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デュアル・デュエル

おひさしぶりです。

なんとかかんとか、週1ペースはキープ(-_-;)

ようやく少しのバトルモドキと

あやつらを書けました。

それではよろしく!

痛む身体から意識を反らしつつ、理不尽なこの一時をやり過ごそうとしている俺。

その視線の先で、神埼が何か叫んでいた。

この学園で出来た友人。

彼に言われてやって来た場所で、突然この状況に落とされたわけだが、自分の迂闊さを呪いこそすれ、神埼自身への怒りはさほど沸いていなかった。

ロレ-ム学園という特殊性から孤児である自分が浮いた存在になることは分かっていたことで、イジメの対象となることを想像はしたが、余りにもすんなり出来た友人の存在が、勝手に警戒心を解いて手を打ち損ねさせただけなのだから。


「こんな話は聞いてない!」


激しく澤村に詰め寄る神埼の声が聞こえた。


(立ち去れ、立ち去ってくれ。頼む・・・それが君にとって一番だ、神埼)


短い付き合いではあるが、神埼の性格を考えれば、裏切るとか嵌めるといった事をするより何らかの圧力を掛けられ、不利益を被る力関係が澤村と神埼の間に成り立つと推測すろ方が間違いないだろう。

そしてその前提が正しいとすれば、神埼の行動は悪手であった。


「うるせぇよ。お前にゃもう用はないんだ、失せろ!」

「こんな事させるために柊を連れてきたんじゃないよ。しかもアイツは心臓の手術を受けて、系列の病院でリハビリやら検査をしてるんだ、バレたら君らの親父さんの方が不味い事になるんじゃないのかっ?!」

「・・・っ!!」

「お前らがぁ~誰にも言わなきゃ~わかんねぇだろぉ~?」

「ごふっ・・・」


表情が変わった澤村に対して、更に言い募ろうとした神埼に、今しがたまで俺に蹴りを入れていた宇都井が回し蹴りを入れていた。

膝から崩れ落ちる神埼。


「まぁ、一人も二人もかわんねーか」


そう呟きながら富樫が、交代と言いながら宇都井とタッチする。


「澤村君たちは、何でこんなことやってるんだ?」


けほけほっ、と咳き込みながら、俺は身体を起こそうと両手をつく。


「シュートッ!」


質問への答えの代わりに地面から跳ね上がる蹴りが俺の腹部へ吸い込まれ、掬い上げられるように叩き込まれた衝撃が、咄嗟に引き締めた腹筋を突き抜けて行く。


「か・・・はっ・・・」


空気を求めて、口が喘ぐ。


「サンドバッグを叩くのに、小難しい理由なんざねーよ」


余りの馬鹿らしさに失笑を禁じ得なくなってくる。研究の臨床を兼ねた心臓手術のリハビリと検査の為に、わざわざ転入させた患者の体が著しく損なわれて、黙っていれば事なきを得るという脊椎反射的な思考。

それと同時に、そんな奴らに良いようにされる不快感が吐き気を伴ってくる気がした。


「・・・やめろ」


声のする方を見れば、神埼が何かを投げた格好で佇んでいる。

頭を押さえる富樫の足元に、握り拳より少し小さい石が落ちていた。


「テメェェェッ!」


傷つけることに慣れていても、傷つくことに慣れていない人間は多い。怪我をすることが減り、またその危険性を排除された環境が当たり前の今日、その慣れない現実に直面した時、人は簡単に激昂する。それが正しく今の富樫だった。


バキッ


殴り飛ばされる神埼。

自分だけではなく、友と心に決めた少年さえも巻き込み、守れない無力感。


「くそっ・・・」


せめて、目を反らすことなく自分の無力故の結末を見つめる。


ドンッ


背中からの衝撃と重量に這いつくばる。

見上げれば、澤村と目が合う。


「お前が悪いんだよ」


俺が何をした?


