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剣を交えて

 手入れの行き届いてる中庭の広場で剣が交わる。

包帯で巻かれた剣を二人の男が交える。綺麗な黒色を肩より少し長く伸ばす少年は余すことなく力を入れた斬撃を繰り出す、その剣筋は荒いものの素早く重く、弱い魔物程度を葬るには十分なほどだ。

 対して、灰色の髪の男は腰まで伸びる髪を揺らしながら、目の前の斬撃を軽く流す。


 黒髪が振るう剣は決して軽くはなく、一人前の騎士であっても片手では使いこなせないだろう。しかし、そんな剣を右手のみで振るう彼を年齢で表すなら17歳。とても身体に見合った武器ではないし、ウデマエだけは年齢より遥か上ではある。

 彼の才能を引き出した、剣の師匠である灰髪の男は28歳と若く、大剣を片手のみで操り斬撃をいなす達人であった。


 

 灰髪が繰り出す洗礼された技が黒髪の死角を突く、しかし、黒髪は体を大きくひねることで回避をする。

 足のもつれた黒髪の胸に強烈な蹴りが見舞われ、彼は宙に舞った。


「うおっ!?」

彼が地面につくと同時に呼吸を整え、次の斬り合いに構えるが、

「今日はここまでだな」

試合が続行されることはなかった。





「治癒術は必要ないです!」

大きな声で灰髪に伝える黒髪は汗にまみれた笑顔であった。

「そのようだな」

灰髪は薄い苦笑いでそれに答え微笑み、続ける。

「剣術の型は十分習得しているな..だが回避に無駄がある、それに防御を覚えなくては今日のような結果に終わるぞ」


厳しい眼に身体を縮こませた黒髪は少し口をとがらせる。

「だって、相手を倒せばそれで終わりだろ?俺には必要ないんじゃ...]

これでも彼は精一杯言葉に気を付けているが、何せ彼は大貴族の箱入り息子である。敬語を使うのは母親と師匠だけであり、不思議と座学も無い。


そんな言葉づかいに腹を立てる事もなく真剣な眼差しで黒髪をさとす。

「そうか、なら明日の試合は他の相手を用意する。それで勝てる相手かどうか試してみるといいだろう」


「他の相手?師匠の部下なら相手にならないよ!せっかく久しぶりの試合だったのにまだやりたいよ!」

黒髪と灰髪の修行は数か月に毎に数回行われている。今回のように一回の試合のみで終わることは今までなかった。


「部下な..まぁ違いはあるまいが、良い経験にもなる。それに明日はお前の父上との対談もある。我慢しろ」

一つ息を置き、続ける。

「それに、お前より弱い相手だが、お前では勝てないだろう」


「えっ!?どういう事ですか!?なんで俺より弱いのに俺が勝てないんですか!?」


「闘ってみたら分かるだろう。それに先ほど言ったと通りに対談がある。グラン帝国最大の貴族であるウィリアム家当主との対談だ、恐らくグレンジャー帝も途中で臨まれるはずだ。ノアよ、分かるだろう?」


不服な顔ではあるが、明日の試合で勝てば師匠を驚かせることだできるのではないか?と考え付いたノアは元気な声で返事をする。

「はい!それじゃあ、明日の対談頑張ってください!イライジャ師匠!」

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