3.血筋(1/4)
いつもの放課後の部室。
普段と違うのは新しく顧問になった朱雀と、依頼者がいることだ。
「無くし物をしたらしくてさ。話を聞く限り僕達の領分だと思って連れてきちゃった」
連れてこられてきた男子生徒は、眼鏡をかけたふくよかな体型だった。
いわゆる「オタク」という言葉が、しっくりくる人物である。
「本当に大丈夫なんですか...?」
不安そうに呟く男子生徒。
おそらく朱雀に強引にここまで引っ張ってこられたのだろう。
天ヶ瀬は「気の毒に」と同情し、倉橋は初めての依頼者にワクワクしている。
「取り敢えず座りましょうか」
用意されている長テーブルの椅子に並んで座る倉橋と天ヶ瀬、向かいに男子生徒。
「僕の席は?」
「無くし物というのは?」
「無視なのね」
無視される朱雀に戸惑いながらも、男子生徒は取り敢えず依頼内容を伝える。
「えっと...昨日、気分転換で天護神社の辺りを歩いていた時のことなんだけど。放課後にアニメショップでグッズを買い漁って帰っていたら、急に強い風がふいたんだ」
天護神社はよくある小さな神社で、人通りが少ない場所にある。
「そこで妹に作ってもらったお守りが、神社の中に飛ばされたんだ。大事なものだから絶対探し出したい」
「ふむ」と情報を咀嚼する天ヶ瀬が疑問を口にする。
「その場で取りに行かなかったんですか?」
「何故か神社の中に入れなかったんだ。柔らかい膜みたいな、見えない壁に阻まれてしまって」
「取り敢えず地図で神社の場所確認しようか」
朱雀が地図を持ってきてテーブルに広げると天護神社を探す。
「ここだ」
男子生徒が指さす。
そして天ヶ瀬が天護神社の位置を指でなぞった瞬間だった。
ふと、背骨の奥を氷水が流れたような感覚が走った。
「部長、ここ行かない方がいいです」
地図の天護神社に指を指しながら、天ヶ瀬はいつになく真剣にそう言った
「朧ちゃんがそう言うならやめといた方がいいかもね」
「ええ?!困るよ!」
「オタクくん困っとるし...そんなん言わんと行ってやろうや」
オタク男子生徒と倉橋の声に天ヶ瀬は強く言葉を発する。
「ここは本当に危ないです。ダメです」
真剣な表情の天ヶ瀬だったが、倉橋は人助けを辞められない。
「天ヶ瀬」
「ダメです」
「天ヶ瀬!」
「だめ!」
「頼む」
天ヶ瀬「っ...!」
普段はのほほんとしているのに、真剣な眼差しはまるであの人のようだった
『頼むよ』
「っ〜〜!...っはぁ...わかりました...」
記憶の人物と倉橋が重なり、天ヶ瀬は仕方なく了承する。
「(ほんと、君にそっくりだねぇ)」
翌日。土曜日。
日差しの強い昼下がり、神社の周りは人の気配がほとんどなかった。
男子生徒は念の為置いてきた。
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