「お前が分不相応に手術なんて受けるからこうなる」


俺が希望した訳じゃない。むしろ体の良い実験体だろ。


「受けた恩は返せよ?犬でも知ってるぜ。まぁお前に出来るのは、俺らのストレス解消位だろうから、付き合ってやるよ」


親切の押し売りにもなっちゃいねぇ。

大体、お前らに手術をして貰ったわけでも、金を出してもらったわけでもないんだ。


「一生、専属サンドバッグだ。光栄だろ?アイツもしっかり使ってやるから感謝しろよ」


(あぁ)


思わず納得する。

右手が何かを求めて彷徨う中、冷静な思考が意識を支配する。だがその周りを怒りの炎が駆け巡るかのような熱さを感じた。


(これがキレるというヤツか)


と。


ドクンッ

心臓が熱く、強く拍動する。

全身の細胞の隅々にエネルギーを送り出すかのように。

( アスクレピオスの・・・ )

地面に行き着いた右手に硬いものを感じ、握りこむ。

そしてそのまま背中の澤村の足へ振りかぶる。


ザクッ


肉を浅く切り裂く感覚と、遅れてやってきた澤村の悲鳴。

横へ転がりながら距離をとるが、駆けつけた富樫の蹴りを喰らい後方へ吹き飛ぶ。


「けはっ・・・はぁはぁ」


背中を木の幹で強打しつつも、目線を向ける。その先に足を抱え、血を流す澤村と剣呑な様子の富樫、立ち上がった宇都井がいた。


「テメェ、なにしてんだー?」

「人間はサンドバッグじゃないって・・・はぁはぁ、教えてやったんだよ鳥頭」

「あぁん?」

「はぁはぁ・・・人が黙ってれば好き勝手しやがって、後先考えないバカは困るわ」


(武器になりそうなものが無い。さっき使ったのは何処か飛んでったか?)


時間を会話で稼ぎつつも、好転させる材料は見当たらない。せめてバットでもあれば、とこの状況で益体も無いことを考える。


(・・・?)


背中の幹に当てていた右手に違和感を感じ、意識を向けた途端、富樫が仕掛けてくる。同時に宇都井も右手から駆けてきた。

左からのパンチと右からのローキックのコンビネーションなのは、狙い通りか偶然か。

背後は木の幹。片方を避ければ、もう片方の餌食であり、避けるには背後にスペースが無かった。


(武器が欲しい!)


イメージしたのは、圧縮バット。

背後で木が軋み、背中への重みが増した。

何が起こったか判断する間もなく、右手に触れたモノを逆手のまま掴みローキックのコースへ突き立てる。

結果を確認せずに、左前方へ倒れ込むように半円を描きながら富樫の脇をすり抜けた。そのまま距離をとる。


「だっ、はぁはぁはぁ・・・」


荒い息を吐く。

視界の左に澤村。右後方に左足を抑えて呻く宇都井。そして、


「がぁぁ、たっ、たすけて・・・」


木の下敷きになった富樫がいた。

その木の幹は根元から1メートル程が抉れており、倒れた現状にね原因はソレだろうが、そうなった原因は検討がつかない。


「・・・澤村、まだやるのかよ・・・?」


なんとか息を整え、足から血を流す澤村に問いかける。


「くそっ、刃物を使うなんざ卑怯だぞ」


睨み上げながら、澤村が言うが、


「三人がかりでフクロにしといて、どの口が言うんだか。」

「俺らに手ぇ出して・・・」

「無事には済まないってか?そもそも無事に済ますつもりも無かったくせに、よく言うよ」

「まったくじゃぁのぉぅ、兄貴っっ!」

「だがこの程度のパンピーは、いくら来ても返り討ちッス、アニキィ~!」

「「「・・・」」」


会話に乱入してくる野太くむさ苦しい声。

俺の左右の腕から生えてる?推定身長30cm程度のボディビルダー二人。

ブーメラン一丁で其々ポージングを決めている。


「・・・えーと、オマイら誰?」


思わず聞いたこの質問が間違っていたのか、幻覚だと無視すべきだったのかは後でも判断しかねたが、


「ワシがアーロンじゃぁ!」

「オイラはサミュエルッス!!」


自称精霊のアーロンとサミュエルとの出逢いであった。

知る人ぞ知る、アヤツらです。

やっとタイトルに追いついた?!

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