ル-ズな幻の世界で
おひさしぶりです。
若干の残酷シ-ンが含まれます。
ご注意ください
人にはそれぞれ分というものがあると、僕は思うが、あなたはいかがだろうか?
皆さん、お元気でしょうか?
いきなりなんだ?って?
僕は今、絶賛地面に這いつくばっています。
別にそういう趣味でも、地面の冷たさを頬で感じずにいられない性癖でもありません。そもそも、誰かの靴裏を片頬に乗せる習慣もないですね。
あっ、蟻がいるなぁ。噛まれないといいけど。
「聞いているのかぁ?柊くんよぉ~」
なんでこう言う場合、虐げる奴らは語尾をやてら伸ばしたがるんだろうか。
うぉっ、ソールが強く押し込まれる。
急に顔から靴が退けられ、脇腹に衝撃と激痛がやって来る。
「ごふっ!」
思わず呻く。
「ふざけやがって、シカトしてんじゃねーぞっ!!」
まぁ痛いのも嫌なので、とりあえず、
「何をそんなに怒ってんの?」
と素朴な疑問を投げ掛ける。
「あ゛っ?」
いや、キレられてもさぁ。
「足蹴にされてる俺がイラつくなら分かるんだけど、澤村君たちがイラついてる理由がっっ!?」
「うるせぇ、だまれ!」
また脇腹を蹴られる。今度は咄嗟に腹筋締めたから、内臓までダメージはこなかった。これも最近何故かのマイブーム、筋トレのお陰だ。
しかし黙ってても、しゃべっても怒られるってかなり理不尽じゃね?俺が何をしたっつーのだ。しかも理由も分からず、3人にドつかれるって。
これまで親が居ないってだけで、イジメにあってきた。小学校、中学と。理由は様々で、親はいるが暴力を振るわれ、その吐け口を求める奴ら、親に捨てられその悲しみと周りに知られる恐怖を誤魔化すために、俺を攻撃することで目をそらす奴ら。突き詰めるとそいつらも、某かの不安や恐怖を忘れる手段として、弱者を求めていた。勿論、だからと言ってイジメが許される訳ではないのだが。親に甘える幸せを俺は知らない。そして親に裏切られた痛みを俺は知らない。
他の孤児はしらないが、俺には親の記憶がないから、恨む理由を持てないだけなのかもしれない。だからそれを理由に誰かに牙を剥くことが俺にはできない。
ガッガッガッ!
立て続けに訪れる衝撃と痛みに、身体を丸めて急所を庇う。
やるせない思いや憤りをこの身に受けるなら、まだ我慢も出来るが、コイツらにそんな物は無いと分かった。分かってしまった。
彼の名は澤村啓吾。
〈ロレーム・イプサム・ノイン〉系列の澤村重工の社長子息である。
メディアが主力の〈ロレーム・イプサム・ノイン〉だが、その多角的経営上、また州郡制移行から各州の防衛は統治企業に任されており、この九州も例に漏れない。その中心となるのが澤村重工だ。
そして取り巻きの富樫健次と宇都井隼人も澤村重工の重役の息子であった。
彼らは倦怠感に包まれた日々を送っていた。
〈ロレーム・イプサム・ノイン〉の系列会社重役の息子とは言え、中学まで利かせていた親の威光も、このフクオカ・シティのロレ-ム学園においてはさして大したものでは無くなっていたからである。見回せば同じ学園でも同列かそれ以上の系列会社の子息令嬢はいくらでも居り、逆に肩身を狭くしていなければならない現状に、三人はストレスを抱えていた。
そんな矢先、格好のストレスの捌け口を見つける。
このロレ-ム学園に転入してきた孤児-柊 恭一である。
孤児でありながら、〈ロレーム・イプサム・ノイン〉の最先端心臓移植の恩恵を受け、この学園に 〈ロレーム・イプサム・ノイン〉の援助で転入してきたのだ。
(日頃の理不尽なストレスを発散する矛先として、受けた恩を系列会社の重役の子息である自分達に返すべきだ)
そんな理屈も屁理屈もない、身勝手すぎる理由が三人の胸中に沸き起こった。
(あとは機会を狙うだけ)
むしろ機会を作ることなど、中学までに身に付けていた。
柊の仲の良いクラスメ-ト神埼を調べれば、澤村重工の下請け会社の営業部長の息子というのはすぐに分かった。
「親に迷惑をかけたくなければ、柊を連れてこい」
ただそれだけ。
友人に売られた事実を突きつけ、気が済むまでいたぶればいい。
目的意識もなく、後先も考えない、ただの鬱積の捌け口。
孤児が一人、このロレ-ム学園で虐められようが、誰も気にしない。
肩身の狭い閉じた世界で、三人はささやかな王国を手に入れられると考えていた。
お久し振りです。
相変わらず、次回も不定期です。
今週はとくに仕事が激務で、会社のipadは壊れるわ、出ずっぱりで事務所に戻れないわ・・・
久々に体力面で詰みに近いものがありました。
来週移行は紺トロ-ルしながら書き溜めしたいところです。
引き続きよろしくお願いします。