5.ご機嫌(2/3)
「おっ、これ簡単そうやな」
「薄力粉100g、砂糖50g、無塩バター50g、卵黄1個。良いんじゃない?」
「混ぜて焼くだけなんて簡単にも程がありますね」
スマホをスクロールして感心するキリヤ。
「よっしゃ!早速買いに行くか」
「朱雀、お願いします」
「え?僕が買ってくるの?」
「仕方ないなぁ」と窓から飛んでいく朱雀を見送ってキリヤは倉橋に話かける。
「どうしてここまでするんですか?」
「ん?」
「どう考えても明良に非はないです。朧が勝手に不貞腐れてるだけですよね?」
「んー...」
考え込んだ後、倉橋は遠くを見つめるようにふっと顔を綻ばせた。
「天ヶ瀬は、初めてまともに俺を見てくれたんや。初めて、俺の話をちゃんと聞いてくれた」
倉橋の脳裏には、桜舞う4月の光景。藍色の髪を靡かせる少女の姿が思い出されている。
「......恋をしているんですか?」
「......へ?!ちゃうから!!ただ感謝してるってだけや!!」
「そうですか?」
「思い違いでしたか」とまたスマホに目を落とすキリヤ。
「あとは、キリヤはただああいう言い方しかできないだけやから、天ヶ瀬にもわかって欲しいんや」
「余計なお世話です」
頬杖をついて不機嫌そうに声を発するキリヤ。
「本当、猫ちゃんみたいやな!キリヤは」
「猫ではありません!」
キリヤはスマホを、倉橋は窓の外を眺めて朱雀が帰ってくるのを待つ。
「よし!じゃあ作ってみるか!」
朱雀が材料を買ってきて、早速作ることにした。
キリヤが手順を声に出して指示する。
「1、ボウルに無塩バター、砂糖を入れて白っぽくなるまでよくまぜ、卵黄を加えて更に混ぜる」
「無塩バターは50gやったな。砂糖も50g...あ、ちょっと多い...まぁいいか!」
「2、薄力粉を加えてさっくりと混ぜて一つにまとめる」
「さっくり?と」
「3、ラップに包み、冷蔵庫で30分程寝かせる」
「よっしゃ、いい感じや」
「包み方雑じゃない?」
「4、生地をラップで挟み、めん棒で2mmの薄さにのばす。型に薄力粉(適量)をつけて生地を抜く」
「これ1番楽しいな!」
「明良君?もっと丁寧にのばさないと...あ、破れた」
「5、天板にクッキングシートを敷いて4をのせて170℃に予熱したオーブンで15分程焼く」
「余熱?多分したやろ!」
15分後。
「あれ?」
「なんですかこれ、真っ黒じゃないですか」
「手順は合ってるんだけどなぁ」
「あ、味は美味しいかも...」
倉橋が一つ手に取って口に運ぶ。
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