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夢鏡〜YUMEKAGAMI〜  作者: 夢☆来渡
終章【夢鏡】
26/27

#26

 柔らかな光と共に、鏡に写る裕也の姿が変容していく。

 背が高く伸び、肩幅も広がって顔立ちも締まり、成人した若者へと……

「未来とは浅はかだな」

 ミカガミの姫が呟いた。

「常に移り変わり、心の有りようで幾らでも姿は変わる。気休めになれば良いがな……」

「これが未来の……僕」

 裕也は未来を見上げた。

 鏡の前の裕也は包帯に巻かれた少年だが、鏡の奥の【裕也】は包帯などなく、青いシャツにオレンジ色のネクタイを締めている。スラリと伸びた脚は紺色のスラックスを履いて、ビジネスマンなのか成人式なのかは不明だが清潔感に溢れている。

 裕也は青年へと変貌した姿を見て押し黙る。

 感嘆もなく、

 涙もなく、

 笑みもなく、


「……知らなくてもいい事を知る羽目にもなる。それは苦痛ではないのか」

 サリィの言葉に白兎が応える。

「きっとユウヤには分かっていたのでしょう」

 半分は期待していた。

 半分はあきらめていた。

 それがどちらであろうとも、裕也は知りたかった。

 サリィが裕也に向き直る。

「お前が望むならば、夢防人を使ってこの夢を破壊し、夢の記憶を消す事も出来る。それから、もう一つ教えてやろう」

 サリィの目には冷徹と好奇心が含まれていた。

「夢世界では人間の力が大きく影響を与える。お前が強く願えば望むカタチに、全てその姿を変えるだろう」


 星は姿を変えた。


「現実世界が本当の世界ならば、夢世界は偽りの世界だ。現実世界においての鏡は真逆をうつすいわば偽りの鏡だろう。だが夢世界において夢鏡がうつすのは、現実世界の真実だ」


 ホントウノ世界ノウソハ ウソ


「お前が望むならば、鏡の中の未来は、お前が望む姿になるだろう」


 ウソノ世界ノウソハ ホントウ


「人間は正夢(まさゆめ)と呼ぶのだろう。夢で見た事が現実に起きる」


 星は姿を変えた。


「願うならば今だぞ」


【裕也】も姿を変えるだろう。


 裕也は、

 再び未来を見上げた。

 そして未来に告げた。


「どんな姿をしていてもそれが僕だ」


 お母さん、ありがとう。


「お母さんは僕を愛してくれている」


 恋人に、ありがとう。


「由香ちゃんはどんな姿をしていてもかまわないって言ってくれた」


 だから、


「だから僕はこのままでいい」


 これが自分だ。


「これが僕だ」


 鏡の中の姿が変わる。

 そこにはそのままの少年が居た。


 サリィはため息をつくと、残念そうな笑みを浮かべる。

「せっかく来ておいてつまらん奴だな。前に来た小娘なら、喜んで色々したところだぞ。なぁ、クレイ。その姿には慣れたようだな」

「獅子王には会い辛くなりましたがね」

「アイツに会えばまた戦争だ。会わん方が平和で良い」

 サリィとクレイバーは裕也には解らないやり取りを終えると笑みを交わした。

「さて、帰りましょうかミスター」

 白兎が少年にフカフカした手を差し出した。

 サリィが裕也に言う。

「何も無しで帰すのは心苦しい。何か欲しいものは無いか?無いなら私が勝手に選ぶぞ」

 裕也は首を縦には振らなかったが、少し考えて、ある物を言った。

 ミカガミの姫も白兎も、予想外の物だったらしく一瞬目を丸くしたが、笑顔を見せて頷いた。


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