アクセス2〜旅立ち〜
「はぁ……これがゲームの中か、現実と何も変わらねぇじゃねぇか。」
俺は今ゲームの世界、ゲームの中にいる。
大人数参加体感型オンラインゲーム【エルドラド】。
一年前に発売され、色々な問題を抱え込みながらも莫大な人気を誇っているのは、一重にこの現実世界と全く変わらない感覚を持ちえながら、冒険を楽しめるからだろう。
「この世界は貴方の世界……か。」
俺はこのゲームのキャッチコピーの一言を呟きながら改めて自分自身の感覚を確認してみる事にした。
手の握りしめる感覚、脚を踏みしめる感覚。
悪かった視力が良くなり遠くまで見通せる眼、風の音を聞ける耳。
本当に全て本物と同じとしか思えねぇ。
「ぅあ!ペッペッ!味覚までしっかりあるのか。」
試しに近くに生えていた草を口に含んでみたら、その余りの苦さに思わず涙が出そうになった。
全感覚が現実と同じかそれ以上なのを確認して初めて周りを見渡した。
「初心者の平原……か。」
周りは見渡す限りの平原。
そして目の前に木の立て板。
其処に【初心者の平原↑ゼロの村】と書かれていた。
「やっぱり……少し出遅れたのかね、誰もこねぇ。」
一年前に発売され、今日から本サービスが開始されたんだが……。
「流石に六時間もたてば殆んど皆もう進んでるよな。」
にしても……一人もいないのは不思議だな。
幾ら時間がたっているからって初日なんだ。
常時この場所に何人かはいるもんじゃないのか?
「……なんて、ゲームほっとんどやった事ねぇからなぁ……これが普通なのか?」
等と俺は暫く周りを確認しながら誰かが来ないか待ってみた。
待ってみたが……。
「誰もこねぇ……。」
仕方なく俺は一人、レイアスに言われた通り看板から真っ直ぐ進み、村まで向かう事にした。
出来る事なら安全の為、数人で動きたかったんだがなぁ。
何故かって?
そりゃ……。
「死んだら全部そこで終わっちまうからな。」
そう、このゲームエルドラドは、死んでしまうと現実と同じで終わりなのだ。
つまり、今使っている俺自身を新たに作り直さないといけず、全て初めからやり直し。
そして……。
「下手したらそのショックで死ぬ可能性があるって訳か……ったく面白いぜ!」
命の危機すらあるゲーム……だからこそ皆真剣に、他のゲームと違って無茶や無理を避け、生きようとする。
勿論LPも死んだりしないよう、システムを作っているが、其れでも思い込みの激しい人とかは危ないらしい。
今までにも既に数人そのような人が出てるらしいが、其れでも人気が落ちる事は無かった。
規約の最後に書いてあったな……【生命の危機があり、其れに大して責任は負いませんので御了承下さい。】ってな。
「まぁ、死なないように頑張るか!」
可笑しな点や間違い等ありましたら御指摘、御報告があると大変助かります。
自分自身でも何度も見直し確認しましたが、何かありましたらよろしくお願いします。