どこにある?
義間市の薄汚れた神社の中で茶をすする。まるで嫌になるほどのいい天気であり、
この薄汚れた神社には似つかわしくないものだと感じた。
竹屋神社、私の親の代から継いできたこの神社は、父の事故死と母の失踪のせいで私一人になってしまった。
どうしようかと考えるがまるで答えは出ないだろう。それはそうである。
この13の頭には処理のしようがない問題だ。
「それも確かに悪くない」
まるで鳥のような生き物が木の上から告げ口した。私の中の心はどこだ。
「心などどこにもない。私は私でしかないのだから」
私の人生に、父と母と祖母と祖父は存在しないものだ。
私の人生がどこにあるか皆目見当もつかないものだが、まるでそれは当たり前のようにしゃべっていた。
曰く、私は頭がおかしくなったらしい。
鳥や虫や父の声が聞こえるようになったのは、幸い母が出て行ってしまった時であった。
父が生きている間は私に声は聞こえず、また母も上機嫌であった。
私の中の私はこんなにもくるっていなかったし、私は私のままであった。
曰く、これは私の特性であり、特別な才ではないらしい。
施設の人々が私をこう示した。乗り越えるべきものがあるものだと。それを聞けば格好がいいものだが、要は欠陥品である。
欠陥品であっても生きていられるものだ。ちちとははがいるならば、どちらもいない私にはまるで世界が終わってしまった。
だからこそ、私の中の私が暴走し、こんな妄想を垂れ流すようになってしまったといった。
言い忘れていたが、この神社は名義上私の土地ではあるものの、私の住む場所は違う場所である。
捨て子の歩ける道というのは日本では決まっているものだ。
まあ、歩ける道があるだけありがたいと思おう。
ぼろぼろの神社の中、事務所の使われなくなった水道に持ってきたお茶を捨て、蜘蛛の巣が張った電気をつける。まあつかない。それはそうである。
もう人は住んでいない場所に、電気も水も必要ない。
神社の外を歩き、鳥居の外に出る。相も変わらず外は明るく世界を照らしていた。
ともらない電球の下を歩く。
「■■ちゃん!おっはよう!」
ある女生徒が私に声をかける。そうだった、私は学校に行く途中だった。
彼女の名前は■■、私の同級生である。
「こんな早くにどうしたの?」
「学校に行くのよ。それしかないわ」
いつも通り私は彼女に返事をした。電球の下、ともらない電球がまた美しい。
彼女の見た目は私服であった。どうやら学校に彼女はいかないらしい。
「でも今日学校は休みだよ?」
そうだった、学校は休みであったか?
『本当にそうか?』
『だまされてるぞ』
カラスが二羽、私に話しかける。だます?彼女が私をだますことはない。
大丈夫だろう。
「そうだよー!早く帰ろ?みんなが待ってるよ?」
みんな?いや、みんなは誰だ。違う寮生だ。私と同じ寮生だった。
でも、なぜ靄人間に会わなければならないのだ?君の顔ももう靄人間になりかけているのに。
「私は少し歩いて帰るわ」
「じゃあ、ついていくよ!私も!」
そうだ、彼女はそういう人間だ。私のことをきにかけてくれて、私と一緒に動いてくれた。
昔から彼女はそうだった。
街を歩く、空の上に浮いた。大きな街灯は町を見回すように光り輝く。
おかしな世界観である。
『街灯があり、世界がある。これは箱庭なのでは?』
そうか、箱庭かもしれない。だが、とりあえずいつもの公園に向かおう。
『そこは同じ道だろう?どこの公園に向かっているのだ?』
それは、ここだよ。いつも言っている。
この公園は、私が子供のころの公園だ。私の子供のころ、4人と一緒に遊んでいた。
12のころだった。2人の名前は忘れてしまったが、いまでもあっているあの子がそうだ。
よく鬼ごっこをしたものだ。飽きたらベンチでゲームをする。カセットをさし、通信をするのだ。
あの子の話ではないが。一人がゲーム機を持っていなくて、こちらのゲームをのぞき込んでいたのだ。
懐かしい。何年前だったか、もう覚えていない。
『ついたぞ』
カラスが私にそう告げる。公演はあの頃のままだ、街灯に照らされた遊具がそれを思い出させる。
私は歩き、鳥居をくぐった。遊具がゆらゆらゆれている。
どうやら今日は一人もいないようだ、公園は私と彼女の二人だけだった。
『じゃあ何してあそぼっか!』
「彼女はそういった。そうだ、そういってくれた」
私はブランコに腰をつけ、ブランコをこぐ。彼女は私の背中を押してくれた。
風がゆらゆら揺れている。気持ちがいい。まるで遠く行けそうだ。
懐かしい。そうだ、この子はいつも私を押してくれたのだ。
いつもいつも私の後ろを押してくれた。ブランコに乗っているときも、
私が悲しんでいるとき、ブランコに乗って私の背中を強く押してくれた。
危うくけがをしそうになって、私は悲しみよりも怒りが上回り、彼女に怒ったんだ。
遠い昔のいい思い出だ。遠い昔に戻りたい。
遠くに行くか。どこに行こうか。学校?東京?京都?どれもいいかもしれない。
とりあえず学校に
「もう!見つけた!」
彼女が鳥居から目を見ている。どうやら私は彼女とはぐれてしまったようだ。
「帰るよ!早く!じゃないと晩御飯抜きだよ!」
まずい、それはまずい食べないと死んでしまう。
私はブランコから手を離した。きしむ音が森の中に響き渡る。
さあ、帰ろう。この世界を知りに。
小さな小さな掲示板、私の目に映ったそれはぼろぼろに砕けてちっていた。
錆びまみれになった公園で、私は手を引かれかえる。
この光景を何回も見た。見てきた。どうやら一度じゃないらしい。
私の中の私はどこだ。
それを探す前に、晩御飯を食べに帰ろう。
私は二人で階段を下りた。彼女の手は濡れているような気がした。




