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パリスの弓矢  作者: happy
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向けられた世界中の悪意 

 あの事件から半年、私を取り巻く世界は一変してしまった。


夫・純一は、飲酒運転による過失運転致死傷罪とひき逃げによる道路交通法違反の併合罪として懲役10年が言い渡された。


事件当初は加害者の処遇よりも「英雄」の死に対する悲しみが世界中を駆け巡った。


告別式には球団関係者やファンだけに留まらず、世界中の著名人や米国、日本の要人も訪れその規模は


国葬と言って差し支えがないレベルのものだった。


そして「英雄」へ向けられた世界中の悲しみは程なくして「加害者」への怒りへ矛先を変えられる。


事件直後は自宅、実家へとマスコミやファンが押し寄せ、1日中怒号や咽び泣きが耳を狂わせ、


外出もままならなかった。


自分と親しかった者達からの連絡は途絶え、反比例して不特定多数の人間からの悪意の電話が


四六時中鳴り止まなかった。


動画投稿サイトやSNSは純一だけでなく、私や息子、両親に対しての誹謗中傷で溢れかえった。


特に純一は学生時代からの女癖の悪さなどが露見され、播磨一家に対する目に見えない敵は指数関数的に増えていった。


事件が起きてから4ヶ月後に行われた裁判で言い渡された懲役10年という判決。


この「最後の審判」によって私達家族において地獄へと振り分けられることになった。


殺人罪の量刑が心神耗弱を除けば20年以上から無期懲役、最悪死刑なのに対して


殺意がないとはいえ「1人の命を奪った」ことに変わりはないのに懲役10年という軽い刑罰。


ましてや相手は「ただの1人」ではなく、世界中の人間に勇気と希望を与え続けた「英雄」である。


「悪気なく唯一無二の英雄を殺める」よりも、


「殺意ありきで世の中に害をなす大悪党を殺める」ほうが法では悪者とみなされる。


そんな理不尽を世界が許す訳もなかった。


米国では「英雄」が所属していたチームのホーム球場にて、


日本では「英雄」が日本プロ野球時代に所属していたチームのホーム球場でファン達による抗議デモが行われた。


国内も国外も自宅も関係ない。私と息子にとって安寧の場所は向こう数年存在しないのではないだろうか


当の本人は塀の中で守られているのに、私と息子は24時間悪意と怒りに心臓を鷲掴みされ続ける日々…


負の熱を供給され続けた私の心身は過充電されたスマホのバッテリーのように破裂寸前だった…。


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