を縦に振った


「でもルルゥが私の正体を明かした場合は?」

「えっ、ええ……そんなケース考えたことなかったルル」

「489ページ、早く」

「は、はいルル」


 ルルゥの立場弱いな。

 カラプリの中でもライヴリー・グリーンがダントツで強いとは聞くが、それが関係しているのだろうか。


「ええと、甲が乙との秘密事項を第三者に漏洩した場合、甲は死ぬ……えっ? 死ぬ!?」


 ルルゥの顔を見る限り、死ぬのは妖精たる甲のルルゥらしい。

 何度も何度も見直しているが、やっぱりそこに書かれていることに間違いはないようだ。


「最後の四文字だけ周囲から浮いてるルルよ!? もうちょい、死ぬにしても具体的な……ええっ!?」


 僕を殺そうとしたルルゥが死ぬ。可哀想だが、それが因果応報だ。


「ルルゥ、でも貴方が死ななくてもいい簡単な方法があるよ」

「あっ……なるほど、コイツを殺すルルね!?」

「違う」


 御母衣さんはルルゥのほっぺたを掴んで、びよーんと伸ばした。

「痛いルル、痛いルル」といい気味だ。


「私達が何も見てないことにするだけよ。どう?」

「どうって……まぁ、そらそうルルけど」

「自分の正体を知っている人間が一人くらいいてもいいと思ってたの。だから、このことは公にしないほうがお互いにとっていいのよ」

「うーん、まぁ、そうルルかぁ」


 そういえばリリィも聞いてたんじゃないか?

 この時点で三人だけの秘密ではないが……そう思って理科室の方を振り替えるがそこにリリィの姿はなかった。


 まあ、この件がリリィにばれたとしても僕に対しての不利益はないようだからいいや。

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