デスクとの会話
封印の日がついに決まる。
萩原によると明日が大安で日がいいらしい。げんを担ぐのではないが、陰陽五行説は六曜そのものだという。
萩原が行うものは、お祓いのすべての要素を取り入れたものらしい。彼自身も神道や仏教の修行を行ったそうで、その上で世界各国の霊媒師から、祓いのレクチャーを受けたという。今風に言うとハイブリッドな祓いだ。
萩原が言うには、面白いことに世界中のお祓いに同じ要素があるということだ。
・言葉(祈祷・聖句・マントラ)を用いる
・物(聖水・火・塩・薬草)を使う
・儀式で空間を清め、結界を作る
・霊を「追放」するか「鎮める」かの二通り
よって基本は同じだと萩原は考えている。
そして今回の悪霊は日本古来のものであることから、神道と修験道、陰陽道に則った形を取る。霊を鎮めて封印するのである。
長野日報では浅川がデスクに挨拶している。
「それではデスク、今までお世話になりました」
「おいおい、それはないだろ。お別れじゃないだろ、大丈夫だよな」
「もし私に何かありましたら、香典は弾んでください」
「洒落になんねえぞ」
「まあ、可能性はゼロでは無いですから」
「ああ、わかったわかった。で、取材は出来るんだよな」
「ええ、萩原教授側が動画の撮影も許可してくれました」
「まじか…」
「一応、機材については清めてからとのことでしたけど」
「でもすごいな。撮れたら最高だな」
「撮れるかどうかはわかりませんけどね。まあ頑張りますよ」
「儀式の細かい部分は聞いてないんだろ?」
「ええ、その辺は当日まで非公開だそうです。悪霊に情報を掴ませないことが重要だそうです」
「そんなことができるのか」
「用心に越したことは無いそうです。そうでなくても最強の悪霊ですから」
デスクは言葉を失う。浅川はそんなことは気にしないとでもいう風に話す。
「清めの方法についてはマニュアルを渡されました。塩や水、衣装も支給されてます」
「そうか」
「まあ、なるようになれです」
「そうだな」
ここでデスクが神妙な顔になる。
「浅川とは入社以来の仲だからな」
「ああ、そうでしたね。腐れ縁とも言いますけど」
「ここだけの話、俺の跡を継ぐのは浅川だと思ってるぞ」
「ちょっとやめてくださいよ。そういうの死亡フラグって言うんですよ」
「え、そうなのか、じゃあやめとくよ」
「まったくもう、じゃあ、明後日」
実は浅川もそんな気がしていた。今回だけは相手が悪すぎる。この事件に関わり過ぎたのだ。いまさら自分だけが手を引くことは出来ないとも思っていた。
そして、なんとしても木曽福島に平穏をもたらさないとならない。そう決意していた。




