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壊れた扉

今週も無事、間に合いました。

お待たせしました!!

・・・お待たせしてない!?

征暦2514年9月15日 07:29PM

九州ステート 福岡カウンティ 〈ロレーム・イプサム・ノイン〉九州中央病院 一室


柊からの連絡を受け、救急スタッフを派遣した外科医 皇は、ほくそ笑んでいた。

総合病院の一角、薄暗い一室で携帯端末の画面に映し出されている動画。

それは学園に張り巡らされた、学園の教師達すらも知らない監視カメラの映像だった。


「馬鹿どもにも困ったものだが、発顕させてくれたことには感謝するか」


眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げつつ、思案する。左手にはホログラムのカルテが浮かび上がり、恭一のバイタルデータが現在進行形で記録されている。

備考欄に特記事項として、《 Apostolus 13 》と記されている。


「ふむ・・・」


監視カメラの動画再生を止め、秘匿回線へ接続するアプリを立ち上げた。

コール音が5回を越えたところで相手が出た。


「私だ」

「オレオレ」

「毎回そのネタなのは、祖父母の遺言か何かかね?」

「いや、我が家の家訓だな」

「そうか、で用件だが」

「そこは、天涯孤独の独り身だろ?!とかツッコむところじゃね?」

「プライベートには立ち入らないのが、我が家の家訓でね」

「・・・で、用件はなんだよ?」


その声に答える前に、先程の動画と3人の生徒のデータを転送する。


「そいつらが余計な口をきけないように、教育しとけ。糞親も同様だ。まぁ、そっちは事情説明だけで黙るだろうが。」

「ふんっ、手間が省けたって面してるくせに、悪どいやっちゃなぁ」

「ところで、 《クリフォス》はどうなったんだ?」

「足取りが掴めん」


皇があからさまに溜め息をつく。


「 《ケムダー》の情報は? 」

「クロウと交戦後、半死半生でドロンだな」

「で?」

「・・・いやぁ、情報はありませーん」

「君は何か?仕事の選り好みができる立場なのかね?」


相手に見えないであろうが、忌々しげにこめかみを揉む。皇が相当イラついた時の癖であった。


「あれらがどれだけ貴重なサンプルになるか、たっぷり説明をしてやろうか?」

「あぁっと、えーと・・・こいつらの対応はスピードが命だろ?すぐ取り掛かるよ!じゃまた!!」


慌ただしく通話を切る相手に苦笑いを浮かべた目線の先には、新たなカルテが展開されている。

いずれも高校生の男女。

共通するのは、ここ一年の間に心臓手術を受けていることと、《 Apostolus 》の文字。其々のカルテには続けて1~12の数字が書かれている。


「アルファにしてオメガ、13番目にして0番目。始まりと同時に終わりを司る無限の始まりが目覚めた・・・いよいよですよ、先生・・・」


ぎしっ、と椅子を軋ませて、背中を預ける。どこか遠くを見つめる皇の瞳に、忙しなく変化するバイタルデータは意味をなしていなかった。



征暦2514年9月15日 06:16PM

九州ステート 福岡カウンティ

九州 州立 ロレーム学園 フクオカ・シティ・キャンパス内 男子寮《黒曜》自室


15畳程の1LDK。

フローリングも真新しく、部屋の片隅に僅かばかりの荷物が置かれた殺風景な部屋が、恭一に割り当てられた自室であった。

自炊も出来るよう、なかなかに立派な3口コンロと大きめのシンク。そして単身用ながら、冷凍庫もついた冷蔵庫が備え付けられている。無論、大食堂で食べる分には費用負担は無いので、趣味の世界なのだろうが。


「それで、結局オマイらは何なんだよ?」


幾度目かの問いを溜め息と疲労ともども吐き出す。

あれから主治医の皇に電話をかけ、澤村達の処置を相談したところ、自分の患者に手を出された怒りなのか、冷静沈着を絵に描いたような皇が色んな意味で「任せたまえ」と言った瞬間、核ミサイルの発射ボタンを押した気分になった。

とりあえず落ち着こうと、神埼に連れられる様に恭一の自室へ戻り、ベッドへ突っ伏したい欲求にかられたものの、あの奇妙なアーロンとサミュエルを呼び出したのだ。

最初はなかなか出てこないかと思っていたので、あっさり呼び出せたので拍子抜けしたのだが・・・


「ワシはぁ~~アーロンッ!フンヌッ!」

「オイラはぁぁ~~サミュエルっス!!」


話が通じないことへの苦悩の呻き声の中、アーロンとサミュエルと名乗る奇妙な小人のポージングを替える時だけ、

「フンッ」とか「ハッ」といった掛け声だけが聞こえていた。


「えーと、質問を変えよう。うん、俺の聞き方が悪かった。オマイら結局何なんだ?」


話を進めるとか、空気を読むという行為が期待できないと感じた俺は、仕方なく沈黙を破った。


「某たちはぁ~~~フンッ」

「恭一兄者に付き従う~ハッ!!」

「精霊でござ~~~フンヌッ!!!」

「るぅぅ~~~~ッス!!!ハァッッ!!!!!」

「「「・・・・・・」」」


「これはアレかい?精霊という存在に対する暴言にツッコむべきなのか、それともセリフの合間にちょいちょい挟んでくるポージングとその掛け声に存在意義を問いただすべきか、そもそも「ござる」を二分割したことへの説明を求めるべきなのか・・・」


ぶつぶつと独り言なのか発言なのか定かではない神埼のセリフが聞こえるが、


「こんな精霊、チェンジで」

「そこっ?!ねぇ、精霊がいるいないの話どころか、気に入るか気に入らないかなの?柊くん!!」


絶叫にも似た神埼の声には、暑苦しいポージングの掛け声二重奏が答えるばかりであった。


次回は少し説明回になるかも?

早く異能バトル書きたい(;´д`)

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