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9/10

The man who has no imagination has no wings.

今回は予定通りバトル!

感想はwebで!(当たり前だろ

当社比で前回の2.5倍の文字数ですが、面白さが何倍かはお確かめくださいm(_ _)m

頭部、それも目を狙った貫手を、咄嗟に左半身を後方へ引き、その動きを利用する形で右掌底を叩き込む。

かなり上出来なコンパクトな振りとタイミングで、小気味良い音が響くが、硬質な感触と衝動が手応えとして返ってきた。

小一時間ほど続く組み手にも似た格闘で、数少ないヒットも効果無しの状況に苛立ちが募っていた。


「一体なんなんだよっ?!」

「・・・」


思わず叫ぶが、相手は答えない。

軍服の金髪美女に突如襲われる。

文字にすると過激でアレな雰囲気が漂うが、勿論生命的な危機の意味合いでだ。

襲撃場所はこの時間、人通りが特に少ない校舎裏。

いつものごとく、いつものように自主練を始めたところ、相談も前置きも予告も無しに攻撃された。

まさかの学園内で部外者に襲われるとは、流石に予想はしてなかった。腰に下げたオートマチックのハンドガンを抜かないところを見ると、本気で命を取られる事はないの無いのだろうが、それならそれで番宣くらいは欲しいと思うのは、力無き一般市民として甘いのだろうか?

とにもかくにも当分は誰も来ないのは、ここ数日の自主練で確認済み。掌底を払われながらのカウンターで飛んでくる肘打ちを辛うじて防ぎつつ、顔をしかめる。

タイミングが加速度的にシビアになってきていた。


シュシュッ


ワンツーのパンチをギリギリで屈んでかわす。

スニーカーのソールが土や石を噛んで悲鳴を上げるが、構わず前進する。がら空きの腹部目掛けて、足をさらに前へと踏み込むが、


ビシッ


「ぎぃっ」


しかしローキックへのコンビネーションは読めず、ふくらはぎに激痛が走る。

急所を狙う鋭い攻撃を辛うじて凌いでいたが、集中力にも限度がある。痛みと疲労で足をもつれさせ、バランスを崩し焦る。

そこへ頭上に嫌な気配を感じるものの、回避には間に合わない。


「アーロン!」

「おいさー」


掛け声と同時に頭上で高熱が発生し、衝突音と恐らく硬質ゴムが溶けたであろう音がする。ゴムの融点はおよそ150~300℃程度。急速に圧縮された空気はその体積の大きさに反比例して高温になる、 ボイル・シャルルの法則 断熱変化だ。 400℃以上の熱源となる空気の塊を用意すれば楽に溶解できる、それだけの話。圧縮という異能を活用するのに、その場にある何かをもとに作戦を組み立てるより普遍的に存在する物を活用を考えた結果であった。

訓練の賜物か、ギリギリのところで踏み抜くのを回避して距離をとる。滴るゴムがまるで飴細工のように宙を舞う。

何が起こったのか計りかねた様子で、腰のハンドガンへ手を伸ばすー


「いいのか?それを抜けば、あんたの負けだ」


束の間の逡巡の後、素早く右手がしなりながら狙いをつける。流れるような見事な動作。そして引き金が絞られる直前、


ゴウォッ


空気が空気を飲み込むような音と強烈な風が軍服美女の背後から起こった。今度は逆に崩れた体勢の相手に間合いを縮め、腹部へ突き出された拳をかわされたと感じた瞬間、前方へ飛び込むように身を投げ出し一回転。

目視することもなく、下段から切り上げた圧縮高熱空気ーヒートソードの剣先を喉元へと突きつけた。

相手も反転し、ハンドガンを構え俺の眉間から数㎝の所で銃口を停止させている。


「・・・あんたの負けだよ」

「・・・?」


言われている意味が解らないのだろう。

何をふざけた事を、といった表情の軍服美女。

相当勝ち気な性格のようである。


「あんたの銃をよく見てみな」


彼女が持つのはオートマチックのハンドガン、グロックシリーズ。オーストリアのガストン・グロックにより考案と開発をされ、フレーム全体にプラスチックを使っており、一部にプラスチックを用いたH&Kに対し、商業的にも成功を納めた名銃シリーズのグロック20である。そのスライドが銃口からリアサイトを黒い紐状の物がぐるりと巻き付けられていた。


