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1-3 控えと副主任と悪者






「よしきたリリ☆」


 僕の返事を聞くや否やでリリィがそう答えた。

 リリィが腕を振ると空中に二枚の紙が突如として出現した。

 よく見るとその二枚の紙は上の部分が貼り付けられて繋がっていた。


『ハンサム騎士契約書類』


 そう書かれた紙は一枚目が提出用、二枚目がハンサム騎士控え。

 ガチで契約書じゃん。

 右手に不意にボールペンが触れた。


「さあ、さっそく手続きに入るリリ☆」


 ふわふわと漂うペンを掴み、僕は氏名を書き出した。続いて、住所、生年月日……。


 リリカルとリアルの差が激しいな。

 夢を見ているような、それでいて頭ははっきりと冴えているという妙な感覚に陥ってしまう。


「ここ、未成年者は保護者の連絡先も書いておいてほしいリリ☆」

「あっ……すみません」


 親の保護下にある正義の戦士ってなんか嫌だなあ。 


 もしかしてカラプリ達も書いてたのかなあ。

 なんか、遊園地の着ぐるみの中身を見てしまったときもこんな感じなのかなあ。


 不意にどこからか、陽気な音楽が流れてくる。


「電話リリ☆ 出ても構わないかリリ☆」

「あっ、どうぞどうぞ」


 この曲、スーパーかどこかで流れてたような。

 ファンシーランドの住人の着メロをまさか聞いたがあるなんてあり得ないが、米津GENJIの曲にあったような……あっ、lPhoneXなんだ。


「もしもし、リリィだリリ☆」


 ぬいぐるみがケータイを持って電話しているという不気味な光景。

 サイズ感が合っていないため耳にも口にもケータイは当たっていないが、それでも何故か会話はできているらしい。これが魔法の力か。


「はい……はいリリ☆ え? いや、これはこっちで使ってる語尾リリ……じゃなくて語尾です。はい、はい。

 いや、副主任からは下界では語尾を変えるように伝えられてましたので……はい、はい。以後、気をつけます、申し訳ありません」


 えええ……夢も希望もねぇ。それに下界て、下なのかよ。


 すでにハンサム騎士になると言ってしまったことを後悔しはじめていた。

 いや、まだ契約書を提出していないし辞退できるんじゃないか。


「はい、はい。かしこまりました、はい。それでは、はい? ああ、はい、はい失礼いたします、はぁい」


 ピッ、と電話を切ったリリィが大きな溜め息をついた。


「すまないリリ、見苦しいところを見せたリリね☆」

「あっ、いえ」

「実際、この業界も甘くないリリ☆ 

 どれだけの契約数を取るか、それが全ての結果主義が渦巻いているリリ☆ 

 けど、リリィはヒーローは誰にでも勤まる職務ではないと思っているリリ☆ 

 だからヒーローになるべき人間がヒーローになりたいと思っているときに契約を持ちかけるリリ☆ 

 そう、今回も例に漏れないリリ☆ 

 君ならきっと上層部の予想を遥かに超えるハンサム騎士になってくれると、リリィは期待しているリリィ☆」

「あっ、ありがとうございます……」


 断りずらぁい。

 そのリリィの目が澄んで見えるのはその志によるものなのか、または目の材質によるものか。


「書類は書けたかリリ☆」

「は、はい」

「確認させてもらうリリ☆」


 手に持っていた紙がフワリと宙に浮き、リリィの手元に収まった。

 紙でリリィの顔が隠れているためはっきりとは分からないが、きっと記入漏れがないか顔を動かして見ているのだろうか。


「問題はなさそうリリ☆」


 次の瞬間、キラリと瞬いたかと思うとリリィの手元から書類が消えてしまった。

 ああ、もう戻れない。


「いやあ、よかったリリ☆ なかなかハンサム騎士になりたいと言ってくれる人も少なくてリリ☆」

「あぁ、そうなんですか」

「なんせ危険が伴う仕事だからリリ☆ ハンサム騎士としての才能があれば問題ないリリが、前代なんかてんでダメであげく全身……あっ、こんな時間リリ☆」

「えっ、全身? 全身が何ですか」

「じゃあ、リリィは支店に顔を出してくるリリ☆ 次に会うときはワルモノーと戦うときリリ☆」

「ワ、ワルモノー?」


 カラプリ達が戦っている怪物のことだろうか。

 察しこそつけども、リリィは僕の質問に答えることなく押し入れをわずかに開けて、その隙間に入って行った。


「ちょっと待って!」


 押し入れを全開にしたが、そこにはリリィの姿は見当たらなかった。布団や収納ケースを引っ張りだしてもどこにもいなかった。


 さっきとはうってかわって静かになった部屋。

 まるで夢のようだったが、学習机の上には契約書の控えが置かれてあった。


『以下、妖星を甲とし、契約者様を乙とする』


 乙

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