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パリスの弓矢  作者: happy
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播磨玲華の憂鬱

 午後23時過ぎ、息子が寝静まり旦那がいない部屋で玲華はぼんやりと深夜ドラマを眺めていた。

 

播磨玲華は鬱屈とした日々を過ごしていた。


比較的恵まれた容姿、比較的恵まれた頭の良さ、比較的恵まれた家柄。


自分より優れた人間はもちろんいるが、それでも総合的なパラメータを数値化するならば自分は


ルックス、知能、家柄、身体能力どれをとっても80点~90点くらいは持っていると思う。


公認会計士の父と司法書士の母から産まれた自分はそれなりに裕福な生活を送り、世間でお嬢様学校と


呼ばれる偏差値の高い中学、高校をエスカレーターで卒業した。


大学もエスカレーターで入学することはできたのだが母のようなキャリアウーマンになりたかった自分は


経済学部に特化した有名私立大学に入学した。


入学してすぐのサークル勧誘飲み会で3年の先輩2人、2年の先輩3人からそれぞれ告白された。


ずっと女子校だった自分は異性と関わったことがほとんど無かったので正直ビックリしたが、


自分がモテるということを齢18で知った。


異性と付き合う別れるを3ヶ月から半年のサイクルで適当に繰り返しながら学業にもほどほどに力を


入れて、在学中に取得した資格と恵まれた容姿を活かして新卒で年金事務所に就職した。


入社してからも同僚と比べて仕事の要領が良く、社内で誰からも頼りにされた。


年上の同僚や上司に言い寄られるのはちょっとウザかったが


社会人になっても自分の能力は簡単に通用するんだと思うと人生に拍子抜けした。


数年勤めてきたが、周りの同僚や大学時代の友達が感じるような仕事のツラさはまるでなかった。


むしろ毎日毎日簡単すぎる生活に嫌気が刺してきた頃に今の夫・純一と出会った。


年金支払いの手続き相談窓口で出会った彼は身なりこそ汚かったが体型やルックスは


今まで相談を受けてきた男達とは比較にならないほどに優れていた。


あくまで仕事モードの時間は相手の見た目なんて全然気にしないがそんな状態でも見惚れてしまう


ほどだった。


大学時代から今までずっと年上の男ばかりに言い寄られてきたこともあってか自分より3つ年下の彼に


対して今までにない本気の恋愛感情を抱いてしまったのを今でもよく覚えている。


気づけば個人情報の書類から把握した電話番号に連絡をし、程なくして付き合いやがて結婚した。


彼には彼女がいたらしいが、純一が私に依存し甘えてくる快感に比べれば略奪なんて罪悪感は


どうでもよかった。庇護欲を満たすことが自分にとって至福のアイデンティティーだと知った。


最初は仕事をロクにしない彼に対しても「彼を支える自分を好き」になれたので全然気にならなかった。


しかし、息子の玲央が産まれ育てていくうちに純一への庇護欲は薄れていった。


自分が長年かけていた都合のいい純一へのバイアスという魔法が徐々に解けていくのを実感した。


両親から反対され続けていた結婚、ママ友から感じる侮蔑のオーラ、純一自身の人間性の希薄さ…


自分から好きになったとはいえ「引き際」は見誤ってはいけないと玲華は心のなかで勝手に自戒した。


時刻は23時57分。TVの傍にあるデジタル時計が0:00になった瞬間彼はもう他人だ。


そんなことを思っていたら急にスマホが鳴り出す。


3ケタの通知番号に違和感を感じつつも画面をタップして電話に出た。


電話の内容を聞き「あまりにも大きすぎる事態」に頭の回る自分でもさすがに理解が追いつかなかった。


ふとTV近くのデジタル時計をみたら0:00分を回っていた…







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