協力者 雨宮影翔(あまみや かげと)
「”鎮魂団体 ヒュドラ” 大手広告代理店とマスコミ文芸社からの支援か?」
影翔は「あの事件」のネット記事をフードコートのテラス席で漁っていた。
しかし”ヒュドラ”の単語を見るたびに腸が煮えくりかえる。
1人のYouTuberからもはや1つの宗教団体と言っても差し支えないほどに”ヒュドラ”の求心力は膨れ上がっていた。いまやヒュドラへの後ろ盾になっているマスコミやスポンサーは1社や2社ではない。
資金力、情報力、組織力、マーケティング力という「現代最強の武器」を全て兼ね備えている。
発端となったYoutuberは大学生かフリーターかわからない青年で、普通ならば一大組織を創り上げることは不可能だが彼の後ろにいる「黒幕」は相当厄介な人間だ。
お飾りトップのYoutuberだけではなく、「黒幕」は「事件の関係者」に傀儡の糸を垂らし続けている。
関係者に法や情報、ITなどの知識に長けた有識者を操らせ有識者は関係者から「当事者」の情報を集める。そうやって包囲網をじわりじわりと広げていく。
これが”支配する側”の人間の辣腕なのか…恐ろしい。敵は手強いがこちらにも「切り札」はある。
影翔は「自分の復讐」を達成するために「ある当事者」とコンタクトを取り付けることに成功していた。
しかし「当事者」と協力すればするほど自分も危険に晒されるリスクが高まる。
正直ヒュドラを敵に回す恐怖はあるがやはりそれでも「復讐」という感情の方が勝っていた。
影翔は駆け出しの探偵で情報量やコネでヒュドラに敵うはずもなかったが「当事者」との密接な協力が
あればヒュドラを芋づる式に出し抜けると考えていた。
地元の島根県で「当事者」と出会ったときは本当に神様が私の復讐を手伝いに集まったのかと思った。
「…やれる。ヒュドラを出し抜き全て奪ってやる。」
小声でこんなことつぶやくのはアニメとかドラマのキャラくらいなものだろう…。
だとしても影翔は己を鼓舞するために小声で強くつぶやいた。
”トントン”
後ろから指を針治療のように2回突かれた。
「ごめんなさい。彼女から情報を集めるつもりが予定が狂って早くお開きになったの。」
年増は全然守備範囲外だがそれでも影翔に話かけてきた「当事者」はやはり美しい。
いや。そんなことどうでもいい。影翔はイスから立ち上がり、柔和な笑顔で、
「いえ。自分の探偵業は玲華さん。あなたが頼りなので。」
と返答する。
出雲玲華…「当事者」であり自分の復讐に必要な「切り札」となる人物だ。