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パリスの弓矢  作者: happy
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出雲玲華への雪辱2

 翌朝、いつもより少し起きるのが遅くなってしまい急ぎで玲央を幼稚園に送って会社に向かった。

玲央のクラスの担任ではないが、いつも親切に出迎えてくれる須藤さんという名の保育士さんが私を含みのある顔で見てきたのが気になったが、時間ギリギリになってしまったからだろうと思った。

事務所に着くやいなや昇りのエレベーターがちょうど開いたところだった。

僥倖とばかりに乗り込もうとしたのだが、私が入ったら満員ギリギリになってしまいそうだったので3Fまで面倒だが階段で向かうことにした。

事務所までは自動車で出社するが駐車場から事務所のビルの入口までは距離がある。

今日は急いで出てきたので結構汗をかいてしまったから二の足を踏んでしまったというのもあるが、

エレベーターに乗りこもうとしたら既に中に乗っていた人達の視線が気になったのだ。

それは今朝の須藤さんが見せた視線と酷似していたのだ。

「ーー?何かおかしい…。」

「あの事件」以降人の視線には敏感になっていたし実際冷たい視線を向けられた経験も少なからずある。

しかし今日須藤さんやエレベーターの社員が見せた視線は明らかに違った。

例えるなら、そう、私が実際「英雄を殺した人」を見るかのような恐怖が奥底に滲む眼だった。

一抹の不安を抱きつつもいつも通りオフィスのドアを開き挨拶をする。

普段なら小声で誰かしらは返してくれるのだが今日は誰からも返事が返ってこなかった。

普段から特段大きい声で挨拶をしていたわけではないから特に気にせず自分のデスクに向かった。

パソコンの電源を点けて起動するまでの時間少し周りを見渡してみる。

「!!!!!!全員がこっちを見ている」

と認知した瞬間オフィス内の社員が一斉に自分から視線を外した。

どうやら今朝からの違和感は気のせいではなかったようだ。

私に何かただならぬ事態が降りかかっている。

少し心臓が脈打ち始めたのに伴奏するかのようにパソコンの起動音が本格的にキュイーンと聞こえだす。

「…いや。気にするな。むしろ今までが不自然なくらいに自然な振る舞いだったのだから。」

いつも通り朝のルーティンでメールを確認すると「重要なお知らせ」ファイルに部長からメールが

来ていた。基本的な業務は主任とやり取りするので部長からのメールは違和感があった。

おそるおそるメールをクリックをする。

「重要な話があるので朝礼が済んだら応接室に来て下さい。添付の記事に関して話があるので。」

部長はオフィスにめったに顔を出さないが割とフランクに話しかけるタイプだと認識している。

そんな部長が丁寧な文章でメールを送ってくるのが今朝からの恐怖をやたら増長させた。

そして何より気になったのが添付ファイルに記載された週刊文柊の記事というタイトルだった。

メール画面の下にあるPDF形式の添付ファイルを深呼吸してから開いた。そこには

「”英雄殺し”の妻 略奪愛と洗脳のヘレネーか?」という見出しの記事だった。

「ヘレネー…?」が何のことか分からなかったが「略奪愛」と「洗脳」という強烈なワードが玲華の脳内をパニックにさせた。




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