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マザーポリス  作者: 山門芳彦
第一章 脱出
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初めてポリスに来たとき

 「マザーポリスが誕生したのは二十年前のことだ。それまでここは人間の管理する大きな都市だった。人間がアンドロイドによる都市機械化政策を実施したのがはじまりだった。最初はアンドロイドによるインフラとライフラインの管理からはじまった。優秀なアンドロイドは仕事をしっかりとこなしたそうだ。

 やがて人間がそれよりも賢いアンドロイドを開発すると、人は愚かにも今まで人間が行ってきた議会を大勢のアンドロイド共にさせるようになった。議会を牛耳ったアンドロイドは遂に人間を虐げ始めた。それが五年前のことだ」

 ヨタは理解するために必死に聞き、同時に録音機能を作動させていた。ヒロが続けて話した。

 「僕等がここに来たのはそのときだった。僕等の出身はここから少し離れたナカマチという街なのだけど、そこではマザーポリスの件が随分と懸念されていた。機械による支配の手がここにも来るのではないかってね。

当時学生だった僕等はというと、これまでにない新しい街に対して興味があった。もしかするとビジネスチャンスがあるかもと期待したくらいだ。」

 交互に話は続く。

 「それで俺達は周りの意見に目もくれずマザーポリスにきた。あの時は確か、大学の恩師のヒガシ教授も付いてきてくれてたな。

 マザーポリスに着いた時、最初は建物に驚いた。ビルの高さと建物同士の密度は新宿やニューヨークの比じゃない。次はアンドロイドに驚いた。肌の色から歩き、お喋りの様も人間と全く同じに見えたからな。」

 「じゃあマザーポリスの人間は何をしていたのでしょうか」

 ヨタの質問を弾みにトシロウは勢いよく話を続けた。

 「そうだ!俺達は人間を探した。しかしどこに行っても見渡しても、アンドロイドばかりで人間が見つからなかった。丸一日探してもう休もうと思った時、ようやく一人見つけたんだ…。」

 ここまで話すと、トシロウは突然俯いて声を詰まらせてしまった。ヨタは何かあったのだろうと察したが、何があったのかは分からない。そんなヨタを見てヒロが代わりに続けた。

 「どうして人間だと分かったと思う?」

 ちょっとウーンと唸ってからヨタは答えた。

 「子供だったからですか?」

 ヒロは首を縦に振ってから続けた。

 「それもだが、その子が倒れていたからだ。随分とやせ細った姿でね」

 「すぐに持っていたパンを食べさせたが…本当に可哀想だった…。目は虚ろで声には力が全く無かった」

 トシロウは涙ぐみつつそう言った。ヨタは彼の涙の因がアンドロイドにあるのだと悟った。

 「その子供がいたのが丁度この場所の前だったんだ」

 ヒロが倉庫の外の道に目をやった。そこにはバツ印が彫られていた。

 その上を何も気にせずに丸坊主のキャタピラ脚が通って来た。人間二人は三秒ほど、目を閉じ俯いていた。

 「最後まで話せなかったな」

 「また続きを聞かせてください。僕は仕事に戻らなくては」

 「待った。また会いたいから、終業の時間を教えてくれ」

 「これから集合場所に行って報告をすれば今日の清掃は終了です。その後なら会えます」

 「分かった。ならまたすぐにここに来てくれ。そしたら続きを話す。それにさっき頼んだ道案内もやって欲しいからな」

 「でも僕、夜は警備の仕事があります。長居は出来ないと思ってください」

 「ん、了解だ」

 「ではまた。行こう、丸坊主くん」

 二体は倉庫を出て行った。ヒロはトシロウに言った。

 「彼は警備と言ったな。しめた」

 「作戦通り、これを利用出来そうだな」

 二人が見た倉庫の壁には一枚のポスターが貼られていた。こう書かれている。

 《19:00よりマザーポリス独立記念花火大会開催》


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