長野日報
松本市にある長野日報の社会班。そこではデスクと浅川が話をしていた。
「浅川、例の事件の見通しはどうだ?」
「今は萩原教授のほうで精力的に動いてもらっています。おそらくあと2、3日ってところだと思います」
「それは霊を封印するってことだよな」
「その予定です」浅川は少し不安げな顔をする。
「そうか、期待してるぞ。いや、浅川のおかげでうちの部数が伸びてるんだ。ここんとこ新規の読者も増えて、今や購読者数50%増になってる」
「まあ、体張ってますから」体と言うより命かもしれない。
「決着がついたら本でも出すか?」
「そうですね。出しましょう。記事としては一冊以上まとまってくるはずです」
「期待できるな。ところで話は変わるが、お兄さんの方はどうなんだ?」
浅川の顔が曇る。
「いまだに何の手掛かりもないですからね。萩原教授の話の通りだとすると、悪霊は相手が最も恐れるものに憑依して現れるそうです。兄が何を怖がっていたのかはわかりませんが、もし襲われていたとしたら、どうなったのか…」
デスクは何となく察する。
「兄さんが悪霊以外の理由で、行方が分からなくなった可能性もあるからな。それに期待しよう」
「はい」
そうは言ったものの、浅川は望み薄だとは思っていた。行方不明者の形が残らないようなものに襲われたと判断する方が自然だ。あの結城宮司を襲った鬼などはこの世のものでは無かった。悪霊は実に正確に相手の恐怖するものをトレースするのだ。そのことがわかってから、浅川は自身の恐怖するものを思い出さないようにしている。もし、そういったものに襲われたとすれば、死ぬよりも怖いことになる。なんとか早く退治してほしい。あの悪霊を封印してほしいと願わずにはいられなかった。
そしてその翌日、萩原教授から連絡が入る。古文書の解析が終わったとのことだった。そしてあの悪霊の正体が判明した。




