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戦場の寝室
空は清々しく晴れていた日に、小さな奇跡が起きた。
十分に明るい寝室は上品な装飾がなされており綺麗なものだが、その場にいる人の心は対照的なものだった。難産だと覚悟をしていたから耐えられたのだろうか。老齢の助産師は神経を研ぎ澄ませ、見守る父親は無力を悔やみ、祈る母親は鈍痛に意識を持っていかれぬように..
ふと、激しい痛みの波の中に温かさを感じた。夫が手を握っているのだと気づく。
光が見えた気がした。それだけで十分だと思った。
生まれた子は両親に抱かれることもなく、年を感じさせない足取りの助産師が部屋から連れ出した。
部屋に残った夫婦は確かに疲れ切っていたが、同じ笑顔であった。