5.ご機嫌(3/3完)
「ぶほっ!」
「ダメだったかぁ」
「もう1回...!」
「いや、続きは明日にしようか」
朱雀が時計を指さす。
時刻は18時前。
最終下校時間だ。
「では、今日は解散しましょう」
下駄箱で靴に履き替えている時、天ヶ瀬も帰るところだった。
「あ、天ヶ瀬」
「......」
一瞬こちらを見はしたが、すぐに視線を逸らして帰ってしまった。
翌日。
放課後にもう一度クッキー作りに挑戦する。
「材料はもう買ってあるよ」
時間がかかることを見越して既に材料は用意されていた。
「昨日の失敗は色々な雑さにあると思います。次は丁寧に、一つずつ、確実にやっていきましょう」
「おう!」
今度は丁寧に、軽量して混ぜてのばす。
オーブンで焼いて出てきたのは――
「なんでぇ?!」
「真っ黒だねぇ」
失敗したクッキーだった。
「でも昨日よりは色が薄いですよ」
よく見ると昨日より焦げが薄い。
「この調子で繰り返し作っていきましょう」
そして数日後。
「や、やった...!」
綺麗な色のクッキーが完成していた。
「良かったですね」
「じゃあ早速朧ちゃんのところに行こうか」
クッキーを袋に包んで天ヶ瀬の元に行く。
部室を開ければ、天ヶ瀬は畳に座って窓を眺めながらお茶を啜っていた。
「天ヶ瀬!」
「......」
一瞥してまた窓に視線を戻す。
「渡したいものがあるんやけど」
「渡したいもの...?」
そう言えば天ヶ瀬はちゃんとこちらに目を向ける。
「こんなんやけど...一生懸命作ったんやで!」
倉橋の手には歪な形のクッキーが数枚入った袋。
朱雀とキリヤの手には丸焦げのクッキーが入った袋が握られている。
失敗作だ。
「......」
倉橋の手から1枚とってサクッと食べる。
「ぐっ.....げっほ、ごっほ!」
「え?!これも失敗?!すまん天ヶ瀬!!」
倉橋がクッキーを全部食べようとすると、天ヶ瀬がそれを阻止する。
「ダメです! けほっ……これ全部私のです」
倉橋の手から袋を奪うようにして抱え込み、
天ヶ瀬はそれを大事そうにする。
「……部長って」
ふっと、霧が薄くなった。
「お菓子作るの、下手くそですね」
そう言って、天ヶ瀬は小さく笑った。
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