表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢鏡〜YUMEKAGAMI〜  作者: 夢☆来渡
第一章【壱夢】
14/27

#14

 

「お父さん何処に行っちゃったんだろう」

 裕也の問いにわずかな不安が含まれる。

「働いてらっしゃる大人は会社で缶詰めか、鳥かごに飼われているのがほとんどです。何故かみなさん狭い場所がお好きのようで。不思議ですねぇ」

 白兎が肩と腕に三毛猫を2匹乗せながら言った。缶詰めや鳥かごの意味はよく分からなかったが、その落ち着きのある言葉が裕也の不安を少しやわらげる。

「そう言えばお母さんは何処だろう?」

「さて、他のお部屋を覗いてみましょうか」

 言うとクレイバーはいそいそとリビングを出て行った。慌てて後を追う裕也。

 特に広いということもないので、リビングを出たすぐの廊下で、白兎の尻尾を捕まえた。

 白くて丸いフカフカを掴むと、クレイバーは一瞬眉を上げて振り返る。

「こちらで宜しいのですかね」

 廊下に面した一室の、引戸の前でノック体勢をしつつ尋ねる。住人の許可を得るのはいいが、どうも遠慮は見当たらない。

 裕也がうなずきを返す。

「お母さんとお父さんが寝てる部屋だよ」

「では開けます」

 トントン、ガラリと今度は譲る様子もなく開け放つ白兎。ノックは型式的な物だとこの時理解した。

 入口に立つクレイバーの脇から裕也が顔を出す。部屋を覗き込む裕也の眼前を、有るはずのない水槽が邪魔をした。水族館の展示のような、水の壁だ。

「海の中みたいだ」

 呟く。

 水壁は部屋の扉に沿って垂直に満ち、透明感のあるゆらぎを持って部屋を覆い尽くす。ガラス板があるわけでもなく、水壁は重力を無視して部屋を満たしていた。

 水槽の中、透明感を見渡すと、畳とタンス、和室に敷かれた布団が二つ。水の浮力を無視して、並んでいるのが見える。そしてその中央、

「お母さん、……泣いてるの?」

 部屋の真ん中でポツリと座り込む背中に、裕也は問いかけた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