アクセス3〜ゼロの村〜
看板から真っ直ぐ歩き続ける事十分。
漸く村が見えてきた。
(遠くから見てるせいかやったら小せぇ村に見えるなぁ。)
そう思うのも仕方ねぇだろう。
何せ今この距離から見ると、家らしき物が六件位しか無いように見えるんだからよ。
取りあえずっと。
「この距離で見えてるってぇ事は、あと十分くらいで着くかね。」
俺はそう言いながらも歩く速度が上がっていた。
無意識に……気づいたら小走りになっていたんだよ。
小走りしてから初めて俺が急いでる事に気付いた位、本当に無意識だったんだ。
十分位かかると思っていた距離が五分もかからず着いちまった。
「っっはぁはぁ……はぁ〜。是がゼロの村か……本気小せぇ。」
遠目から六件位しか無いように見えたが、本当に六件しか無かった。
軽く乱れた息を整えながら其の村の中へ足を踏み入れた。
「おや?新しい御客人だね!ようこそゼロの村へ!この世界に訪れて間もないなら左手にある初心者の館に行くといいよ。其処で色々とこの世界の事を教えてくれるはずさ。」
村に入った瞬間、如何にも村人Aといった感じの人が突然話しかけてきた。
いや驚くだろう?普通さ。
「っ!あ、ああサンキュー。あんた先に入った人か?」
少し驚きながら礼を言って其の如何にも村人Aって感じの人を見る。
「?入った?どういうことだい?僕はこの村で産まれ、この村で育ったから他から来たって訳では無いよ。……!そうか君が言っているのは君と同じように異世界から来た人かどうかって事だね!それなら答えは全然違うよ。僕はこの村の住人でノラって言うんだ。すぐ其処の道具屋の裏手で小さな畑を耕してる者だよ。」
そう言って笑う村人A改めノラ。
(つまり何だ?この人はNPCって事でいいのか?んでもって異世界?解らん事が多すぎるな……。取りあえずノラが言っていた初心者の館だかってとこ行ってみるか。)
「そうか、変な事言ってすまなかったな。左手っつぅとあそこだな?行ってみるわ、サンキューな。」
俺はそう言ってノラに軽く頭を下げながら、初心者の館だかって処に向かう。
「……館って感じじゃねぇだろうこれは。」
どっからどう見ても小さな小屋にしか見えないそれが、初心者の館で間違い無かった。
何故解るか……それは大きく小屋の入口上に看板が掲げてあったからさ!
【初心者の館!】
どうにもこうにもふざけている感じが満々だな。
まぁ、んな事言ってても仕方ねぇし、一先ず入ってみる事にするか。
[カランカラン]
鈴の鳴る音と共に扉が開いた。
もちろん扉を開けたのは俺……では無く、恐らく俺と同じプレイヤーの人であろう俺より幾つか上っぽい兄ちゃんだった。
ちなみに俺の年齢は二十一だ!
兄ちゃんは何となく見た感じ二十四か五位に見えるな。
「おっと、危ない危ない。ん?君もプレイヤーの子かい?」
開けようとしていた俺と、突然出てきそうになった兄ちゃん、必然的に衝突しそうになった処をギリギリで踏みとどまったのだ。
そして俺が質問する前に逆にされてしまった訳だな。
「あ、ああ……っとと、そうです。お、自分は今始めたばかりで、漸く村に着いた処だ……です。」
(うわっちゃ〜敬語なんて普段全く使わないからボロボロだなぁ。兄ちゃんも笑ってるし!)
「ああ、ごめんね笑っちゃって。無理に敬語を使わなくてもいいよ。僕はダイス、君と同じく初心者で僕は少し前にこの村に着いた処なんだ。」
ん〜いい感じの兄ちゃんだな。
って、相手が自己紹介してくれたのに俺は何やってんだよ馬鹿。
「あ、すまねぇ。俺はサヤだ。初心者ってこのゲームがって事か?それとも俺みたいにこういったゲーム全般に関してという事か?」
軽く自己紹介をして、気になった初心者発言について聞いてみた。
「君っととサヤ君か。サヤ君はこういったオンラインゲームを余りやった事が無いんだね?僕は一応今まで色々とこういったオンラインゲームをやっているからそういう意味では初心者とは言いずらいかな。上級者とも間違っても言えないけどね。僕が言ったのはこのゲーム関してはって事だよ。」
俺のどうでもいいような質問にもこうやって真意に答えてくれるその姿勢がとても気に入ったっていうか感動した。
実際色々と話を聞いていると、こういったゲーム(オンラインゲームって言ったよな?)の中ではマナーをきちんと守って遊ぶ人や、ダイスみたいに親切に真意に応えてくれる人ばかりじゃないって感じだったからな。
むしろ、そういう感じの人は多くないって書いてあった。
だから初めて話した同じプレイヤーがダイスみたいな良い人で本当に良かったと思った訳だ。
「そうなのか。一応ある程度調べはしたんだが、こういったゲーム、オンラインゲームって言ったよな?今まで少し触った事がある程度で初めてみたいなもんでな。実際こういう事を聞くのも可笑しいんだろう?そう言った事も解らんから、変な事や迷惑掛けちまってたらすまねぇな。」
俺がそう言って頭を下げると、慌てたように手を振りながら否定してくれた。
「そんな事無いさ!僕は少しだけ先にこのゲームに入っていたし、オンラインゲームをサヤ君より少し多くやっていたんだ。普通はそういう場合、教えるって言い方は違うけど話をしたり、聞いたりするのは当たり前……だと僕は思うんだ。他の人の考えは解らないけどね。」
そう言って苦笑を洩らすダイスが俺には本当に良くできた人間に見えた。
今までこんな感じの人に会った事が無かったから余計にそう感じたのかも知れねぇけどな。
「ん、そうだね。僕と話してるよりこのゲームの事ならこの館?の中で話を聞くと色々解りやすいよ。しっかり聞いておいた方がいい話しも結構あったからね。アイテムとかも少しくれるから絶対入った方がいいんじゃないかな?と思うよ。」
俺が一人そんな事を考えていると、ダイスはそう言って笑った。
色々と表情を変化させていたみたいでそれを笑われたっぽい。
「ああ、色々ありがとな。」
俺は其の恥ずかしさを隠すように片手を上げてダイスに挨拶をし館?ってか小屋に入る事にした。
「気にしないで。それじゃあ頑張ろうねお互いに。始めた時期が殆ど同じみたいなものだから、これから何度か会うかもしれないよね?その時はよろしくね。」
ダイスが俺にそう言ってくれたので、俺も「その時はよろしく頼む。」と言って別れた。
ダイスが見えなくなったのを確認してから俺は其の小屋に入った。
まさか……あんな輩がいるとは思わなかったぜ其の時は。
さっきダイスが笑ったのはもしかしたらこいつの事を隠していたからかも知れない。
ちょっとした悪戯みたいな感じで。
そう思ってしまうほど目の前に輩に肝を冷やしたんだよ!
可笑しな点や間違い等ありましたら御指摘、御報告があると大変助かります。
自分自身でも何度も見直し確認しましたが、何かありましたらよろしくお願いします。