☆エピローグ☆
土曜日、
病室で裕也は来客を迎えていた。
クラスメイトがお見舞いに来てくれたのだ。
担任の先生が付き添いで来たが、今は廊下で母と話をしている。
「もうすぐ退院なんですって?良かったね、菊地くん」
桜井由香はいつも教室で見る時のまま、落ち着いた乙女の表情を向けた。
「うん、ありがとう。由香ちゃんが来てくれて嬉しいよ」
由香が赤面して応える。
「男子も一応誘ったのよ、でもチャイム鳴ったらみーんなすぐ帰っちゃったんだから。ホントよ」
「うん、別にいいよ。またすぐ会えるし。由香ちゃんだけで十分だよ」
さらに赤面する由香は、何か話題をそらそうと辺りを目で探る。
「あ、コレなあに?すごく綺麗な貝殻だね」
裕也は笑顔で答えた。
「友達にもらったんだ。また会えるようにって」
「いいなぁ~、どんな友達?」
「ふかふかして、すっごく図々しい……かな」
言葉を濁した裕也に、母が口早に言った。手荷物をまとめる。
「裕也、悪いんだけどお母さん一度家に帰るわ。お父さんから連絡があって、カギが無いって何だか慌ててるのよ」
「あ、うん。気をつけてね」
まさかと思ったので裕也はそれ以上は黙って見送った。
先生が母を見送るように病室から出て行く。
裕也と由香が二人、沈黙する。
裕也と由香の目が合う。
「由香ちゃんにまだ言ってないことがあるんだ」
「なあに?ヒミツの話し?」
「夢で一度言ったし、手紙にも書いたよ」
「…………」
「でもまだ現実には自分の口で言ってないから、ちゃんと言っておこうと思って……」
病室で再び交わされた約束が、正夢になった事を白兎が知るのは、また別の夢物語。
夢鏡・完
ありがとうございました。
とりあえず、初投稿の完結です。
また会いましょう。
夢の中で。