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長野科学大学

 戸川が長野科学大学に行くというので、浅川も同行を希望する。

 野崎も渋々了承したので、それが実現した。

 大学は松本市にあり、長野日報からも近く、待ち合わせ場所は大学正門となった。

 浅川が到着すると、すでに戸川が待っていた。

「すみません、遅くなりました」

「いえ、まだ、時間前ですから」

 戸川の若々しい笑顔に若干嫉妬する。

「浅川さんは芥川教授とは面識がありますか?」

「ええ、今回の事件で何度か知見を伺いに来ています」

「そうですか、じゃあ話は早いですね」

 二人が農学部のキャンパスに入って行く。

 芥川の研究室は農学部の建物の3階にあった。

 芥川教授は55歳、年齢に比べると外見は若々しく見える。学生相手だと気持ちも若くなるのかもしれない。

 浅川が菓子折りを手渡し、挨拶が終わると教授の部屋で意見伺いが始まる。

 現場で鬼を見た浅川が、一通り事情を説明する。

 最初は笑顔で話しを聞いていた教授の顔色が徐々に変わる。浅川も教授が違和感を感じているのがわかる。仕方が無いことだとは思う。浅川自身もあれが本当にあったことだとはどこか信じられないのだ。夢でも見たのではないかと、何度言われたかわからない。

 芥川がゆっくりと言葉を選びながら見解を述べる。

「私は科学者です。ですから最初から否定はしないです。そういった観点から話をさせてください。浅川さんだけが鬼を見たということであれば、誤認の可能性を疑うんですが、もう一人の校長が同じ証言をしているとなると話は違います。つまり何らかの鬼に見えたものがいたということになります」

 浅川だけでなく、戸川もうなずいている。

「角があったというのは間違いないですか?」

「ええ、間違いないです。それと牙についても確かに見たんです」

 芥川は再び考える。

「可能性は低いですが、ホログラフィのようなものを使って、幻影を見せたという考え方もあります。それで何らかの方法で殺人を犯した」

「でも、ほとんどの遺体が無くなってました」

「鬼が食べたというんですよね」

「そうです…」浅川は申しわけ無さそうに話す。

「私の専門は獣害です。そういった動物だと言う見地で話をすると、毛が無くなってしまった熊とか、何かの外来種の亜種が存在していた、ということしか言えませんね。ただ、非常に可能性は低いです」

「そうですか」

 やはりそういうことになるだろうとは思っていた。仕方がないことだ。芥川が話を続ける。

「考え方の反転というか、もし本当にそう言ったものがいたとしましょう。これまでの事件も不可解でしたからね。思い切ってそれが悪霊なるものの仕業と考えてみましょう」

「悪霊が存在するというんですか?」

「何事も否定しないというのが私の身上です。にわかに信じがたいですがね。まあ、そういうことです。それで私からの提案です。実は私どもの大学にもそういった超常現象を研究している者がいるんです」

「そうなんですか?」

「まあ、完全に異端児扱いですがね」芥川は苦笑いする。「そのものを紹介しましょう」

「はい、ありがとうございます」

 浅川に希望の光が見えた。

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