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パリスの弓矢  作者: happy
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出雲玲華への雪辱3 

 午後14時。玲華は居間で頭痛薬と目薬を机に展開してパソコンとスマホに2対1で向かい合った。

呼び出しを受け「話」をされた後、玲華はパニックになっていたのでまだ午前10時だったが主任に相談

して会社を早退した。主任も「事情」を知っていたからすんなり承諾してくれた。

昼飯も食べず2時間弱情報の海を潜水したかいがあっておおよ自分の置かれた状況と今後の問題についておおまかではあるが2つ把握することができた。

1つは「純一が起こした事件に関しての問題の矛先が自分に向けられつつある」という点だ。

週刊誌やSNSによれば私が「純一を洗脳し、精神的に追い詰めていた。」という事実が流布されていた。

もちろんそんな覚えはない。だが「私が純一へ冷めた侮蔑にも似た感情を向けていた」という事実と、

「過去に自分が新入社員に厳しく当たり3ヶ月で退職に追いやってしまった」という証拠が提示されたことでデマが真実性を帯びてしまった。確かに過去に自分が教育担当だった「山寺」という女子新卒社員が3ヶ月で辞めてしまったという出来事はあった。しかしそれは山寺が無断遅刻や無断欠勤、同じミスを繰り返すということを繰り返すうえに全く学習も反省もしないという「Z世代の権化」のような新卒社員だった。そんな山寺に玲央と喧嘩してイライラしていた日に一度だけ強く叱責したことがあった。

それから山寺は会社に来なくなり、2週間後に退職代行なるものを使って辞めた。

正直彼女が辞めたことは私にとってはどうでもよかったし、ハッキリ言って自分が悪いとは梅雨とも思っていない。だがおそらく今回週刊誌に書かれたこの内容は十中八九、山寺がリークしたと見ていいだろう。だがもう1つの「純一への冷めた侮蔑という感情」はどこからどう推察されたものだろうか?

「日雇いの派遣社員夫」と「税理士のキャリアウーマン妻」を比較すればそういったデマを捏造することはできなくもないだろうが、「侮蔑」という表現はあまりにも的を得すぎている。

不可解ではあったが、玲華にとっては「今後の問題」の方が頭を悩ませていた。

玲華の今後の問題…それは「会社から解雇を勧められてしまった」という点だ。

山寺を退職に追い込んだことが世間に発覚したため会社のイメージが悪くなるのは必定とも言えた。

加えて「英雄殺し」を操ってたかもしれない人物ともなれば当然会社にとっては巨大すぎる爆弾だ。

今思えば自分の仕事は気に入っていたかもしれない。

だけど今回ばかりは流石に退職という決断をするしかないだろうと思った。

金銭的な懸念はあるが多少の蓄えはあるし当分の生活はなんとかなるだろう。

明日にでも「退職願」を届けようと決意した瞬間、机に置いてあった封筒が目に付いた。

今日家に帰るとき惰性で覗いた郵便受けに1通光の事務所から封筒が届いていた。

基本光は家に訪れて連絡事項は話すので少し不可解ではあったが情報収集を優先した。

テーブルのペンケースから小さいはさみを取り出して封筒の先っちょを細く切って中身を見る。

そこには

「出雲玲華様 今回の事件における被害者遺族への賠償請求に関してですが、被害者王谷将文様の妻王谷葵様が社会的・道義的責任に加え支払い能力の観点から心神耗弱状態にあった純一様よりも玲華様からの支払い賠償を所望されています。もちろん法的に加害者家族に支払いを強制することはできませんが、

代わりに賠償するという選択も視野に入れることをお勧めいたします。詳しい話に関して後日連絡をいただけると幸いです。 阿部光 」

玲華はこの文を読んだ時、単純な金の不安よりも「心のどこかで拠り所にしていた光すらも味方ではないのであろう」という直視したくない憶測と、「自分の想像以上にこれから私は世の中を敵に回さなければいけない」という恐怖が頭をよぎっていた。


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