「なっ?!」


流石に驚いたのか、初めて声を発する女を見てニヤリと笑う。細かい仕組みの説明は省くが、オートマチックのハンドガンはスライドが後退して、弾丸を発射することが可能なのだ。つまり、


「その相棒は、木偶の坊って訳さ」

「舐められたものだな」

「あぁ、そうかもな。あんたみたいな美人は嫌いじゃないんで忠告しとくが、ナイフも止めといた方がいいぜ?」


そろそろ体力も限界なのだ。正直、理由もメリットもない殴り合いは趣味じゃぁない。


「ふざけるなっ!」


静かに言い放ち、彼女の右手からストンとグロック20が落下する。瞬く間に両手と喉元が黒い物で覆われ、同時に空いた右手がヒートソードの鋒を抑えるべく動く。一方、左手は腰のベルトに固定してある鞘からコンバットナイフを抜く!


「サミュエル!」

「ワシの出番じゃー!!」


ドンッ!!!


解放されたヒートソードの空気が一気にその体積を増やし、彼女の全身を空気のハンマーが強打する。

勢いよく弾き飛ばされて体勢が不安定なところに間合いを詰める。


「山登りの気分でも味わってな!」


手加減されたからと言って、手加減してやるつもりも義理もない。目の前で青紫色になり、チアノーゼの症状を呈している軍服金髪美女の腹部を蹴り飛ばし、やっとの

決着に荒く息を吐き出した。


「兄者、ワシらの働きはいかがじゃったかのー?」


ポージングの一つ、モスト・マスキュラーをやりながら全くもって然り気無くないアピールをしているのは、サミュエルだ。


「助かったよ。なかなか良いタイミングだった」


軍服美女が吹き飛んだ先に、低圧低温の酸欠エリアを構築させたのだが、吹き飛ぶ距離も分からない上に、異能の有効射程は3m。酸欠エリアを通過するだけでは決め手に欠けるため、タイミングを合わせるのはかなり難しかったのだが、サミュエルは見事にやってのけていた。


「兄じゃ~、オイラも頑張ったッスヨ?!」


フロント・ラットスプレッドを極めながら、寂しそうにアーロンが呟く。さながらネズミを彷彿とさせるが、ラットスプレッドのラットは背中の筋肉と言う意味なので悪しからず。


「アーロンも良い仕事してくれたよ」

「アーロンも、と言われるとついでみたいで嫌ッスね・・・」


若干面倒臭いやつだ。ブーメラン一丁のムキマッチョにいじけられても、俺の乙女回路は活動しない。

とは言え、グロックをコンバットブーツの溶けたゴムで固定するという匠の仕事を果たしてくれたのは事実。


「悪かった悪かった。アーロンの働きが無ければジリ貧だったよ」

「分かってくれれば良いッス!」


白すぎる歯で、無用なほどに眩しいサムズアップをするアーロンに思わず苦笑いしてしまう。

今回、コイツらが居なければ危なかった。

同時に構築できるのは3つが限界の俺の異能だが、二人ーそれとも二匹というのかまだ決めかねているがーによれば、特別なんだとか。本来一つが限界なのだか、俺の場合この錬金精霊のサポートのお蔭で手数としては有利と言える。

無論、特殊な力を使う以上は代償というか反動があるのだが・・・今はその話は良いだろう。


「とりあえず・・・」


ブーツを脱がせて、靴紐を外す。

更に、


カチャカチャ


「あの・・・兄者・・・?」


彼女のベルトを緩めてズボンのボタンを外し、引き下ろす。


「アーロン、兄者も思春期真っ盛りの男子。健全な欲望を抑えきれないぶべしっ?!」


したり顔で碌でもない事を吹き込むサミュエルの顔面に、回収しておいたグロックが直撃する。その間に向こう脛辺りでベルトを締め直し、うつ伏せになるよう転がす。


「目を覚まして早々、暴れられても困るから拘束してんだよ」


背中の方へ腕を回し、親指同士を靴紐で一括りに縛り上げた。うつ伏せにしたときに、引き締まった尻と下着が見えたが、不可抗力だ。断じて黒い下着と白い尻のコントラストを目に焼き付けたかった訳ではない。

大事なことだから繰り返して言うが、疚しい気持ちは無かった。


「だが何事にも役得というのはあると思うんだよ」


緩みそうになる鼻の下を押さえながら振り返ると、呆れ果てたアーロンの視線とぶつかった。

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