3 転生したら寒波で絶望!?
「……寒い」
それが俺の最期の言葉だった。
会社の飲み会帰り。
終電を逃し、駅のホームで凍えながら思った。
「人生、マジで冷え切ってんな……」
次の瞬間、俺は倒れた。
そして――
目を覚ますと、俺は光の中にいた。
目の前には神がいた。
白髭で、やたら神々しい。
神「ようこそ。異世界へ転生させてやろう」
俺「うおお! ついに俺も! チート能力で無双してハーレムで……!」
神「うむ。ではお前の能力を授けよう」
俺「剣聖! 魔王殺し! 時止め!?」
神「――寒波だ」
俺「……は?」
神「転生したら寒波だった件」
俺「いや、気象じゃねえか!!!」
神「安心しろ。お前は“寒波”として異世界に降り立つ」
俺「降り立つな!!!」
神「ちなみに気温は−30℃だ」
俺「世界終わるぞ!!」
神「世界を冷やしてこい」
俺「使命が災害なんだよ!!!」
異世界――王都グランディア。
その日、人々は空を見上げていた。
騎士「おかしい……雲が……黒い!」
魔法使い「まさか……伝説の!」
王「来るのか……“あいつ”が!」
空が割れた。
ズゴゴゴゴゴ……
そして響く声。
『……寒い』
人々「寒波だァァァァァ!!!!」
俺「俺だァァァァァ!!!!」
街は一瞬で凍った。
噴水が氷柱になり、パン屋のバゲットが鈍器になり、
猫が完全に四角になった。
住民A「寒波が意思を持っている!?」
住民B「しかも喋ったぞ!!」
俺「転生者だよ!!!」
俺の能力は単純だった。
・存在するだけで寒い
・魔法も凍る
・ドラゴンも風邪ひく
・勇者の心も冷える
魔王軍が攻めてきた。
魔王幹部「フハハ! 人間ども、絶望しろ!」
俺「……(−40℃)」
魔王幹部「えっ…寒っ…鼻水が…」
俺「……(−60℃)」
魔王幹部「待って無理無理無理!! 魔王城帰る!!」
魔王軍、撤退。
王「すごい…! 寒波殿は英雄だ!」
俺「災害だよ!!!」
寒波には弱点があった。
それは――
温もりが恋しい
氷の巫女「あなた……孤独なのね……」
雪女姫「私と一緒なら永遠に冷たくいられる……」
氷魔導士「あなたの寒さ、研究させて♡」
俺「ヒロイン全員マイナス気温じゃねえか!!」
誰も温めてくれない。
むしろ寒波が増幅していく。
世界が終わる。
ついに神が現れた。
神「よくやったな、寒波よ」
俺「よくやってねえ!! 世界が凍ってんだよ!!」
神「これが目的だ」
俺「は?」
神「異世界とは――」
神は微笑んだ。
神「お前が死んだ現実世界の“天気予報”だ」
俺「……は?」
神「お前は転生などしていない」
俺「え?」
神「現実世界でニュースになるために存在している」
俺「……」
神「つまりお前の人生の最終形態は」
神「異世界無双ではなく、気象情報」
俺「嫌すぎる!!!」
テレビが流れている。
ニュースキャスターが言う。
「今週末、日本列島に強烈な寒波が到来します」
視聴者「また寒波かよ〜」
寒波(俺)『俺だよ!!!!』
誰も気づかない。
ただ、世界は冷える。
そして俺は思う。
「……せめて異世界でモテたかった」
完




