5/27
#5
裕也は目が覚めた。
暗い病室。手近に時間を知る術は見当たらなかったが真夜中なのは間違いない。
窓の外は暗く、部屋の中を月明かりだけが照らしている。
薄暗い病室のなか、静かに、小さな冷蔵庫が作動音を上げて、自らの存在を囁いて……
ふと、
その音が止む。
違和感を覚える。
包帯のない片目からの景色が、眠涙で霞む。
……揺れている……
裕也は感じた。
地震とは違う、異質な揺れだ。
周りを見回す。
景色が歪む。傍らに簡易ベッドで眠る母の姿があった。
ゆっくりと、
ベッドの真下に、
あった。
「なんだ、コレ…?」
自分のベッドの下に母の姿がある。身を乗りだし、下を見下ろす。
揺れる世界、歪む景色。寝ぼけた頭で理解できたのは、
「飛んでる…」
空中に浮かぶ自らのベッドだった。




