1.怪奇事件調査同好会(3/5)
「はぁ...」とため息をつく天ヶ瀬。
「普通に考えたらあれ、嘘ですよ」
「嘘?!」
倉橋は信じられないという顔をする。
そんな倉橋に分かりやすく説明する天ヶ瀬。
「①最初に私達が目撃した“動く影”はちょっと動くくらいでした。
②他の人の話から、目撃したという人達は興奮している様子らしいでした。
③そして皆思い込みが激しい。
さっきの人も、ちょっと興奮気味でした。大方、壁に近づいて影も近づいたのを大きくなったと思ったのでしょう」
「そんな...」
がっくりと肩を落とす倉橋に、天ヶ瀬は元気づけるように声をかける。
「そう落ち込まないでください。なにも全てが嘘ってわけじゃないです」
「へ?」
「動いたのを見たのは本当だと思います。ただ物事を大袈裟に捉えがちな人だったんですよ」
「そういうもんか...」
天ヶ瀬の言葉に少し立ち直った倉橋。
丁度下校時間の放送が流れた。
「今日はここまでにして、明日また頑張りましょう」
「せやな!」
その日は一応メモを残して帰ることにした。
翌日。
今日も目撃証言をする人はいたが期待出来なそうな証言だった。
「見た見た!追いかけられて怖かったわぁ」
「嘘ですね」
翌日。
「影が動いた思たらパッと電気が消えて、次の瞬間には影が消えとったんよ!」
「嘘です」
翌日。
「影が手招きしよってん」
「嘘」
最初の聞き込みから数日後。
目撃証言は少数ながらもそれなりにあったが、やはりどれも信憑性に欠ける。
証言に一貫性がなく“動く影”がどういうものなのかも分からない。
「目撃したのは本当だと思うんですけどね」
「やっぱり話盛っとるんか...」
なかなか進展せず次の聞き込みに行く。
次は理科室だ。
「最初は小さく影が揺れたんよ。見間違いか思てじっと観察しとったら、光の角度から考えるとちょっと影の位置がおかしいのに気づいたわ」
天ヶ瀬が倉橋と目を合わせて頷く。
どうやら本物の証言のようだ。
「おかしいって?」
「太陽の位置から考えたら窓の反対側のこの角度で壁に影が映るはず。でも私の影は斜め45度くらい横にズレて映っとった」
聞き込みを終えた2人は部室に戻り、証言を整理する。
「やっとまともな話聞けたな!」
「さっきの彼女、落ち着いて事実だけを言っていたので信憑性は高いですね」
倉橋がウキウキしながらメモを整理していると、何かに気づいたのか手が止まる。
「なぁ、天ヶ瀬。ちょっと気になることあるんやけど」
書き込まれた校舎の地図に指さす倉橋。
それを天ヶ瀬が覗き込む。
「今までの目撃証言から“動く影”が現れた場所を順番に書いてみたんやけど」
「っ!校舎をぐるぐる回ってますね」
地図には“動く影”が出た順番と矢印が書かれており、影の動きがわかりやすくなっている。
「この道順から予想すると、次は...」
二人は予想の場所に移動する。
「なぁ...俺捕まらん...?」
「大丈夫ですよ。ここほとんど使われませんので」
「にしてもやん。女子トイレなんて入りづらいに決まっとるやろ」
校舎の一番端の女子トイレ。
ほとんど使われることがなく誰も寄り付かない。
「いいからさっさと入りますよ」
天ヶ瀬に引っ張られて渋々女子トイレに入る倉橋。
犯罪者の気分だ。
中は入って左側に小さな窓があり、反対の壁に影が映る。
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