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第2話『助けようと思ったら、助けが必要なのは俺だった』


 俺は草原を駆け回っていた。

 間違いなく聞こえた少女の声。それが聞こえた方向へ走り続けていた。


「これで...!これでテンプレに戻すんだ!!今までがイレギュラーだっただけだ!」


 俺の脳内にはヒーロー登場のBGMが流れていた。

 思い浮かぶのはモンスターに囲まれている美少女。エルフだとなお良し!

 ここでかっこよく登場して始まる運命と絆の物語。


「---見えた!」


 気づけば木々が生い茂る森の中。その木々の間から、モンスターらしき姿が見えた。3体ほど見えた。

 多分オーガっぽいモンスターだ。今の俺が勝てる相手じゃないだろうが、きっと運命が何とかしてくれる!


「---大丈夫か!!俺が助ける!!」


 息を切らしならがら、オーガの前に立ちはだかったその時だった。


「どりゃぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」


 派手な雄叫びと共に、オーガの首から上が消し飛んだ。


「...は?」


 目を疑った。

 首が飛び、倒れたオーガの後ろに、おそらくオーガの首を蹴り飛ばしたのであろう少女の姿があった。

 金髪のポニーテールに、動きやすそうな軽装。

 細身に見える女の子からは想像がつかない程のパワーで、もう一体のオーガの腹に蹴りを入れ、大穴を空けていた。


「1発で終わりかぁ?!オーガだってっから期待したのによっ!」


 少女はそのまま腹に穴が空いたオーガと蹴り飛ばし、最後の1体の方へ向いた。


「...悲鳴じゃなくて、雄叫びかよ」


 俺の脳内で繰り広げられていた、美少女をカッコよく救う物語は、虚空へ消え去った。


「...これ関わったらまずいんじゃないか?早急にフェードアウトすべきと見た...!」


 俺はステルスとやらしかスキルを持ってない。オーガをワンパンするバケモノに万が一に攻撃でもされれば即死は免れない。

 俺の心は決まった。速攻離脱一択だ。


 俺はそっと背を向ける。


「今なら大丈夫だ。“見なかったこと”にできる...!」


 俺はそっと音を立てないように来た道を戻ろうとした---だが、遅かった。


「ちょーっと待ちなよ、どこに行くのかな?」


 背後から声が飛んできた。しかもかなり近い。


「え?」


 反射的に振り返ると、さっきまで結構距離があったはずなのに、少女が目の前まで迫っていた。

 こちらに笑顔を向けているが、オーガの返り血が顔に着いているせいで、シリアルキラーさながらの怖さである。


「君、さっきなんか言ってたよねぇ?な〜に逃げようとしてるのかな?」


「いや...!なんでもないですから!お構いなく!」


 ダッシュで逃げた。

 怖すぎる。関わったらダメだと俺の直感が伝えている。

 俺は今までの人生で1番の全力で草原へ向けて走り出した。


「ちょ、待て待て!!!助けにきたんじゃないのかお前ぇ!!」


「違ぁぁぁぁぁぁぁう!!!俺が求めてたのはコレじゃなぁぁぁい!!!」


 お父さんお母さん。異世界は俺には厳しいみたいです。








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