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夢鏡〜YUMEKAGAMI〜  作者: 夢☆来渡
第一章【壱夢】
6/27

#6

 

 裕也はさほど動揺しなかった。空中に浮いたカラダとベッド、充分異常事態なのだが、少年のとった行動といえば、軽く伸びをした後……ぽかりと大きなあくびをひとつ。

 そして一言、

「どうやって降りようかなぁ?」

 ……

 なんとも悠長である。

 ベッドから下を見渡す、静かに寝息を立てている母の姿。

 に、向かって声を投げようとした……その時、

「せっかく……お休みになっていらっしゃるのを……起こすのも、どうかと思いますよ」

 途切れ途切れに微かな声が、どこからか投げられた。少年に向かって。

 少年はひゃっと驚いてすぐ部屋を見回す。

 驚き開いた口をきゅっと結び、<誰か>に悟られないように口元を手で隠しながら……


 ……

 ……誰も、居ない。



 不思議に思う彼の背中で、目覚まし時計が宙を流れていた。

 それはコツンと少年の頭を叩く。

 裕也は振り仰ぐと共に振り向き、それを手に取る。普段は枕元のサイドテーブルに置かれている物だ。赤いプラスチックの外身に覆われ、人気の漫画が文字盤に描かれている。

 少年は何気なくその文字盤を見て目を丸くした。

 白地に緑の蛍光文字。十二の数字と、

 見慣れた秒針達、


 ……に、追われた……


「あの、ちょっとすいません、この針を……止めていただけませんか??」


 ……兎が一羽。


 明らかにいつもより速いスピードで、くるくると三本の針がめまぐるしく回転している中、

 小さな白兎が黒いタキシードを着て、

 トコトコと針に追われるように走って居た。

 時には短針を飛び越し、時には秒針の下を潜って。

「あのっ、ちょっと、聞いてっ、ますか?」

 器用に避けながらこちらに話かけて来る。どうやら先程の声の主に間違いないようだ。


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