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two dogs  作者: kotarou
3/5

ロンドンを彷徨う二匹

 少女の指笛が高らかになると、商店からなんだなんだと少年、少女達が出てきた。

少女が、コタロウを指差して、なんだかんだと叫ぶと、彼らはコタロウとジュンを

取り囲む。

「まいったなぁ」

ジュンはため息をついた。

「こうなったら、仕方が無いな・・」

「なにがっだ、よ」

飛び跳ねたジュンが、コタロウの頭を殴った。


 大きな木箱を片腕で肩に乗せた一人のシェパードの青年が、前に出てくる。身長は、コタロウとジュンの二倍はあるだろう。二人の前に、木箱をどさっと置く。土ぼこりが舞い上がる。木箱の中身は林檎だった。

 そして、何を思ったか、半そでの下から覗く筋肉を盛り上げるように、ポーズを取る。

何度かポージングを繰り返すと、太い腕を組み、コタロウを見下ろした。

「やっちまえー、オーリン!」

「やれやれー!」

「キャー、オーリン、頑張ってぇ!」

周囲からの歓声に答えるかのように、オーリンはその場で、シャドーボクシングを開始した。


 二、三分、軽いステップを踏んでシャドーを続けると、周囲から渡された手ぬぐいで、額の汗を拭い、再びポージング、そして、再び腕を組むと前髪をかき上げ、にやりと笑いながら周囲を見渡した。

ヒューヒュー、と口笛が上がった。


「ドーンさんに、似てるね・・・」

ジュンが、コタロウに囁く。ドーンというのはセントバーナードとライオンの雑種という噂を持つ犬で、怪力ドーンという呼び名を持ったサーカスの一員だった。物凄い馬鹿力で、馬との綱引きをショーでやっていた。


「ジュン、これ持ってろ」

コタロウはおもむろにシャツを脱ぐと、ジュンの頭にかける。

「まったく、ボクは知らないからね」

ジュンは何度目かのため息をつく。コタロウがやりそうな事は判っていた。


例の少女が、上半身裸になったコタロウに驚いて、小さく悲鳴をあげる。しかし、指の間から、

しっかりと、コタロウを見ていた。


コタロウは、ドーン直伝のポージングを開始する。成長途中の彼とはいえ、彼もサーカスの団員である。その鍛え上げられた、胸筋、腹筋、背筋には、一切の無駄と言う贅肉がない。

少女は肩から背中にかけての盛り上がりは、ギリシャの彫像のようだと思った。


彼の姿に周囲は唖然とした。その光景に気を良くしたコタロウは、先ほど青年が片腕で抱えていた、

自分と同じ大きさの木箱を両腕で抱えると、鼻から息を抜き、頭の上に苦も無く持ち上げた。

持ち上げるだけでなく、力を示すように、上下させる。


「ジュン、乗れよ!」

コタロウの掛け声に、ジュンはコタロウに持ち上げられ、身長の倍はあるであろう木箱の上に

飛び乗った。再び、周囲から歓声が上がる。ジュンも、コタロウの真似をしてポージング。

今度は、周囲から惜しげも無い拍手が沸きあがった。


 木箱を下ろしたコタロウに、青年はにやりっと笑みを浮かべ、木箱をから小さな林檎を三つとり、

コタロウに渡す。コタロウは、それを受け取ると、片手を差し出した。

青年も手を出し、二人は強い握手をした。

コタロウとジュンを取り囲んでいた野次馬は、終わった、終わった、解散とばかりに散らばり始める。


「って、そうじゃなーい!そうじゃないでしょ、オーリン兄ちゃん!」

「ボクもそう思うよ・・・」

「あんたが言うな!」

てへっとジュンは小さく舌を出した。この白いプードルは見かけ通りのお調子者なのだ。


 鋭いツッコミで息を荒くした少女は、箱を片付け始めたオーリンを横目に、コタロウの前に出てくる。コタロウは、シャツを着ているところだった。

「これで、勝ったと思わないで!って言うか、帽子返せ!って言うか、まだ何にも終わってなーい!

 みんな、帰ろうとしないで!」


 少女が素早く後ろを向く。

「リューイ!アレク!あんた達も、男だろ!」

こっそりと、少女から離れようとしていた彼女の連れの二人組みは、少女の睨みにびくっと背筋を

伸ばして逃げるのを辞めた。

「とにかく、まだ、終わってないの!」

「アンジェリカ、辞めようよー。オーリン兄も、辞めたんだし」

「そうだよ。リーダーが認めたなら、もう、喧嘩は駄目だよ」

「馬鹿ー!」

アンジェリカは、憤懣やる方なしと言った風情で、二人を怒鳴りつけた。

コタロウは、良くあんな細い体で、あんな大声が出せるもんだなと、感心した。


「そうそう、喧嘩反対」

三人組の会話に口を挟むジュン。

「あんたは!そっちの仲間でしょーが!あっちいけ!」

ジュンがしゅんとして、コタロウの方を見ると、彼はもう荷物を持って、歩き出そうとしていた。


その時、カン、カン、という鐘の音が聞こえた。消防員が鐘を鳴らしながら、人込みを掻き分けて

走ってきた。

「火事だー、みんな、来てくれー!」


 騒然とした人々の中、オーリンが道の真ん中で大声で叫ぶ。

「火事だ!みんな、行くぞ!」 

オーリンの掛け声と共に、オーリンと同年代の青年たちが、店という店から飛び出してくる。

そして、消防員の後ろを走っていく。


「私たちも、行くわよ!リューイ、アレク!」

「僕達が行っても、邪魔になる・・・」

「いーから、行くわよ!」

アンジェリカが走り出すと、リューイとアレクも仕方なく走り始めた。


アンジェリカは走りながらコタロウを一べつしたが、コタロウは何処吹く風という態度を変えなかった。





第三話も連続投稿。


図書館に本を返しにいかなくては。最近は、本をご返却下さいって家まで電話掛かってくるんですよねー。五月蝿いって怒鳴りつけました。相手がコン

ピューターだったので。

因みに井上夢人の パワーオフ、神永学の 心霊探偵 八雲 なんかを読みました。


 

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