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 宮司の話の通り、職業訓練校の寮は神山神社の裏にあった。車は表通りを行くので遠回りになったが、それほど時間はかからなかった。

 寮は2階建ての新しいものだ。先ほど話の合った訓練校自体が2年前に新設されたので、この寮もその頃にできたはずだ。

 野崎たちが寮に入る。

あらかじめ連絡を入れていたので、寮の管理人が待っていた。

「こちらの生徒さんが、鈴木さんのことを知っているそうです」

 管理人が紹介したのは、鈴木と同年代と思われる男の子で、心配そうな顔で寮のロビーに佇んでいた。

「木曽福島署の野崎です。少しお話良いですか?」

 男の子がうなずく。

「あなたのお名前は?」

「小野富士夫です」

「小野さんは鈴木幸人さんとは寮の同僚と言うことですね」

「そうです。あとクラスも一緒でした。あ、あの鈴木がどうかしたんですか?」

「まだはっきりとはしていないんですが、鈴木さんが事故に遭われた可能性があります」

「事故?」

「ええ、今ここに鈴木さんはおられませんよね」

「ええ、いません。昨日帰って来なかったみたいで心配してたんです。事故ってどこでですか?」

「先ほども言ったように、はっきりとしたわけではないんですよ。ただ神山神社で鈴木さんらしき人物が事故に遭われたようなんです」

「カラス…」

 野崎がぎょっとなる。

「どうしてカラスだと?」

 小野の目が大きく見開かれる。

「そうなんですか。カラスにやられたんですか?」

「いや、でも小野さんがそう思われる根拠は何ですか?」

「ああ、実はここ何日か、鈴木が境内でカラスに襲われた。あそこを歩くのがこわいと言ってたんですよ」

「境内を通学路にしているんですよね」

「そうです。いつもは鈴木と一緒に帰るんですが、昨日は鈴木はクラブがあるとかで、遅れて帰ってくるはずだったんです」

「そうですか。それで鈴木さんがカラスに襲われたと言ったのは、いつ頃のことですか?」

「1週間前ぐらいかな。頭を突かれたとか言って、彼の頭に血が滲んでいました」

「それは夜ですか?」

「いえ、夕方だったかな。夜ではありません」

 ここで戸川が気付く。

「野崎さん、そうですよ。普通、カラスは夜は飛ばないです。活動しないはずです」

「ああ、そうだったな。鳥目で夜は飛べないはずか」

 野崎達が考えこむ。小野が気になって質問する。

「鈴木はどうなったんですか?まさか…」

 野崎が申しわけなさそうに言う。

「鈴木さんとは断定できていませんが、境内にご遺体がありました。それが鈴木さんの可能性が高いと思われます」

「まじか」小野は頭を抱える。

「鈴木さんがカラスに襲われていたと言いましたね。具体的にはどういった話でしたか?」

「寮生は通学路で境内を通るんです。あそこにはけっこうカラスがいて、僕は襲われたことは無いですが、鈴木は2回ぐらい突かれたとか言ってました。カラスって特定の人間を襲うみたいで」

「突かれたと言っても、ひどいけがではなかったんですよね」

「ええ、そうです。血がにじむ程度でした」

「なるほど」


 野崎たちは小野や他の寮生に鈴木の動向などを質問してから、学校にも行って関係者に話を聞いた。そしてやはり事件性は無いということになってきた。

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